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気まぐれで多動な冒険者 ユイカ


水商売をやる上で、話のネタにするべきでない三大要素をご存じだろうか。



それは『政治・宗教・スポーツ』といった、対立をする事のある内容である。


例えば、オリンピックやWBC、選挙や年号が変わったりとみんなで話して、「面白かったね。令和になったね。」などと話す分には問題ない。

やれこの派閥を支持してる、この人はこういう事をしているからダメだ。あの球団はこれができないからダメなんだ。など話してしまうお客はもちろんスタッフがいる。

もちろんその話題がタブーな事、なぜダメなのかわからない人もいる。
そういう時は、スタッフへは連絡網を使って指導したり、お客に対してはやんわり話題を変えていくなどして対策を取ったりしていた。



そんなある日、耳を疑う会話が隣から聞こえて来た。


「私、この間大地震を止めたんです!!!」



おいおいおい。嘘だろ。
冗談とか話のネタでもなく真剣に語ってるではないか。
目の前のお客はもちろん興味がなく目がテンに。


彼女こそ、水商売歴25年・オカルトや陰謀論、政治ネタ好きな『ユイカ42歳独身』である。

年齢を公言しないと30代前半に見えるほどの容姿の良さ、水商売経験も長く、ハキハキ元気なのもあり採用したが、蓋を開けるとまあびっくり。

やれ政治派閥の政策についての個人論を、求めていないお客にぶつけ、人が話してる最中にも自分が話したくなると割ってでも話しかけてくる。


働く月日が流れるほど、採用間違えた…?と心配になる事もしばしば。


だが、類は友を呼ぶのだ。

ユイカ推しの客が現れるのだ。(この話はまた改めて)


ユイカも悪いところだらけではない。水商売歴が長い分、売上を上げるために(そして歩合をあげるために)営業をガンガンする。雇い主の私からすると、とても頼もしいこと。

ただ、ただ…
お願いだから、政治の話は辞めてくれ。相手の求めていない話(オカルトや陰謀論)も控えてくれ。
注意すると“ゼロヒャク“の人間だからか、一切口を聞かなくなる。ナンテコッタ。


そういう時の対応は、カラオケをするようにどうにか流れを作る。
お客が歌うのではない。ユイカに歌わせるのだ。


歌う事が好きなユイカ。最低でも5分はユイカの話を聞かなくて済む。


そんなユイカは、昼職を始めたのをキッカケに出勤回数が減った。自分の呼んでいるお客さんがいる時だけ出勤するシステムになったのだ。

こちらとしてはとても好都合。

ユイカの呼ぶお客は、“そんな“ユイカの事が好きでお店に来るのだ。

お店の一番端のカウンター席で、2人だけの空間にして放っておく。
お客はVIP待遇と勘違いし、ユイカに気に入られたくシャンパンを注文する。


お客、ユイカ、お店

みんなが円満に済んだ。



そんなユイカの話はまた今度…




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