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Peugeot 308 GT BlueHDi

所有して25日目の所感です。走行距離は624km、毎日は運転していませんが、高速道路を一度も使っておらず、1日平均25km弱のドライブで燃費は15.6kmとなっています。長距離移動が増えればもう少し伸びるはずですが、市街地のみでこの数値には満足です。

同じPSAグループの1.5ℓディーゼルエンジンにアイシン製8速ATを組み合わせるDS3Crossbackからの乗り換えで、メカニカルには同じドライブトレインですがトランスミッションの設定が異なっており、運転感覚が向上しています。

さらにその前に乗っていたミニ・クーパーS、2ℓ6MTでのシフトタイミングは、おおよそ10km/hごとで、私はこのようなスポーティカーでも燃費走行を心掛けるタイプなので、通常ハイギアードで走ります。加速が欲しいときにシフトダウンする、その意志決定と操作を素早く行う行為だけで身体的にはスポーツを味わえます。状況へ機敏に反応し、思うままに車両を導けることで満足できるのです。

約4年ぶりにATへ戻ったDS3でしたが、かねてからのフランス車の特徴で、ATはローギアーを選択しがちです。さほど引っ張るでもありませんが、アクセルペダルをオフにすると自動でシフトダウンしてエンジンブレーキが利き、例えば前方の赤信号のために残り距離を惰性で走ろうとしても、速度が落ちすぎるきらいがあってアクセルを踏まないといけません。

DS3のトランスミッションは1速から5.070 / 2.971 / 1.950 / 1.469 / 1.230 / 1.00 / 0.808 / 0.672、ファイナルが3.231となっています(ガソリンエンジン仕様車ではファイナルが3.537に高められています)。ちなみにディーゼル、ガソリン共に最大出力は130馬力で同じですが、回転数が3750と5500と随分異なりますからガソリンの方がローギアード設定なのは当然です。車重も軽いからガソリンはキビキビと走れますよね。最大トルクは300と230で、流石のディーゼルですが、発生回転数を1750と同一に設計してあり、この会社のエンジンに対する考え方を覗えます。

308の場合トランスミッションは同一で、ファイナルがディーゼルで2.977、ガソリンで3.098(1.6ℓプラグインハイブリッドは3.363)と同じパワーユニット比でDS3よりもハイギアード設定。車重はそれぞれ80〜90kg重いのにね。

DS3で痛痒を感じたアクセルオフで、308は状況に応じて動力装置を切り離す「コースティング」を行っており、その間エンジンブレーキが利かなくなるけれど、逆にスムースな走行ができ、燃費にも有利です。ミニ以前に乗っていたボルボV40D4ではトランスミッションをエコモードにしたときコースティングになり、ノーマルだとパワーがありすぎてギクシャクすることもあって、ほぼエコモードオンリーで運転していました。それが308では常用を前提にプログラムが組まれており、自身のマニュアル操作でギアを選択して走るのとほぼ同感覚で動作してくれるので、極めて気持ちが良いです。

それもあってか、重量増にもかかわらず、308のカタログ燃費は僅かですがDS3を上回る値が記載されています。

発進、加速について、308はなんの不満も無いどころか、ジェントリーに振る舞いたい大人の運転感覚に極めてフィットする、個人的には理想を実現するパワートレインと、そのプログラミングの実現を嬉しく思います。

具体的には、わかりやすく速度10km/hごとに正確に変速し、回転計は2000弱を示しますので、最大トルクが発生するタイミングでの変速を効率よく行っています。速度が落ちたとき、その10km/hごとの守備範囲で決められたギアーに落ちますが、コースティングによる滑らかな走行が続き、次の加速に備えた変速がバックグラウンドで行われている様子。6MTのミニでの乗り方そのものと言えるかもしれません。DS3ではもっとエンジンを回す設定(ですが室内は308よりずっと静かでした、さすが高級車)で、アクセルオフからすぐにダウンシフトして強いエンブレがかかり、動力に鞭を打つことを強いられる感があって、決してスマートではなかった。

ステアリング操作と、その反映についてはDS3はとても優れていました(問題は乗車姿勢に無理があることで、正直言ってステアリングを回すことすら難儀でした)。ロールは大きい方ですが過敏ではなくゆったりとしていて、お釣りが来ることもありません。この所作はかなり気持ちが良いものでした。

一方、308は上と下がカットされた小径の楕円ステアリングが丁度いいサイズで動かしやすく、もちろん自然な乗車姿勢が得られますので運転はしやすいです。市街地において、低速で大きく舵を切ることの多い使い方で、当初は動きがクイックで「おっとっと」となることが少なくありませんでした。切ろうとすると、最短時間で車両がそっちを向いてしまいます。「クイック」というのは、フロントの切れ角とステアリング回転角との関係で論じられるものですが、その比率が急であると言うより、車両の反応が速いという感覚です。切ろうとしてステアリングを回し始めたとき、普通ならまだその方向を向いていないだろう時間で、すでに旋回を始めている、その動き始めのタイミングがクイックなのです。

タイヤの使い方やサスペンション設計が、この性質を生んでいると思われ、ステアリングとの連携についても入念なバランスが追究されていることが覗われます。ゴーカートフィーリングを謳うミニの操作感覚とも異なります。

プジョーはご存じの通り、全車で小径ステアリングを推進しています(近々台形になるそうです、F1などと同じような)ので、そのネガを消すところから思索が開始しているのかも知れません。小径ステアリングが稀少であるのと同じように、反応の速い旋回性も稀少で、その組み合わせは、日常使いの乗用車として類希な特性かもしれず、違和感は拭えませんでした。とは言え馴れますし、タイミングが掴めれば上手に曲がることができそうです。少し速度を上げて曲がりくねった道を走るとき、このような特性が物を言い、上質なスポーティカーであると感銘を受けるかも知れません。

今思えばDS3は静かだったけれど、308は比較すればうるさい方でしょう。常にエンジンの音が聞こえ、タイヤと路面とで起きる走行音も、あるいは空気との間で発生する音も混ざってきます。遮音材はあまり多く積んでない印象です。ただ、速度の上昇と共にノイズが高まることは自然の摂理であって悪いことではありません。5感で状況を掴めることは安全にもつながり、この程度の雑音は決して厭うべきではないと考えます。ディーゼルエンジンの音は、カラカラと乾いたものではなく、ザラザラとウェットで、特段耳障りではありません。ただ、排気音が興奮を誘ったミニの時のような楽しみは皆無です。

シートが良いと認識されるフランス車ですが、以前何台も乗り継いだルノーほど良く思うことができません。DS3では腰を痛めましたが、それに較べて平和な308も、あまり収まりが良くないのです。どう調整してもぴったり来ない。ただドライビングフォームは自然な範囲。私にとって、ルノーはいずれも文句なしでしたし、ミニのバケットシートは最高でした。PSAはそれらより相性が良くないと言わざるを得ません。でも許容範囲。もう一回言っておきますが、DS3は30分乗るのが限界。308では2時間走りっぱなしでも無問題。

直近で乗っていた同郷のDS3(2023年式)と308を比較しながら初見のインプレッションをお届けしました。いまのところ、概ね満足しています。ていうかパワートレインは設定込みで100点。とりあえず長いつきあいができそうだと感じています。

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