リア充はアニメを見ない4
塩谷の柔道場の広さはかなりのもので、7〜80畳はあったのではないかと記憶している。
E組のクラス合宿が始まる直前に全ての畳を入れ替えたらしく、ものすごく綺麗だった。
前日の夜は皆で大量に酒を飲み、北村に綺麗なドロップキックを決め、彼がガチでキレたので本気で謝った辺りからの記憶は無い。僕はいつの間にか畳の上で落ちていた。
重い頭痛と共に畳の上で目を覚ますと同時に雰囲気の重さを感じた。
『これやべーよな。。どうしよう。。。』
そんな声が聞こえていた気がする。
周りを見渡すと、そこらじゅうに酒やらジュースをこぼした染みがあった。
それだけであればまだ何とか誤魔化せたかもしれない。
どうにもならないのはタバコで付けた焦げ跡だった。
今の様にスマホが普及していれば色々な知恵を拝借し、その場を凌ぐことが出来たも知れないが、当時は諦めるしかなかった。
あれだけの広さがあったのだから、その部分だけ切り取ってしまってもバレなかったかも知れない。
しかしやはり所詮は16歳のキッズである。
北村と勝手に他クラスの合宿に潜入した事が学校にバレてしまう。
酒を飲んだ事が学校にバレてしまう。
タバコを吸っていた事が学校にバレてしまう。
両親にも少しは怒られるだろう。
様々なネガティブな可能性がひたすら頭を駆け巡った。
さんざん悩んだ結果、自分達でサタンに真相を告白する事にした。
それが自分達の中で最善の選択だったが、あわよくばサタンがうまく揉み消してくれないか?などという本当にごく小さな期待もしていた。
しかし現実は厳しいものだった。
東京に戻った数日後の放課後、合宿の宴会に参加したメンバー全員と僕と北村、そして全員の保護者が校長室に呼び出された。
参加したメンバー全員が3日間の停学処分。
首謀者とみなされ諸悪の根源扱いされた僕と北村は1週間の停学処分が下されたのだった。ちなみにこれが高校に入って初めての停学処分だった。E組の半分以上の生徒が宴会に参加していたものだからこの3日間は学級閉鎖してもいいんじゃないかと思った。
僕も両親には絞られるかと思っていたが『もっとうまくやれ』といった小言を言われただけで終わった。
寛容だったのかはたまた無関心だったのか。
いや、無関心ということは無いだろう。普段から僕の部屋には友人達が集まり、部屋はタバコの煙でモクモクしていた。そんな状態でも母はみんなに夕食を振る舞ってくれていたし。
まぁそんなこんなで僕の停学生活が始まった。
言うなれば臨時の休日が1週間も貰えたのと同じ事だ。今思えば本当にバカなのだが、僕はメチャメチャ嬉しかった。
つづく
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