Tidal導入
音楽をストリーミングで聴くサブスクリプションはAppleが早かったし、Amazon、Spotify、Youtubeなども競い合い、リスニング体験の常套手段に躍り出て久しくなります。CDからリッピングし、圧縮した大量のデータを持ち歩く、新しいウォークマンスタイルは2000年を過ぎたあたりから普及し、スマートフォンが必携のアイテムに育てば、それはストリーミングで補えるようになります。しかしその音質は、まだメモリープレイヤーのコスパが悪い時代にそうであったレベルに過ぎないと髙を括っていましたが、昨今はさにあらん、高音質で提供するサービスが次々に台頭してきました。そうしたもののひとつにノルウェー発祥のTidal(タイダル)があります。
色々と話題に上るTidalですが、高音質配信という点で評価が高く、上記のメジャーなサービス等と比較しても頭抜けていると、よく耳にしていました。ところが、日本での展開が成されておらず、私たちがそのアプリ等を開いても「あなたのお住まいの国では利用できません」といったメッセージで門前払いを食わされます。
私はそもそも、CDを買い、Mac上でAIFFに変換し、それらのデータはAudirvanaという音楽再生アプリにライブラリを作って、Prism SoundのLyle2でD/I変換の後、オーディオ装置で鳴らしています。そのプラットフォームがなにしろ10年以上前のiMacで、OSも10.14からアップグレードせずに運用しているため、なかなか最新の環境を構築できずにいました。要するに10数年手を入れていないのです。
使用中のAudirvanaは3.5というレガシーで、すでに入手不可。現在はOriginというローカルライブラリに特化した買い切り型のアプリと、月、あるいは年でサブスクするStudioというモデルに分化しています。私が使用中の3.5ではTidalを初めとするいくつかのストリーミングサービスとの連携が取れるようになっており、ローカルライブラリとの共存がシームレスに計れるメリットはスタジオの方にのみ継承されています。
すでにTidalとの連携はできることを知っていましたが、それほど積極的に興味を示さなかったのは、Tidalが日本国内で利用不可だったからです。それがVPNによって居住地を偽装して導入できることを教えてもらい、重い腰を上げて試みようという気持ちになりました。
先に触れておくと、最近のニュースではTidalのデータフォーマットがFLACに統一されるとのことで、多くのオーディオファイルを失望させた模様ですが、私の場合は音質至上主義というほどではないので、まずは様子見という態度ですから特に問題を感じていません。
さて、導入方法について、それも指南情報が出回っており、これからここで記すよりもずっと親切ですので、ここでは実際に行ったことのみを記します。結論から言えば非常に簡単にできました。
古いiMacでの古いAudirvanaを使ったTidal連携は、OSが10.15(Catalina)以上を入れていれば不可能ではなさそうでしたが、.14(Mojave)では駄目でした。最後のインテル入りMacBook Proの方は14.5(Sonoma)を入れているのでTidal導入の枷はないもののAudirvanaを起動できません。従って、Tidalアプリで音楽を聴く、しかもこのノートパソコンから音を引き出すのに、最も気に入っているDACと物理的な意味で接続しがたいセッティングとなっているため、我が家で得られる最高音質での視聴は、現時点では目指すことができません。まずは「導入」です。
で、日本から使えないTidalをVPNアプリを通じ、他国のドメインを経由するルーティンを作成します。このような言語表現が正しいかわかりませんが、専門家では無い私の認識を比喩的に述べております。VPNにはTunnelBearというサブスク型のアプリを使用しましたが無料のバージョンで充分です。
TunnelBearのアカウントを作ると、メールでの認証を経て、すぐに世界のどの国を経由させるか選ぶことになります。ここで指定してしまえば、このアプリを稼働している状態でTidalにアクセスすると、もはや主を日本国内とは判断せず、その経由地の在留者として扱ってくれる、というわけです。
Tidalは国毎に料金設定が異なっており、それを調査したサイトがあります。
この方の指南に従って利用可能にこぎ着けたので、そのページもリンクを貼っておきます。TunnelBearの使い方も丁寧に解説されております。
現時点で、Tidalの契約コースはHifiとHifi Plusとなってはおらず、個人かファミリーか、DJ用かという選別のみで、FLACに統一されることと無関係では無いでしょう。おそらくHifi Plusよりも値下げになったのではないかと想像します。その驚きの価格については後ほど…。
私のしたことは、どの国を経由させるかの検討だけで、スプレッドシートにTidalを展開している国リスト、TunnelBearで利用できる国リスト、oto-logに掲載されている利用料、をペーストし並べ直しただけです。
アルゼンチンが最安と報告されていますが諸事情で利用不可となっており、それを除けばナイジェリア、コロンビア、ブラジル、マレーシア、チリ、南アフリカといった順で上がっていきます。最も高額なデンマークとは5倍以上の開きがあることがわかります。なお、これは2022年調べのHifi Plusですから現時点でのIndividual契約と同一とは考えられず、為替の変動もありますから目安にしかなりません。
価格の安い国々の中で、特に理由は示しませんが、私が選んだのは南アフリカです。TunnelBearで南アフリカを選択し、Mac OSの方で初期設定で読み込む許可を行っただけです。すぐにVPNが反映されTidalでの契約を行うことができました。Tidalでは60日間の試用期間が認められ、それを過ぎるとサブスクが開始されるようクレジットカードの入力が求められます。
国によって、ここで障害が発生するようなのです。クレジットカードに登録されるポスタルコードとアカウント側プロファイルの何かに齟齬が生じ、居留地の欺瞞がばれてしまうのか、契約が不履行となるのです。これを回避する方法のひとつはPaypalの利用が上げられ、これもまた支払いにワンクッション入るために利用国の制限を免れることができるらしいです。
私の場合も、もしかすると9月2日以降、請求が発生した時点でそのような事態を経験するかもしれません。しかし本日のところ、なんなくクレジットカードの番号は通り、問題は生じておりません。
そしてその請求額は月額ZAR 69.99。南アフリカランドというのが通貨であり、1ランド9円弱が現在のレート。即ち日本円にして617.80円ということになります。上記のリンクでは994円となっておりますがいかがでしょう。
Appleシリコンを乗せたMacに買い替えた暁にはAudirvana Studioも導入し、音質も追求しようかと思います。Tidalがこの程度なら、両者課金してもCDを月に1枚買うより安いかも、です。