コインハイブ事件について思うこと
2020年2月7日、コインハイブ事件の高裁判決があり、有罪という結果になりました。僕はこの結果に対して、非常に残念に思っており、憤りを感じています。
Twitterなどを見ていても、意見が割れる事件であり、いろんな立場で感想を持っている方がいる事は理解をしていますが、何故そう思ったのかを書いていきます。
ほとんどのITエンジニアが犯罪者になりかねない判決
僕はこの事件の判決について、ほとんどのITエンジニアが犯罪者として逮捕されかねない判決だという意見を持っています。大げさだということは理解していますが、この裁判の争点を見ると、そう思えてならないのです。
お前誰?
ITのエンジニアをしています。snicmakinoです。30過ぎのおっさんです。
IT業界の人間ですので、この事件で利用されている技術や背景などに関しては一般の方よりは理解していますし、どちらかといえば今回罪に問われている男性の立場に近い人間です。
コインハイブ事件とは
Coinhive事件 (コインハイブじけん) は、ウェブサイトに暗号通貨 MoneroのマイニングスクリプトであるCoinhiveを設置し、サイトの閲覧者に無断でマイニングを行わせたとして検挙された事件である[1]。
その中でも、Webデザイナーのモロさんが裁判に挑み、一審無罪を勝ち取り、第二審の高裁判決で逆転有罪となった一連のものを指しています。
閲覧したWebサイトで勝手にマイニングされていたら
この事件について有罪で当然と言う方の多くは、人のCPUリソースを勝手に使用して仮想通貨のマイニングしたら駄目でしょうという倫理観から有罪だと主張していると考えています。
僕自身、勝手にCPUのリソースがたくさん使われて重くなるページがあったら不快だと思いますし、そのリソースがマイニングに使われていたとすると、ネガティブな印象を受けるでしょう。
それは犯罪なのか
僕を始め、多くの日本人は人の嫌がることはしてはいけないと言われてきました。ただ、人の嫌がることをしたら犯罪かと言われるとそうではなく、日本では法律で罪とされているかにおいてのみ判断されます。
検挙された当時、その行為が罪であったかというと、必ず犯罪になるものではないというのが警視庁公式の見解だという認識を持っています。
2018年6月14日に「犯罪になる可能性」という注意喚起があり、「犯罪です」と明示しなかった点から見ても、掲載時点では犯罪になると自信を持って言えるようなものではありませんでした。
また、検挙された理由になったCoinhiveをサイトに掲載されていた時期は2017年9月下旬~11月上旬、警察が家宅捜索した時期が2018年の2月であったことは、モロさんのブログで明らかにされています。
上記のCoinhive導入が9月下旬で、削除が11月上旬。
警察からの連絡はそれから約三ヶ月後、2月上旬でした。
事件が話題になった現在でも、Coinhiveに対しての意見は(否定的な意見は多いものの)割れているが、検挙当時は存在すら知らない方が多く、一般的に犯罪であるという認知はされていませんでした。
Webページにマイニングツールを埋め込み、来訪者のCPUリソースを使ってマイニングを行うことが違法と言う見解が社会の周知の事実であれば、モロさんが行ったことは犯罪であり、検挙され、罰金を支払う義務を負わされるのは妥当だと考えていますが、そうではなかったと考えています。
Coinhiveと通常Webサイトで利用されているプログラムの相違点
裁判での争点であった、反意図性、不正性について、普段作っている(作ってきた)Webシステムで動作するプログラムと、Coinhiveの違いを明確に説明できないことが非常に危険であると考えています。
この事件でよく比較として扱われる動画広告は僕の意図に反して再生されます。(僕にとって)CPUリソースよりも深刻な、通信量を著しく消費し、不利益を被っている代わりに、サイトの提供者が広告代として利益を得ています。
また、僕はシンプルなWebページが好きで、アニメーションが沢山使われているWebページが好きではありません。
この(僕にとって)不要なアニメーションで無駄なCPUを使わされているとも解釈できます。20年前のインターネットユーザーが見たら、おかしなプログラムを埋め込まれたと感じてもおかしくない動きをするサイトもたくさんあります。
何が言いたいかと言うと、この判決は個人や時代によってゆらぎのある主観を頼りに有罪にしたように思えてならないのです。
また、僕がWebのサービスを作る技術者だから分かることなのですが、昨今のWebアプリケーションやサイトで、ユーザビリティを担保しつつ、ユーザーが意図したプログラムのみ動かす仕組みを作ることは、限りなく不可能に近いということも添えておきます。
まとめ
大げさに感じるかもしれませんが、この裁判が有罪であるということは、この裁判の争点においてCoinhiveと明確な違いを説明できないプログラムを作ってきた我々ITエンジニアは、警察のさじ加減一つで逮捕され、起訴され、判例に基づいて犯罪者となる可能性が有るということです。
この事件は我々にとって、仮想通貨をマイニングするスクリプトをWebページに埋め込むことが犯罪だという事例では無いのです。
JavaScriptによるマイニングツールを違法としたいのであれば、不正指令電磁的記録に関する罪を拡大解釈するのではなく、確実に罪だと言えるように法律を直してから取り締まっていただきたいと強く願っています。
裁判資金の寄付について
高裁の裁判費用については日本ハッカー協会を通して寄付を募っておりました。最高裁でも同じ様に裁判費用の寄付を募ることになるかと思いますので、少しでも協力したいという気持ちになってくれた方がいましたら、是非寄付をしてもらえればと思います。
寄付に関しては、日本ハッカー協会のTwitterでも告知があると思います。
終わりです
最後まで読んでくださりありがとうございました。
僕が主張したいことはほとんど書けたかと思いますし、一部のITエンジニアが感じていることを伝えることが少しは出来たのではないかと思っています。