軽音楽部のコーチングを考えてみる その4

まだにわか知識でしかありませんので、もう少しコンテストのことを学ばなくてはなりません。たとえば"インターハイ"は知っていても全国高等学校総合文化祭のことは最近まで知りませんでした。略して総文祭などと呼ばれている、文化庁、高校文化連盟、教育委員会によって催される各文化部の発表会だそうです。軽音楽部は、その中で部門として確立しておらず、連盟の存在する地域でのみコンテストが行われ、東京都でも大会があります。全県に連盟が作られれば、既定部門に数えられることになり、将来全国大会が開催されるならば、おそらくこれが最大規模のコンテストになるはずです。

Web上に"Tokyo-Keion"というページが、東京都高等学校文化連盟軽音楽部門ならびに東京都高等学校軽音楽連盟が併記され、公開されています。

ここを見ていると色々と面白いです。軽音楽連盟主催行事として5月に「顧問総会」「活動状況等意見交換会」が行われ、7〜8月に東京都高等学校軽音楽コンテスト、11月に学校対抗バンドフェスティバル(高2以下の新人戦扱い)、1〜2月に優良生徒表彰などとあります。後援行事には10〜11月に1年生合同ライブ(附属中学を含む)、部員対象技術講習会が通年、企画されるとのこと。自治体縛りはありますが、なるほど、ここで顧問の先生方はネットワークを作るのですね。

先日、本年度の新人戦決勝とも言うべき都の「中央大会」が終了しました。地区大会を勝ち抜いた24校が出場し、10校が表彰されます。学校代表の出演バンドは前日にゲネプロを行い、翌日は観客の制限を、一応関係者と規定しますが、事実上は一般公開となります。

本サイトには演奏経験の浅いバンドへのチュートリアルが用意され、その内容が、とてもちゃんとしているので直リンクでご紹介します。

コンテストならではの競技規則に触れており、司会者にバンド名を呼ばれたところから計測され、演奏終了後の「ありがとうございました」の一言を発するまでを5分以内に収めるとあります。これを出てしまうと失格です。

ついでですが、「初心者向け講座」というコンテンツも良いまとめなので、若い読者宛にリンクを貼っておきます(記事への直接リンクです)。

加盟校一覧によると東京都は都立71校、私立55校とあり、現役員校は19校のようです。リンクから神奈川・埼玉・千葉県・大阪の連盟に飛べるほか全国高等学校軽音楽連盟に行けるので見てみました。まず「全国」と付される組織にもかかわらず、東京・神奈川・埼玉・千葉の軽音楽連盟の教職員で組織されているとあります。首都圏と言い換えても良いかもしれませんが、「全国高等学校軽音楽コンテスト」を運営することで、軽音楽部の活動を全国へ普及・発展させようという成立趣旨に読み取れます。このコンテストは文科省も後援しております。間違っているかも知れませんが、軽音楽連盟を置いている都道府県は22に数えられましたので、まだ47%と、過半数に満たない現状であるということです。聞いてはいましたが、意外に思われる方も多いのではないでしょうか。バンド活動を学校が公認しないエリアが、まだこれだけあります。

日本全国への部活動の広がりを話題にするのは別の機会に回すとして、ここでは上記のような公式活動を支援する、要約すればコンテストに出て賞を取る、ことを成果として研鑽を積むのが、指導する立場で念頭に置くべき事かと考えます。こうした視点は、「音楽」を人間の「表現」行為として、本来は経済活動と切り離している私の世界観から完全に逸れるもので、単純にテクニカルに、職分として期待されるものを想定していることを明らかにしておきます。ただし、「音楽」に価値があるとして、その優劣を見定める評価軸を形成してきた経験が、ここで使えないというわけではありません。客観的に優れているものを見落とさない眼力を磨く意識は、同時にそれもまた「表現」であったと自認しているからです。「作品」は「批判」であると言った人がいますけれど、それに通じるものです。

この連載、軽音楽部のコーチングというテーマでは、入学時に未経験の学生が2年半という期間内にコンテスト本戦で表彰されるまでの育成を目指さなくてはなりません。ですからコンテストの趣旨を理解し、その5分間のパフォーマンスで何が審査されるのかを知らなければ対策できないということになります。念のために繰り返しますが、その前提となっている高校生の部活動が目指すもの自体が今ここで私が設けている仮説であって、学校によっては違う方向を向いているかも知れません。一律に語って見えますが、言うまでもなく、私自身が置かれている立場での、私自身の仕事をどのように規定すべきかの模索に過ぎません。何が正しいか、という点では断定不可能であることをご承知おきください。

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