総合商社って実際何してるの?
もう10年以上前の話ですが、就活シーズンになると総合商社の説明会ブースがスーツ姿の学生で溢れかえっていたのを思い出します。
私も学生時代説明会に足を運んで一生懸命社員さんの話を聞いていましたが、事業分野や事業形態が多岐に渡りすぎていたため、一言で商社ってどう説明するんだろう?志望動機なんて言ったらいいんだろう、と最後まで不安だったのを覚えています。今の就活生の中にも、同じ疑問や不安を持った人がいるんではないでしょうか。
振り返れば仕方のないことです。商社の説明会では、人事部に若手が借り出され自分の仕事や企業風土について説明しています。私も例外なく駆り出され、まだ商社の全貌が見えていない新米でしたが、冷や汗かきながら一生懸命説明しました。説明会で一生懸命説明していた私達の様な若手は、まだ経験が浅く、事業や会社の全貌が見えていないので、抽象的な言葉で商社全体を表現することができないからです。
ちなみにこれは若手だけでなく経験豊富な幹部層の方にも難しいトピックの様です。ある幹部層は「商社は世界に類を見ない特殊な業態だから、我々はShoshaではないでしょうか」と仰ってましたが、何の説明にもなっていません笑。あまりの突拍子のなさに、驚きすぎて誰も何も言えませんでした。
海外では日本に比べて転職する人が多いので、駐在先で過去の経験や職業について話す機会が増えました。日本みたいに「XX商事です」といってすぐ分かってもらえるばかりではありませんので、商社を退職してからもずっと、「商社の事業をサクッと表現するにはどうしたらいいんだろう」という問いに向き合い続けました。今更感はありますが、数回の変遷を経て、最近漸く良い表現を見つけたのでシェアしたいと思い、筆を取りました。
まず駐在員時代には、Japanese Conglomerate (日本の複合企業)と呼んでいました。それはそうなんだけど、これだと何してるの?というDoの部分が欠けていました。シンガポールで勤めた会社では、Trading Companyとしていましたが、貿易を伴わない出資や経営だけに携わる事業(プラント事業や金属エネルギー開発事業)もあるため、これでは半分網羅しきれてません。
MBAでは、商社から派遣されて来ていたクラスメートがInvestment & Operating Companyと呼んでいました。出資を伴わない貿易のみの切った貼ったの属人的なビジネスを減らし、M&Aを通してアセットプレーを良しとする風潮があるので、時代の流れに沿った表現ではありますが、逆に出資をせずにやる口銭・帳合ビジネス(食料や化学品分野等)もまだまだ沢山あるので、70点くらいの表現かと思います。ちなみに、人の繋がり無しに、良い出資・買収話なんて来ないので、口銭・帳合ビジネスは重要な機会発掘手法です。中々日の目を浴びずらい商売ですが、そんな中からビジネスチャンスを生み出し育てる能力は、商社パーソンの本質であり強みだと思います。
さて最終的に私がたどり着いたのは、Multi-Finance Companyです。アメリカでの勤め先の上司に、「あぁ君はFinance出身で数字に強そうだから、Security/Cryptography専任になってもらうね」と言われ、初めは「ん?Financeじゃないけどな。。。」と首を傾げましたが、考えれば考えるほどMake Senseしてきて、この表現にたどり着きました。長くなりましたので、次回号、商社の解体新書でなぜこれがしっくりきたのか説明していきます。
P.S. 私の就活生時代は「戦略立案に関わるだけでなく、現場でも第一人者として事業を推し進める商社の立ち位置が好きで志望しました」と言ったフワっとした志望理由で乗り切りました。