vivantは終わらない

最終話とその前話をようやく見終えました。10話完結でありながら、シーズン通じ総計134分ほどの拡大枠で、13話に相当する長尺でした。回を増す毎にネット界隈で視聴者による考察が過熱し、短期間でありながら大きなブームが巻き起こったのは、入念な仕掛けの賜物であってもTBSの予測を超えたものだったでしょう。

手放しに最高と思っているわけではないですが、巷ではコンテンツ制作において主流を奪ったサブスクリプション系の配信動画へ、あからさまな対抗心でマスメディアの威厳を示そうと奮起した敢闘に喝采を送ります。

最終話で伏線が回収されると期待されていても、謎は多く残っており、私が気になることを少しだけ書いておきます。

丸菱商事の誤送金事故はテロ組織、テントによる犯罪であることが判明するところから冒険譚は開始されます。その主犯はモニターと呼ばれる世界へ散らされた配下の者で、丸菱では乃木と同期の山本、って、こんな都合のいい話ってあります? テントが資金集めに行う違法行為の対象となる相手に、それを全世界的にマークする諜報部の一員が親友が所属し、担当であった。であると共にテント首謀者の生き別れた肉親であるなど。ここまでの偶然には作為を感じます。ターゲットたる丸菱の内情と別班の存在が全て周知だとしたらその後の流れにも矛盾が生じますから、多少なりとも合理的な説明、あるいは解釈できる余地が欲しい。ドラマを見直すことはしていませんから、初見のみですが、発端となる事件の成立に、私は釈然としないまま、番組の用意するトリックに振り回された印象です。

あと気になるのは、ジャミーンとドラムが、言葉を話せないという、共通の障害を負っている点。二人については情報がなさ過ぎて何者かがわからないまま終了しました。テントは孤児院を運営しており、バルカ警察にはその出身者が多数おり、統率していたチンギスもその一人でした。最終回のあのシーンには不覚にもうるっと来ましたね。ドラムは公安側の協力者、ジャミーンはテントに拾われたアディエルの娘ということだから、過去に接点はないように見えましたが果たして。

また最後の最後に公安の新庄がテントのモニターであることが明かされました。新庄は山本を尾行したことがあり、山本は別班に拉致されて見失います。別班と公安は情報を共有しませんから、彼としてはかりそめの職務全う中のミスであるかのようでしたが、新庄と山本が身内であったことは互いに知らなかったのでしょうか。判明した後に振り返ると不審な気がします。

毎シーンに思わせぶりなアイテムが散りばめられており、あれはこれの伏線だったと謎解きを楽しませる娯楽要素に事欠きませんが、そのやり過ぎが鼻について飽きてきた頃、世間の盛り上がりは尋常じゃないものになっていました。娯楽とは常にそのように破綻に目を瞑ってでも過剰性で人の心を掴もうとします。しかし何であれTBSによっては成功だったと言えるでしょう。

ドラマの完成度という意味で、ひとつ指摘したいのは、劇伴が時々興醒めを誘った点です。諜報部という設定でボンド映画的な作風はありですが、時に昭和な人情もの風にメローなサウンドが流れるのが残念でした。作曲家に対し、そのようなオーダーが出されたはずですが、もう少し現在的な音楽なら良かったと思います。

TBSの緑山スタジオは私自身が長年住んでいた土地に近いところにあります。これまで無縁でありましたが、現在通っているゴルフスクールが、そのスタジオが保有するゴルフ練習場で開催されています。それもあと10日で無くなるのはとても残念です。あちこちにVivantのポスターも貼ってありましたが、最終話の放送が終わるや、すでに撤去されていました。

例の芸能事務所所属のタレント達が出演し、すでに制作が進行し、あるいは完成されている番組コンテンツが、この秋以降、どのような扱いがされていくのか気掛かりです。芸能事務所と放送局(マスコミ)との癒着が問われるだけではなく、スポンサー企業の胸襟と共に、それら全てを、ある意味で統括する立場にあった広告代理店の罪は深いものだと思います。膿を出し切る、となれば果ては政治にまで波及する国家を揺るがす大問題に発展しかねない火種であると、多くが明らかになった現在、危惧する次第です。というわけで、痛々しくて見ていられないタレントさんを、当分の間目にする心痛を国民がシェアすることになるのでしょう。浸透度が高いだけに、全国民が傷ついてしまっています。勝ち逃れがないよう、厳しく対処して頂きたい。

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