イギリス政府・日本の家族法改正に12ページのパブリックコメントを大使館から提出英国連邦情報公開法でエコーニュースへ全文公開【全・11ページ掲載】
性別中立な血統権の創設
「家族法制の見直しに関する中間試案」(令和4年11月15日)の取りまとめ
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00169.html
イギリス政府・日本の家族法改正に12ページのパブリックコメントを大使館から提出
英国連邦情報公開法でエコーニュースへ全文公開【全・11ページ掲載】
2023年12月7日05時09分
以下の内容が公開されました。
国内の当事者、実務家、法学者などの方々の議論のため、掲載します。
PDFをコピーしたため段落ズレなどあります。
(後ほどnoteにもpdfのファイルを掲載予定です)
1
英国における家族法体系の概要:法域別の見解
(イングランド及びウェールズ、スコットランド並びに北アイルランド)
はじめに
英国には 3 つの法域があります。それは、イングランド及びウェールズ、スコットランド、そして北アイルランドです。スコットランドの家族法体系は独自のもので、他の法域の家族法体系と異なる点がいくつかみられます。
イングランド及びウェールズと北アイルランドも独自の家族法体系を持っていますが、両者にはかなり多くの共通点がありますしかし、子どもとの交流や居所などについて、子どもの福祉を至高(paramount)とすることなどは、いずれの法域でも共通しています。
これら 3 つの法域は、上訴裁判所までは独自の裁判制度を有しています。
具体的には、北アイルランドとイングランド及びウェールズには、控訴院(the Court of Appeal)というそれぞれ独自の上訴裁判所があり、スコットランドには民事上級裁判所(the Court of Session)の内院(Inner House)が置かれています。
連合王国最高裁判所(the UK Supreme Court)は、これら 3 つの法域から上訴された事件に対して判断を下す最終の上訴裁判所です。
「子ども」の定義について、イングランド及びウェールズ並びに北アイルランドでは、18 歳未満の者としています(ただし、フルタイムの教育課程を修了していない「子ども」の扶養に関する場合を除きます)。
スコットランドでは、親が親責任(parental responsibility)を負い、親権を有するのは、通常子どもが 16 歳になるまでですが、子どもが 18 歳になるまでは、引き続き指導をする責任を負います。
子どもとみなされる年齢は法律によって異なります。
例えば、教育又は訓練を受けている子どもに対しては、その子どもが 25 歳になるまでの間、親には、その子どもを扶養する義務(金銭的な支援を行う義務)があります。
いずれの法域にも、一般的な事柄を定めた法律はありません。
つまり、どの法域でも、親が自分の子どもをどのように育てるべきかについて法律に明記していないのです。
ただ、いずれの法域の裁判所も、子どもの養育について判断を下す場合、子どもの福祉を至高の考慮事項(paramount consideration)として扱わなければなりません。
イングランド及びウェールズでは、「親責任」を「法によって、子及び子の財産に関して子の親が有するすべての権利、義務、権限、責任及び権威」と法律で定義しています。
この定義は、議会で制定された、1989 年子ども法(the Children Act1989)のみに明記されており、この法律に関して適用されます。
北アイルランドでも、これと同じ定義が 1995 年北アイルランド子ども法(the Children (Norther Ireland) Order 1995)だけに規定され、この法律に関して適用されます。
スコットランドでは、「親責任」と「親権」について、それが明記されている 1995年スコットランド子ども法(the Children (Scotland) Act 1995)だけにとどまらない、汎用的な意味で定義されています。
イングランド及びウェールズと北アイルランドでは、両親が子どもの出生時に婚姻していたか、又はシビル・パートナーの関係にあった場合に、それぞれの親がその子どもに対して親責任を有します。
スコットランドでは、懐胎時又はそれ以降に婚姻したか、又はシビル・パートナーの関係にあった場合に、それぞれの親がその子どもに対する親責任と親権を有することになります。
イングランド及びウェールズでは、母親は、子どもが生まれた時から自動的に親責任を負います。
父親の場合、子どもの母親と婚姻しているか、又は(英国内のどこでその子どもが生まれたかに応じて異なる特定の日付以降の)出生証明書に名前が記載されていれば親責任を負うことになります。
親が自動的に親責任を負わない場合、その者は親責任の申請を行うことができます。
英国の各法域における出生登録と親責任
イングランド及びウェールズで出生登録を行う場合、子どもの出生時にその子の両親が婚姻しているか、又はその子を共同で養子として迎えている場合、両方の親が親責任を負うことになります。その後、二人が離婚しても、引き続き双方が親責任を負うことに変わりはありません。
イングランド及びウェールズで非婚の父親が自分の子どもに対する親責任を取得する方法には、次の 3 つの方法があります。
それは、子どもの出生登録を母親と共同で行う方法(2003 年 12 月 1 日以降)、母親との間で親責任に関する合意を結ぶ方法、そして、裁判所から親責任に関する命令を取得する方法です。
スコットランドで出生登録を行う場合、父親が親責任と親権を有するのは、父親が、母親が懐胎した時点でその母親と婚姻しているか、若しくはシビル・パートナーの関係にある場合か、又はその後のいずれかの時点でその母親と婚姻したか、若しくはシビル・パートナーの関係になった場合です。
非婚の父親が親責任と親権を有するのは、母親と共同で出生登録を行うことによって、その子どもの出生証明書に名前が記載された場合です(2006 年 5 月 4 日以降)。
北アイルランドで出生登録を行う場合、父親が親責任を負うのは、子どもの出生時にその子の母親と婚姻していた場合です。
父親が子どもの出生後にその子の母親と婚姻した場合、婚姻時に北アイルランドに住んでいた父親については、子どもに対する親責任を負います。
非婚の父親が親責任を負うのは、子どもの出生証明書に氏名が記載されているか、又は記載されることになった場合です(2002 年 4 月 15 日以降)。
英国外で行われた出生登録
英国外で生まれ、英国外に常居していた子どもが、英国に居住するようになった場合に誰が親責任を負うのかは、その子どもが現時点で常居している法域によって異なります。
また、英国は、親責任と子の保護措置に関する 1996 年ハーグ条約(The 1996 Hague Convention on Parental Responsibility and Measures for Protection of Children)の締約国でもあります。
子どもが、この条約の別の締約国から英国に移り住む場合、その別の締約国で親責任を有していた者が、英国でも引き続き親責任を負うことになります。
親責任の行使については、その子どもの新しい常居所の法域が定める法律によって規律されます。
同性の両親
同性の両親は、治療(例えば、精子提供による人工授精や不妊治療)時にシビル・パートナーの関係にあったか、又は婚姻していた場合に、二人で親責任(スコットランドの場合は親責任と親権)を有することになります。
婚姻していないか、又はシビル・パートナーの関係にない同性の両親の場合、セカンド・ペアレントは、次のいずれかの方法で親責任(スコットランドでは親責任と親権)を取得することができます。
その方法とは、もう一方の親と共同で出生登録を行う方法、親責任に関する合意を結び、それを登録する方法、裁判所に申立てを行って命令を取得する方法、又はもう一方の親の配偶者若しくはシビル・パートナーになる方法のいずれかです。
財産
イングランド及びウェールズでは、1989 年子ども法で、子どもの養育と子どもの財産又はそこからの収入の管理について規定しています。
同様のことを、北アイルランドでは 1995 年北アイルランド子ども法で規定しています。
スコットランドでは、子どもの法定代理人を務める責任と権利を、その子の親が有します。
以下では、英国の各法域で法律がどのように適用されているかについて説明しますが、その際、財産に関しては解説しません。
また、女性のセカンド・ペアレント又は養親に関する法律についても解説しません。
中間試案
第1,親子関係に関する基本的な規律の整理について
1 子の最善の利益の確保等
親が自分の子どもをどのように育てるべきかについては法律に明記されていません。
子どもが誰と暮らすべきか、又は誰と交流するべきかについて裁判で争われる場合、イングランド及びウェールズ並びに北アイルランドの裁判所では、子どもの年齢や理解能力を考慮したうえで、確かめられる限りで、その子の希望や感情を考慮しなければなりません。
イングランド及びウェールズでは、裁判所が、裁判の当事者である個人が参加しなければならない活動について、つまり、子どもの生活へのその個人又は他方当事者である個人の関与を確立し、維持し、又は向上させるために有益だと裁判所が思料する活動について、活動に関する指示を出すことができます。
いずれの法域の裁判所も、子どもの養育に関する問題について判断を下す場合には、その子どもの福祉を至高の考慮事項としなければなりません。
スコットランドでは、裁判所は、子どもの年齢と成熟度に応じて、その子どもの意見を聴く必要があります。
2 子に対する父母の扶養義務
英国のいずれの法域の法律も、「直系血族」を扶養する義務を定めていません。
イングランド及びウェールズでは、親に「家族としての子ども(a child of thefamily)」を扶養する義務があります。
この場合の「家族としての子ども」とは、婚姻若しくはシビル・パートナーの関係にある当事者双方の子どもか、又はそれ以外の子どもで、婚姻若しくはシビル・パートナーの関係にある当事者によって、家族としての子どもとして扱われてきた子ども(ただし、地方当局又は民間機関によって里子として措置された子どもを除く)を言います。
注意点:英国の地理上の領土は、イングランド及びウェールズ、スコットランドそして北アイルランドです。
ここで言う「イングランド及びウェールズ」とは、法域のことを意味しています。
中間試案 第2,
父母の離婚後の親権者に関する規律の見直し
離婚の場合において父母双方を親権者とすることの可否
イングランド及びウェールズの法律では、子どもの将来に関する裁判所の判断は、離婚手続きとは別に行われます。
スコットランドと北アイルランドにおいては、子どものために作成された取決めに対して裁判所が確証を得なければ、離婚が認められません。
別居中又は離婚した親は、二人の間で子どもに関する取決めを結ぶことが望ましく、ほとんどの親は、裁判所の手を借りずに自分たちだけでそうした取決めを結んでいます。
イングランドでは、要扶養児童を持つ家族(別居中か否かを問わない)の中で、裁判所に私法上の申立てを行う家族が占める割合は、毎年 0.75%未満と、ウェールズにおける割合(1%未満)をわずかに下回っています。
イングランド及びウェールズの家事調停助成制度(Family Mediation Voucher Scheme)を利用して、これまでに調停期日に参加した家族(2021 年 3 月にこの制度が導入されて以来、13,500 世帯を超える)の 65%が、裁判所の手を借りずに完全な合意又は部分的な合意に達しており、合意を正式なものにするために裁判所に同意命令を申し立てたのはわずか 3%にすぎません。
家庭内暴力があったとされるケースの場合、両方の親は合意の締結又は調停を行う必要はなく、裁判所が判断を下すことになります。
つまり、離婚している子どもを持つカップルの 50%以上が、裁判所の介入なしに子どもに関する取決めを結んでいることになります。こうしたカップルが後になって、取決めが反故にされたとして裁判所に申立てを行うことになったのか、又は同意に基づいて取決めを結んだにもかかわらず、その取決めに違背され、片方の親が命令の履行若しくは同意命令の条件の変更を裁判所に申し立てることになったのかについてのデータはありません。
スコットランドについての統計データはありません。
イングランド及びウェールズでは、裁判所が子どもに関する取決め命令を作成します。
これらの取決めは、その子どもが、誰と、いつ暮らさなければならないのか(以前は居所とされていました)ということや、誰と、いつ交流しなければならないのかを取り決めるものです。
この場合の交流は、直接的なものと間接的なもののいずれでも可能です。
裁判所は、交流の禁止を命じることもできます。
子どもに関する取決め命令で、子どもと暮らすことが認められた者は、たとえそれ以前に親責任を有したことがなくても、親責任を有することになります。
こうした命令に関しては、裁判所に変更を申し立てることもできます。
スコットランドと北アイルランドでは、子どもの将来について、裁判所が居所及び交流に関する命令を発令します。
2 甲○1 案
イングランド及びウェールズの子どもに関する取決めについての法律では、子どもの福祉を至高と位置づけており、どちらかの親が養育に参加することによって、子どもが損害を被る恐れがあることが証明される場合を除いて、子どもの福祉は両方の親の関与によって向上すると推定しています。
これは、親の関与の推定と呼ばれ、親が母親であっても父親であっても適用されます。
イングランド及びウェールズにおいても、関与には直接的なものと間接的なものが含まれますが、子どもに関与する時間に明示的な配分はありません。
子どもが誰と暮らし、誰と時間を過ごすべきかについては、子どもの最善の利益に基づいて判断しなければならないため、共同養育が自動的に推定されることはありません。
裁判所が、子どもの福祉のためには共同居所に関する取決めが必要だと判断した場合、裁判所はその旨の命令を発令することができます。
スコットランドでも同様に、子どもの福祉が至高とされています。
そのため、両方の親が関与しても安全である場合は、両方の親が子どもの養育に関与するべきだとの方針が採られています。
スコットランドの判例法を見れば、裁判所が概ねこの方針に従っていることがわかります。
2020 年スコットランド子ども法の第 16 条は、1995 年スコットランド子ども法を改正して、両方の親が子どもの養育に関与できるようにするものですが、この規定はまだ発効していません。
https://www.legislation.gov.uk/asp/2020/16/section/16/enacted
3 (1)監護者の定めの要否
親同士で子どもに関する取決めについて合意できない場合、イングランド及びウェールズでは、前述した通り、裁判所に申立てを行い、子どもが誰といつ暮らし、誰といつ交流するのかについての命令を発令してもらうことができます。
この場合、裁判所は、個々のケースの事実関係を考慮したうえで、両親と子どもの具体的な状況に対応した命令を発令します。
裁判所の命令は、子どもの最善の利益を実現するものでなければならず、そのため裁判所は、「不介入原則(No OrderPrinciple)」を適用する場合があります。
これは、命令を全く出さないよりも決定を出す方が子どもの利益にかなうと裁判所が思料しない限り、1989 年子ども法に基づくいかなる命令も発令してはならないという原則です。
スコットランドで 1995 年スコットランド子ども法に基づいて発令される子どもの交流と居所に関する命令についても同様です。
つまり、子どもの福祉は至高であり、この場合も、「不介入原則」が適用されるのです。
3 (2)α案
監護者は、単独で親権を行うことができ、その内容を事後に他方の親に通知しなければならない
イングランド及びウェールズでは、1 人の子どもに対して複数の者が親責任を有する場合、それぞれがその責任を果たすために、他の者とは別に、単独で行動することができます。
ただし、この規定は、子どもに影響をもたらす事項について複数の者の同意を義務づけている法律の規定の適用を妨げるものではありません。
例えば子どもの教育や治療について、親責任を有する複数の者の意見が一致しない場合には、裁判所の判断を仰ぐことができます。
また、子どもを海外旅行させる場合などにも、親責任を有する他の者の同意が必要となることがあります。
このような場合に親責任を有する者の意見が一致しなければ、裁判所に判断を委ねることができます。
スコットランドについても同様です(1995 年スコットランド子ども法第 2 条 2 項を参照)。
https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1995/36/section/2
親責任及び親権(PRRs)を有する両方の親の同意が必要な場合の具体例としては、
子どもを海外に連れ出す場合(同じく第 2 条を参照)や、
スコットランドで提出した出生登録に記載した子どもの名前を変更する場合があります。
https://www.legislation.gov.uk/ukpga/1965/49/section/43
3 (2) γ案
親同士で子どもに関する取決めについて合意できない場合、イングランド及びウェールズでは、前述した通り、裁判所に申立てを行い、子どもが誰といつ暮らし、誰といつ交流するのかについての命令を発令してもらうことができます。
この場合、裁判所は、個々のケースの事実関係を考慮したうえで、両親と子どもの具体的な状況に対応した命令を発令します。
裁判所の命令は、子どもの最善の利益を実現するものでなければならず、そのため裁判所は、「不介入原則」を適用する場合があります。
これは、命令を全く出さないよりも決定を出す方が子どもの利益にかなうと裁判所が思料しない限り、1989 年子ども法に基づくいかなる命令も発令してはならないという原則です。
北アイルランドでも、1995 年北アイルランド子ども法に基づいて、またスコットランドでも同様に 1995 年スコットランド子ども法に基づいて「不介入原則」が適用されます。
3 (4) 子の居所指定又は変更に関する親権者の関与
イングランド及びウェールズでは、前述した通り、子どもに関する取決めについて親同士で合意することが望ましいとされています。
親同士が合意に達せず、裁判所が子どもに関する取決め命令を発令する場合、その命令には、その子どもが、誰といつ一緒に暮らすべきかが明記されます。また、この命令では、子どもが複数の違う人物と、異なる時期に暮らすこと、及び/又はある人物と過ごしたり、若しくは、それ以外の方法でその人物と交流することについて定めることも可能です。
合意済みの取決めを変更したいという場合も、裁判所に申立てを行うことができます。
裁判所は、居所及び交流に関する規定を追加、変更又は削除するために、命令を発令することもできます。
これは、スコットランドについても同様です。ただし、スコットランドでは子どもに関する取決め命令ではなく、居所及び交流に関する命令と引き続き呼んでいます。
北アイルランドでも、居所及び交流という表現が引き続き採用されています。
5 認知の場合の規律(注)
イングランド及びウェールズにおいて裁判所が関与する場合、その裁判所は、子どもの福祉を至高の考慮事項として、子どもの最善の利益を実現できる命令を発令します。
イングランド及びウェールズでは、母親が自動的に親責任を有します。
子どもの出生時にその母親と婚姻していた父親も親責任を有します。
親責任を婚姻によって有することになった父親の親責任を排除する(子どもが養子である場合を除く)ことを定めた現行法規はありません。
親が自分の子どもに対する親責任をどのようにして取得したのかに関わらず、裁判所は、親責任の行使を制限する命令を発令することができます。
イングランド及びウェールズでは、子どもが誰と暮らし、誰と時間を過ごすべきかについては子どもの最善の利益に基づいて判断しなければならないため、共同養育が自動的に推定されることはありません。
裁判所が、子どもの福祉のためには共同居所に関する取決めが必要だと判断した場合、裁判所はその旨の命令を発令することができます。
非婚の父親による親責任の取得については、はじめにをお読み下さい。
スコットランドでは、母親が自動的に親権と親責任を有します。
父親が親権と親責任を有するのは、子どもの母親と婚姻しているか、若しくはシビル・パートナーの関係にある場合、その母親と共同で出生登録を行った場合、その母親と一緒に親責任及び親権に関する書式への記入を完了して、それを登録した場合、又は裁判所がその父親に親権と親責任を認めた場合です。
女性のセカンド・ペアレントが親権と親責任を有するのは、治療時に子どもの母親と婚姻していたか、又はシビル・パートナーの関係にあった場合です。
それ以外の場合にこの女性が親権と親責任を取得できるのは、子どもの母親と共同で出生登録を行うか、その母親と一緒に親責任及び親権に関する書式への記入を完了して、それを登録するか、又は裁判所がその女性に親権と親責任(Parental Responsibilities and Rights)を認めた場合です。
裁判所は、親権及び親責任を有する者から、親権及び親責任を剥奪することもできます。
中間試案 第3,父母の離婚後の子の監護に関する事項の定めなどに関する規律の見直し
1 離婚時の情報共有に関する規則
イングランド及びウェールズでは、子どもに関する取決めの作成は、親の離婚とは別に扱われます。
スコットランドの裁判所は、離婚又は関係解消に関する判決を下す前に、子ども(16 歳未満)について取決めが行われていることを確認しなければなりません。
を参照。
2 (2) 養育費に関する定めの実効性向上
別居中又は離婚した親は、支払う側の親から受給する側の親(子どもを養育する親)に対して支払われる扶養(養育)費の額について、双方の間で合意することが望ましいとされています。
この額は、支払う側の親が子どもと過ごす時間に応じて調整されます。
ただし、親同士が養育費について合意できない場合には、子どもの養育費サービス(the Child Maintenance Service。以下「CMS」)という機関を利用することができます。
支払うべき養育費の額を CMS が決定しなければならない場合、CMS は手数料を請求します。
2 (3) 法定養育費制度の新設
子ども 1 人ごとに支給する児童手当(公的な養育費)について、最初の 2 人の子どもに支給する額は、第三子以降の子どもに支給される額よりも多く支給されます。
1 人の子どもの児童手当は、1 人の者しか受け取ることができません。
児童手当を受け取る資格があるのは、16 歳未満の子ども又は認証を受けた教育課程若しくは訓練を受講中の 20 歳未満の子どもに対して責任を負っている英国在住者です。
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中間試案 第5,子の監護に関する事項についての手続きに関する規律の見直し
英国のどの法域にも、住民登録制度や、いわゆる住民基本台帳ネットワーク制度はありません。
裁判所は、政府の特定のデータベースでわかる最新の住所の開示を命じることができます。
3 親子交流に関する裁判手続きの見直し
英国政府の理解として、「親子の交流」(“parent-child exchange”)とは、子どもと、その子どもと同居していない親との交流をいいます。
両方の親が子どもとの交流について合意できなかった場合、裁判所は交流に関する命令を発令することができます。
イングランド及びウェールズでは、家事事件には仲裁が採用されません。
調停の利用は任意です。
家族法を巡るさまざまな種類の紛争で、裁判所に命令の申立てを行う個人は、家調停情報及び評価会議(Mediation Information and Assessment Meeting。略称は「MIAM」)への出席を免除されている場合を除き、MIAM に出席して家事調停について検討したことを裁判所に証明しなければなりません。
MIAM への不参加が許される正当な理由には、当事者らが同意命令の発令を申し立てていること、申立ての対象となっている子どものいずれかが緊急手続、監護養育手続又は監督手続の当事者であること、申立てに名前が記載された子どものいずれかが緊急保護命令、監護養育命令又は監督命令の対象であること、家庭内暴力の存在を示す証拠があることなどがあります。
両方の親は、自分たちの子どもを巡る問題―例えば、子どもがどこに住むべきか、誰と時間を過ごすべきかなど―について、二人の間で独自に、又は調停を利用して合意することができます。
こうした問題について合意できない場合、両方の親は、その判断を裁判所に委ねることができます。
スコットランドには MIAM のような機関はありませんが、調停を希望する場合には資金援助を受けることができ、その活用も奨励されています。
子どもに損害が及ぶ恐れがあると思われる場合、裁判所は、子ども交流センター(Child Contact Centre)における監督下での交流か、又は別の成人(例えば祖父母)による監督のもとでの交流を命じることができます。
子どもを一方の親からもう一方の親に引き渡さなければならない場合、親同士の接触を避けるために、引渡しは子ども交流センター(Child Contact Centre)を通じて行うことができます。
また、祖父母やそれ以外の家族などの第三者が関与する形での引渡しを命じることもできます。
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