軽音楽部のコーチングを考えてみる その8

高校生の部活動、その一つである「軽音楽部」に学外からコーチとしてお手伝いできることは何か、自身の立場で考えてきました。私は幼い頃から音楽を職業にしたいと漠然と考えており、歌うことや演奏することが好きだったので「アーティスト」を目指していました。高校時代は、ただ夢中で好きなことをやれていた時期であり、一方その一直線な気持ちは、卒業後になると社会との擦り合わせによって失われがちになります。結局は貫くことができたことに満足しつつも、あの頃に、もっと違うアプローチができただろうにと悔やむことは多いです。

教える仕事を通じて、いつの時代にも中高生を始めとする若い人々と接してきましたが、学校の中へ入って、部活動の現場を目の当たりにし、当事者へ直接働きかけるような行為に携わるとは思ってもみず、ちょうど1年前からの急展開に我ながら戸惑うことも多いのです。

それは、私が生涯にわたって経験し、培った音楽の知識(軽音楽分野に限りますが)が役立つものとして請われた機会ではありましたが、この時代の若者に適用すべき正しさを備えているかは、常に自問自答する必要があると感じます。このような懸念は、今後も払拭できずにつきまとうものであると認識しながら、何に思いを馳せたかを記録として残す意図から、数話の連載を続けて来ました。

であるとともに、読者の中に、すでに関係を作っている方々が含まれており、とくに実際の高校生(軽音部員)へ向けて、エールを送るつもりで書いてきました。悩み多き年頃にあって、最も熱を入れて携わっている活動に迷いが生じたとき、こんな文章でも少しは力になり、打開のヒントになることを願いながら。

自分が、こうやりたいと思うことに対して横やりが入ったり、その勢いを削ぐような第三者の意見を、私はとても嫌いました。思い付きは、実施してこそ、その結果を知ることができ、たとえ答えを知る大人の助言であっても、失敗を恐れずに(わかりきった末路であるとしても)自分が渦中で体験しないことには気がすみません。ひとつひとつ、ケリを付けないと先へ進めない困った性分なのです。

似たような人間がどれほど存在するかは知りませんが、であるから、高校生へのアドバイスは慎重になります。邪魔をしたくないですし、好きにやったらいいのです。

学校や顧問の方針において、コンテストでの入賞を求める意志が明らかであるならば、おそらくは「使える」ツールとして利用可能な人材かと思います。強くしてあげられる。ここまで、そんな前提に立って書いてきました。

引き続き軽音楽部支援として、主に練習環境、ライブ環境を改善する目的では幅広く学校を訪問します。もちろん自身の演奏活動(弾くお仕事)と音楽制作、また、音楽教室での講師業は併走します。教える仕事を成立させるには、欠かさず演奏現場に立っていることが必須だと考え、両輪としてきました。それは部活指導においても同じであり、イチ現役プロミュージシャンが現場で起きる事例をフィードバックすることに意義があると信じています。

音楽教室には未就学児童から平均寿命を超える年齢の方までが通われ、その一人一人の思いにできるだけ寄り添うよう、心掛けてきました。その中には、学校に通うことのできない若い子供達もおられ、ベースが楽しい、と言ってくれます。はっきりとそれを言うようなことはありませんが、高校へ行って軽音楽部に入ってくれないかなぁと思ったりします。いろいろとうまく行かないことがあって苦しんでいる人が、音楽が好き、ということをきっかけにして楽しみを広げ、その結果、社会に出たいと思ったり、世の中悪いことばかりではないと感じてくれたりすれば嬉しいです。そんなことを思いながら、私の世界も広がり、あれとこれがこう繋がって、と変化する様子を興味深く眺めながら、生きていれば面白いことが起きるなと実感できるのが、本当に幸せです。

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