きつねとへび②/ひとなつおもい
・前回
おれがマンガでかいたのはここまで。
・つづきをかくことができなくてごめんなさい
マンガを最初にXにアップしてからけっこう経っちゃった。
ごめんなさい。
でも、いまからいそいでみんなに、ちょっとずつ伝えていきます。
へびの年になっちゃうから、はやくしないとダメなんだよ。
・いろんなほうほうで伝えます
文章とか、わかりにくいときは、絵とか、残っていたら写真とかで、みんなに伝えます。よろしくおねがいします。
したの文章から、つづきがはじまります。
「これで畏(おそ)れるか」
おれをのぞきこんだ顔は、はっきり見やすくなった。
もようのかいてある紙がたれさがっていたときよりも、人間っぽい顔があらわれたあとのほうが、声とか言葉とか、いるなぁっていう感じとかが、ちゃんとしっかりわかった。
その人がしゃべる言葉は古くさいし、じいちゃんばあちゃんが居間で見てる再放送の大河ドラマみたいでところどころわかんなかったけど、「自分はエラい神様だ」ってアピールしたいみたいだ。
でもその人がほんとうに神様なのかおれにはしんじられなかった。
顔を変える中国のマジックみたいなやつ、ショート動画でめっちゃ見たことあるし。
おれはランドセルの防犯ブザーをちらちらみながら、いつでも逃げれるように準備をした。いまから急いでこの坂をおりたら、さっき出たしょうちゃんママの車においつくかもしれない。そしたら後部座席に乗せてもらう。
もしおいかけてきたら、まどから身を乗り出して、後ろに向かって水とうをごろごろ転がして、足に引っかけて転ばしてやろう。
おれは明日の運動会の開会式の時、りん時で表しょうされるかもしれない。
ふしん者をげきたいしたヒーローになるんだ。
「畏れておらぬな」
神様はおれの目をじり、と見つめた。
つくりは人間のかおにそっくりだったけど、目の形だけがぬらぬらとひかって、おかしい。
3年生の遠足で行った自然博物館にかざられていた、キツネのはく製にそっくりだった。
「畏れておらぬな」
あたりが急に暗くなって、冷たい風がふいてきた。
9月の終わりはまだまだあつくてさっきまで汗びっしょりだったのに、みるみるせなかがふるえていく。ちょっとおしっこがしたくなるのを感じて、足にぎゅっとちからをいれた。
あと一歩、あと一歩近づいてきたらブザーを引く!
そうケツイがみなぎって、胸元の輪っかにゆびをひっかけようとするよりさきに、ブザーの輪っかがひとりでに、おれのゆびにからみついてきた。
ちがう、ミミズだ。
おどろいて手をふりはらうと、ミミズはべたり、と地面におっこちて、ぐねぐねはいずりながらどこかに消えた。
ミミズがおっこちた地面、つまりおれの足元は、腐った葉っぱとドロがいりまじっていて、さっきまで立っていた通学路の古いアスファルトは跡形もなかった。
「うちに、カエりたいか。家族に会いたいか。」
今考えるとほんとうに、ほんとうにくやしかったんだけど、しかたがなかった。全然こわくないと思おうとしたのに、風は冷たいし、空はどんどん暗くなっていくし、おしっこがしたいし、足が重たくなってきて、
「家に帰りたいです」
と言ってしまっていた。
それをきいた神様は、顔のはしいっぱいまで口を釣り上げた。
ケキョキョキョキョキョ
ケキョキョキョキョキョ
のどのおくから、高い声を出しているすがたは不気味で、おれは目をひらいたまま立ちすくんでしまった。
「儂(わし)の尾を八つ、さがし集めて差し出せ。そうすれば本当にうちにカエしてやろう。」
そのことばを聞くと、目の前が急に開けて、おれはもといた場所に立っていた。まだ引かない夏のあつさと土くさいねっきがもどってきて、むわぁっとおれを包み込んだ。
下着がぬれてきもちわるい気がしたけど、さっきのひやあせがここまでたれちゃったのかな。
「尾を八つ…尾を八つ…」
忘れないように口の中で唱えながら、おれは、「本当じゃないかもしれなくなった」家にむかって、一歩ずつ歩いていった。
へびどしまで あと 4にち