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ベース再生装置におけるパワーアンプについて少し の4

スイッチング電源を搭載しているからと言って、一律にD級といっていいのかどうか、まだ判明せず、2021年が明けてからのここ数日、そのことで悩み続けいている愚か者です。

さて、ほんとうはごく単純なことを述べるに留めるつもりでいたのが、関連する機材の一つ一つを具体的に思い浮かべるたびに、そのビハインドストーリーとも言うべき個人史を紐解く事をやめられません。本日は、予告通りにウォルターウッズのことを話しますが、いきなり脱線しそうです。

The Doobie Brothersの解散コンサート(復活してますが、その前1982年のこと)の映像を見て、このツアーに参加していたベーシスト、ウィリー・ウィークスが使用しているアンプが目に留まりました。

ウィリー・ウィークスの決定的なファンになったのは、加藤和彦さんの『あの頃、マリー・ローランサン』(1983)というアルバムを聴いた時です。私自身、ベースを本格的に弾き始めて間もない頃で、そのような音楽を好み、作っていた時に、ベースのプレイにおいて「かくありたい」という明確な目標を示す強いインパクトを受けました。

〜マリー・ローランサンにピアニストとして参加していた矢野顕子さんの翌年のアルバム、『オーエス オーエス』(1984)にも、そのセッションをきっかけに気に入った矢野さんがオファーしてウィリーは参加されています。この2枚のアルバムは、音楽的にもバイブル同然の傑出した存在でした。

ドゥービーのフェアウェル・ツアーはこの2枚よりも前でしたが、夢中になると止まらない性分ですから、ダニー・ハサウェイから、スティービーから、ストーンズから、ダン・フォーゲルバーグ、ドゥービーまで、ウィリーの参加音源は手当たり次第に集めました。まだアナログ盤(ヴァイナル)主流の時代です。

そうこうしているうちに映像を見る機会を得たわけですが、カスタムメイドっぽいメーカー不明のキャビネットを2台、たぶん15インチスピーカーがそれぞれに入っているように、当時推測したのですが、横に並べて置かれており、その上になにか見慣れぬ小さな箱がそれぞれ載っていたのです。加えて珍しくも赤っぽかったような。(全部記憶の中の風景です)

しばらく謎のままでしたが、あれがウォルターウッズとおぼしきベースアンプヘッドを初めて認識した瞬間だったのではないかと。これ要確認ですね。あとで動画を探してみます。勘違いだったらごめんなさい。

あんなに小さなものが、ベースアンプとして、あのクラスのステージ上に置かれていたのは衝撃でした。なんだろう、なんだろう、とずっと気になっており、数年経ってウォルターウッズじゃなかろうか、と思い至った次第です。

それから後、私自身は90年代に100Wの古いタイプを手に入れました。中古で14万くらいだったかな。エレクトロボイスの12インチユニットをハリウッド・エンクロージャーというメーカーの汎用キャビネットに入れたものを2台スタックし、トータル4Ωにして100W使い切る感じで鳴らしていました。

柔らかないい音がしましたね。クリアながら深く温い音です。しかしバンドで欲しい音量まで上げると歪みました。パワーアンプの出力が決定的に足りなかったのが惜しかったです。

そもそもベース用ではないのですよね。ウォルターウッズこそ、スイッチング電源の軽く小さく熱くならないアンプのパイオニアのような存在で、パワーアンプもありましたが、だいたいはプリアンプも搭載した、電気楽器を直接させる仕様になっていました。前に述べましたチャンネルストリップのような思想で、素直に音を出すことを旨としていました。マイクレベルには対応していないですけどね。だからこそ、ベーシストに受けたのです。

ウィリー・ウィークスが「フェアウェル・ドゥービー・ツアー」で使用したアンプがWW(面倒なので以後ロゴと同じくこのように表記します)だったのか否か、検証が済みましたら改めてご報告するとして、スイッチングアンプの代表格であるWWを、今私がどのように感じているかを話していこうかと思います。

21世紀になってから、M-200というヘッドを10年落ちくらいの中古で買って使っていました。M-200はすでにM-300に改められていたので廃番になっていたモデルです。100Wのがライブでは力不足だったのは明白でしたが、掛け値無しに2倍の出力を得ているであろうこちらのモデルは何ら問題ありませんでした。

その時WWに手を出したのは、メインのシステムがグロッケンクラングのアンプヘッドで、soulというモデルは11kgありましたし、続けて入手した、過去のフラッグシップであったHeart-Core Topも決して軽くなかったからです。キャビネットも同社のQuattro 4x10やUno Rock 1x15にDuo 2x10をスタックしたりで、もう重量には辟易していたので、せめてヘッドを軽くしたいと考えて、グロッケンに対抗しうる上質さを期待して白羽の矢を立てたわけです。

現在のグロッケンクラングは、それらの全てを廃番にしてD級デジタルアンプに刷新してしまいました。そうなってからは輸入が途絶え、私は音を聴いておりませんが、実を言うと、今の気持ちは「あの日に帰りたい」なのです。中古市場にすら出現することが無くなって久しい、クラシック・グロッケンクラングが私にとってベースアンプの理想でした。が、それは置いておいて…。

ある日、渋谷の東急ハンズの向かいにあるライブハウスに出演した時、たぶん小屋の備品はハートキーだったと思うのですが、WWとGK(ここではグロッケンクラングの方です、ギャリエン・クリューガーではなく)を両方持参しました。ワンマンだったのでサウンドチェックで試せると思いまして。こういう同条件でのテストは、ものの真価を見極めるのに大切です。

結果、たぶん10人中10人に賛同いただけるかと思うのですが、明らかにM-200はHeart-Coreに匹敵しませんでした。その差を埋めるためにEQをいじってもしょうがありません。パワーアンプの力の問題に思えたからです。

音量は足りていても、音の「かたち」と「位置」が違うのです。押し出しと、その彫りの深さ、描かれるディテールといったこと。バンドが一斉に音を出している中での自分のプレイが、きちんと都度都度評価していける。フィードバックを受けられる。どうすればいいのか、したい方向が見える。そういう鳴り方をしてくれるのでした、GKの方は。

M-200も最高といっていい部類ではあるのですが、僅差であっても明白に負けていました。この日をもって、WWとはお別れをします。ついでに言えば、ヘッドが良ければキャビは、けっこう何でもいいのかな、と思い始めました。運搬性はキャビの方で考えて、ヘッドはGKを使っていこうと。

GKはお気に入りでしたが、マイナートラブルに見舞われました。当時クロサワ楽器店におられた、現バーチーズの千葉さんに何度も泣きついて症状を訴え、メーカーに送ったりもしましたが根本的な解決とはならず、大切な仕事での問題発生を恐れて引退させることを決めました。

はいその辺で、昨日の話に繋がっていくのですね。音はもういい。わかったから。もう利便性追求で行くよ。と舵を切ったわけです。巷にはすでに軽量アンプ、軽量キャビネットがあふれかえっておりました。私も老い始めていました。

マークベースとは2年もつきあってないですかね。浮気性ですんで。あれだけ集めて、全て手放すまでにそうは時間が経っていません。別の機種を、その後にどういう順番で試したか、今思い出そうとしても難しいです。ただ、ひとつ言えることがあります。やっぱりWWは、「妥協案として」妥当であると。ほかのものよりはいい。

そんなある日、WWのSM225というモデルを安価に取得できました。M-200を2台分、ひとつのシャシーの中に収めてしまったステレオモデルになります。専用のケーブルを使うと出力倍増のモノラルアンプとして使用することができます。

アンプの出力、あんまりいらない、と主張する派に属している私ですが、ブリッジ接続(BTLとも言いますが、ステレオアンプの片チャンネルごとにモノラル信号の+側、−側をそれぞれ増幅し、合算してモノラルチャンネルのアンプとして使う配線方法です、内部にそのための仕掛けを持つ必要があります)は話が別で、やっぱり音はいいです。もしかするとこれなら、あの日のGKに負けないかな、とも思います。

WWのプリアンプセクションには、パワーアンプの直前に割り込ませたエフェクトループが備わっていて、外部プリアンプの使用に適した回路構成となっています。そこで、所有する様々なプリアンプをSM225をスレイブ(パワーアンプ)として試したりしました。

そこで明らかになったこととは。WWのパワーセクションはスイッチング電源による傾向を確かに備えていて、掛け値無しに素晴らしくはありますが、やっぱり、どうしても、私の耳には気になる引っかかりが存在しています。

グロッケンクラングのHeart-Core Topを鳴らす時、ボンと鳴ったベースの音は、なんの変哲もありません。それを聴いて、あ、いい音!と呟く人、あまりいないと思います。言葉でどう表現したらいいでしょう。ありのままと言えばいいのかな。突っ張ったところがありません。何かをどういう風にかに仕立てて見せる主張が無いのです。それでいて、そこにあったものは全部見せている。だから音が強い。埋もれないのです。そういう感じ。これらの言葉は、すべて「もののたとえ」として受け取っていただいて結構です。私の感覚器官がそう捉えているだけのことです。

そしてですね、私はひとつの仮説を立てます。デジタルアンプだろうが、アナログアンプだろうが、スイッチング電源のパワーアンプは、選んではいけない。←私自身が好きか嫌いかの話です

スイッチングアンプの対になる概念はリニアアンプです。リニアアンプにはトランスが積まれます。ひとくちにトランス搭載というのが、また誤解を招きます。トランスを積んだD級アンプ、というのが存在しちゃったりしますその辺りを、電気については中学生レベルの知識しか持たない私なりに、明日は少しお話ししたいと思います。

おわり




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