トゥイーター非搭載のベースキャビネット

先日、ローランド製の古いベースアンプ(ソリッドステート・ギターアンプの金字塔、JCシリーズと共通の意匠を持つ)"Studio Bass 100"が改めて非常に良かった件を書きました。あれは15インチスピーカーを1発積むバックロードホーンだった(バスレフではないと思う)気がします。その記事にも書いたけれど、ある仕事場の備品であったために、10年近く相当の回数使わせて頂いたお気に入りで、ベースギターの帯域に対して不足を感じないフラットレスポンスを再認識した話でした。

今日、同じ仕事を再び受けて行ってきました。SB100を楽しみにしていたのに、あったのはHartkeの最初期に作られた10インチ4発のキャビと、低廉な韓国製になってからの同社250Wヘッドでした。同じ音響会社でしたのに。がっかりしたのは嘘じゃないけれど、音を出したら全く問題なくて、ああこれも名器だなぁと感慨を持つほど良かったのでした。

Hartkeのアルミコーンは登場時にインパクト絶大でした。我々が見知ったのは、その410モデルそのもので、それまでの大口径に比して高域の伸びが良く、アルミ蒸着は見た目の印象でメタリックなサウンドを想起させますが、べつにそのような刺激はなく、それこそフラットに聞こえました。

そんな90年代初頭あたりで、私のお気に入りは15インチキャビと10インチ2発のキャビをスタックして使用する方法でしたが、acousticで組んだこともglockenklangで組んだこともありましたけれど、運搬を苦にして双方手放しています。

それから少ししてFostexのホーンを搭載するSWRが台頭し、世のベースアンプの殆どにトゥイーターがセットされるようになります。ところが、当のSWRを取得しても、実際にはトゥイーターのアッテネータを絞るようになってしまい、あのカチャカチャした金属音は受け入れがたいものでした。本来微かにしか含まれない高次倍音を無理矢理抽出して別個に増幅するわけですから、強硬な輪郭強調と言っていい、デフォルメされた音像を作ります。

それが嫌でソフトドームやペイパーコーンの小径スピーカーなどで、高音域を担当させるなどの工夫を試してきましたが、例えば8インチスピーカーがトゥイーターの不在をネガに感じさせないなど、やはりトゥイーター、無くてもいいんだとの思いがここに来て決定的になりました。

Hartkeの410は80年代の後半辺りで入ってきた記憶があって、素晴らしいと感じつつも、同製品は買ったことが無くて、時折リハスタで利用するくらいでしたが、中央に5インチのトゥイーターを抱く4.5XLの方が主流になってしまい、いよいよ無縁になったところで今日の邂逅となったわけで、やはり幸せでした。

40kgのキャビネットは今さら入手しても持ち出せないのでぐっと堪えますが、10インチスピーカー複数個、というセッティングがベースギターには非常にしっくりくるなぁと改めて思いました。

同じ会場で同じ8人編成のバンド(メンバーは2人違う)、楽曲もほぼ共通とあって、素直にベースアンプの比較ができました。SB100は自然にローが伸びて素直でクリーン。全つまみ真ん中で、ベースのEQもフラットのまま、ベースギターに求める太さと解像度が得られ文句なしでした。

一方、Hartke410+HA2500はローを膨らませる味付けのあるBゲイン(真空管プリ)だけを使い、コントゥアーのノブもローパスの方を2時くらいまで上げ、ベースに搭載されるXTCTでもローを少し足しています。低音はかように細いのだけれど高域方向へは実用上問題なし。それでもミドルが厚い印象がフラットには感じさせず、グライコをオンにして(追い込み時間が無かったので)500Hzだけをぐいっと下げて使いました。

それでもドラマーから、楽器(アンプ)が違ってもいつもいい音がしててやりやすい、と褒めて貰え、自分でも弾き易かったので満足です。持ち込みだと、最近は12インチ一発とか、もっと小型のものすら使いますが、やはりこれくらいの大型機材でなければ等身大のベースにはならないのだとしたら、やはりでかいブツへ回帰しようかなと思ったり思わなかったり…。いずれにしても、私はトゥイーターいらないや、と確信した日となりました。

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