KAZUMI BOX Better Days Years 2

昨日届いたボックスセットを開封しリッピングしました。パイオニアのBlu-rayドライブで無圧縮で読み込みます。Macですのでファイル形式はAIFFになります。一旦iTunesに読み込み(まだOSが10.14Mojaveです)、ファイルのタグに情報を入れていきます。データベースは案外間違っていますし、コメントの欄にベース / ドラムス / キーボード / ギター / パーカッション / 管楽器 / ストリングス / ボーカルといった順にパーソネルを1曲毎に入れる作業が、後々役立つので時間をかけて慎重に行います。再生するときはiTunesではなくAudirvānaを使用します。明らかに音質が良いのでお勧めですが有料です。そうした作業をCD8タイトル、9枚分行いましたので時間を大分取りました。

この作業を終えるとOnkyoのポータブルオーディオにファイルを転送してライブラリの更新を行っておきます。出先はこれにバランス駆動のイヤホンを挿して聴くのが、特にポタアンを用意せずとも、とりあえず満足できる音質になります。イヤホンはWestoneを使っています。前にも書いたしどうでもいいですね。本題に入ります。

渡辺香津美さんのソロアルバムは1971年、東芝より出た"Infinite"が第一作です。このときまだ17歳の高校生だったそうです。セカンドは、少し空いて1975年、日本コロンビアより"Endless Way"が出ます。その間、鈴木勲さんの"Blue City"(1974)に参加している記録があります。サードは翌76年、RVCより"Monday Blues"、同年Unionより"Milky Shade"が続けて出ています。

次作が"Olive's Step"そして"Mermaid Boulevard"と数えていくのならばマーメイド〜は6作目が正解です。以前どこかで7作目の記述を鵜呑みにしてそう書いた気がするのですが、おそらくJimmy Hoppsとの共作"Mudari: Spirit Of Song"(1976)を含めているのではないかと思います。

本稿では"co-leader"作は「ソロアルバム」には含まないことにします。

また共作という所ではミッキー吉野さんと『カレイドスコープ』(1978)を出しています。こちらはFM放送「DENONライブコンサート」の音源をリリースしたものとなり、正式なレコーディングとは言えませんが放送日の1978年2月26日は『マーメイド〜』の発売日2日前となります(28日が発売日)。

"Mudari"はドラマー、Jimmy Hoppsのパーカッションとボーカルに対し、香津美さんがギター、ベースなどのオーバーダビングによってサウンドを構築しています。AmazonのCDのレビューにコメントを寄せた人物が、都内スタジオにて、メンバー同士顔を合わせること無く単独でオーバーダビングして制作されたというように書かれています(無断引用にならぬよう文意を要約して記載しています。)

ここで気になるのは2曲目の"Inner Wind"が初出ではないかと思われる点です。私個人にとっては、Kylyn Liveの冒頭に配置された、おそらく最も聴いた1曲に相当するかもしれませんが、これが今回のボックスセットで紐解いた"Olive's Step"の2曲目に収録されています。あとになるとCMタイアップでブレイクした"Unicorn"のような曲が初期の代表曲とされますが、それ以前では名刺代わりと言ったらこれでしょう。

"Olive's Step"の重要な点は日本コロンビアの新しいレーベル"Better Days"のセカンドリリースとなる作品だった点です。奇しくも六本木ピットインが営業を始めた1977年8月25日、レーベルの初作『ラッキー・オールド・サン / 久保田真琴と夕焼け楽団』がリリースされ、ジャンルを跨がる新しい音楽の創造に道が開かれます。この辺りについてはお詳しい方が大勢居られるでしょう。簡単に知るのに有意な以下のサイトをご紹介しておきます。

https://www.arban-mag.com/article/10362

"Olive's Step"は1977年6月1〜3に日本コロンビアのスタジオで録音されます。LPレコードのA面を坂本龍一、後藤次利、つのだヒロ、B面を松本弘、井野信義、倉田在秀、横山達治というメンバーで演奏し、特に坂本さんとのコラボという点で、革命前夜のような静かに蓄えられたエネルギーのようなものを感じます。後藤さんのベースのプレイもとんでもないものです。スタジオミュージシャンと呼ばれるフィールドにおける、彼等の圧倒的なポテンシャルを見せてくれます。

同レーベルからリリースされた坂本さんのソロ作『千のナイフ』は、私はよく聴いて育ちました。YMO直前です。この頃細野さんのソロもよく聴いており、その延長で、つまり細野さんのプロジェクトから派生してYMOが誕生した流れをリアルタイムに追っていました。しかし、Mermaid Boulevardしか聴いていなかった香津美さんが坂本さん等と再度コラボしてKylynを作ったときの衝撃は、むしろYMOよりも衝撃的でした。

Mermaid〜はロスでの打ち合わせから戻って、1977年10月17〜29に芝浦Aスタジオで録音されたとあります。ジェントル・ソウツが忙しかったのかもしれませんが、これだけ見ると長丁場のような気がします。リリースは翌年2月、アルファレコードから。77年の12月14にはNYのSound Ideas Studioで"Lonesome Cat"のセッションが行われます。ベターデイズでの第2弾として1978年6月26日リリースのソロ作としては7枚目になります。その2ヵ月後、8月22〜29に再度NY同スタジオで"Village in Bubbles"の録音が行われます。在NYCの増尾好秋さんとのコラボと言っていいかわかりませんが、Manhattan Blazeというグループとの共演名義になっています。リリースは78年11月です。これが8枚目。

9枚目がいよいよ"Kylyn"となります。香津美さんと坂本さんの共同プロデュース、79年4〜5月日本コロンビアのスタジオで録音、リリース日6月25日には六本木ピットインで「リリイベ」ですか、ライブを行います。その4日前6月21日に坂本龍一&カクトウギセッション名義で『サマー・ナーブス』がリリースされ変名で香津美さんは参加しており、Kylynライブの面々は両アルバムに参加している小原礼さんベース、村上ポンタさんドラムスというリズムセクションでした。ユキヒロさんはまだサディスティックスのメンバーでしたし…。

坂本さんの側を見てみると、もちろんアレンジャー、スタジオミュージシャンとしての多忙な中ではあったと思いますが、細野さん等とのYMOがプロジェクトとしてローンチした最中にあります。香津美さんのVillage in Bubblesリリースと同月、78年11月25日にアルファレコードからYMOのファーストがリリースされ、遡る10月25、26日に六本木ピットインでは「千のナイフ発売記念ライヴ」が行われており、香津美さんが出演されているであろう事は容易に想像されます(確定的な情報となる資料がありません)。

Kylynの方のプロジェクトが進行するのと並行してYMOのそれも走っており、1979年8月2〜4日にはチューブスのオープニングアクトとしてYMOの初海外ツアーに帯同しています。これらはいずれも成功と見做して良い成果を上げたはずですが、その果実を受け取ることもせずに各々、その先へ、次のdecade、1980年代へ、もっと大きな変革へと強く突き進んでいくのです。

私はと言えば、志望校へ合格して高校生となり一人暮らしを始めました。Kylynが出る少し前のことです。マーメイド以後、キリンまでをリアルタイムで聴いていない理由はこのような事情によります。

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