もうしわけございません
業務委託であちこちの音楽教室へ教えに行っているのですが、その講師認定と稼働状況を管理したり、教授内容の方針を作ったりする大元があって、その組織へ加入している体での細則が設けられています。そのひとつに共済会というものがあって、強制的に所属させられ、毎月連綿と天引きで会費を支払っています。
各種見舞金の支払いを申請できるのですが、例えば、医療給付金などの申請可能ラインが年々引き上げられ、当初はたしか月あたり2000円の免責だったのが10000円になったりすると、もう殆ど請求の機会は無いわけです。
昨年8月に私自身もコロナに罹患しました。最近の流行の中で感染した生徒さんに、あるとき、自宅療養でも「見なし」で生命保険の入院給付金を貰えますよ、遡っても請求できるはずです、と教えてられました。残念ながら掛け捨ての癌保険にしか加入していないため、私には無関係な話でした。
ところが最近の、共済会からの通知で、実はそちらでも「見なし」によって入院見舞金が申請できることがわかりました。つまりは、政府の定める療養期間に関するガイドラインが緩められたのに伴い、申請のハードルを上げてきたのです。
私は、この改定通知を見て初めて、コロナ罹患が共済会への申請対象に含まれていることを知りました。非常に腹が立ったので、ヘルプデスクへ電話し、その情報の周知は正しく行われたかを確認しました。
電話口の担当者は、お調べしますと言って、一旦電話を切り、数十分後に、昨年4月に発信しておりますと回答されました。申請には請求期限があり、発生から6ヵ月以内と定められています。もちろん私は、その資格を失っておりました。通知は全て目を通していたはずですが、その情報は記憶に残らなかったようです。おそらくは、パンデミックが始まって1年後に、まだ無事であった自身にとって、対岸の火事でしかなかったからでしょう。
ただし、電話口では、常にきちんと情報は見ているのに、今この改訂で初めて知るようでは、伝達が不十分だったのではないかと、穏やかに申しました。期限を覆すことが不可能なことは存じています。担当の女性は、ただ、もうしわけございません、を繰り返します。その言葉が、重ねられれば重ねられるほど、癇に障り、腹が立ちました。
もしも、そちらが正当な対処を行ってきたのであれば、謝る筋合いはない。むしろ気をつけろとすら、言って欲しい。私は自身を責める矛先を、内的には、電話口に向けてみているだけで、もちろん荒い言葉遣いはしないし、淡々と、短く、辛い期間だった、誰も助けてくれなかったということを伝えました。共済会が動いてくれるのなら、私の罹患は、その組織に対し逐一報告をしていたのだから、誰かが教えてくれても良かった。そうした悔しさを、電話対応の方へ、その個人に、少しだけでもシェアしてもらいたい気持ちでした。
空しくもその反応は、オウム返しの、もうしわけございません、であって、この僅かな通話時間、私は迷惑行為をしていたかもしれないことを自覚します。ただ、その、もうしわけございません、の言葉は毒でしかない、謝罪ではない、ということを気持ちを込めてここに記したいと思いました。お引き取りください、とドアを閉めんとする通告に過ぎません。
更に言えば、共済会は、ただ徴収されるばかりで見返りは皆無ですので、願わくば任意加入にしてもらいたいものです。
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