【十字靱帯】交叉するのはなぜ?
膝関節の十字靭帯(前十字靭帯と後十字靭帯)の解剖を解説します。
まずこちら膝関節で大腿骨を半透明して見ていきます。
こちらが前十字靭帯です。
前十字靭帯、上の方は大腿骨の課間窩の外側壁に付着しています。
下の方は脛骨の課間領域の前方に付着しています。
横から見てみますと、このように靱帯が張っているので、脛骨が前方の方にシフトしてしまう前方偏位を防ぐ働きがあります。
ここでしっかりと突っ張るわけですね。
次に後十字靭帯。
今度は後ろから見てみましょう。
後十字靭帯は、上は大腿骨の課間窩の内側壁、下は脛骨の課間領域の後方に付着しています。
こちらもまた横から、側方から見てみますと、このように張ってますので、脛骨が後ろの方にシフトする後方偏位を防ぐ働きがあります。
ここでしっかりと突っ張るわけです。
このように前十字靭帯と後十字靭帯は膝関節の前後方向の安定性を確保している、そのような役割があります。
そして、これらの十字靭帯、前十字靭帯と後十字靭帯の最大の特徴は、これら2つの靭帯が交叉していることです。
では、なぜこの2つの靭帯は交叉しているのでしょうか。
簡単なモデルを考えてみたいと思います。
まず交叉しない2つの靭帯が張っている場合を考えてみます。
ここに円を描きまして、このように交叉しない2つの靭帯が張っているとします。
この場合、前後方向への偏位を防ぐことはできます。
しかし、このように交叉しないものが張っていると回転運動、つまり屈曲伸展の運動も阻害されてしまいます。
では今度は交叉する2つの靭帯が張っている場合というのを考えてみましょう。
この場合、前後方向への偏位を防ぐことができますよね。
その上で、回転運動、つまり屈曲伸展の運動も可能になるんですね。
このような形でこっち側に回転するとこんな感じですね。
クロスしている部分が、このように少し形を変えて、回転運動というのか可能になるのです。
そしてもちろん前後方向の偏位は防げる、安定性は確保できるというのが、この『交叉系』なんです。
2つの靱帯が交叉していることで膝関節の屈曲伸展の運動を確保しつつ、前後方向の安定性確保が可能になっているのですね。
ちなみに系統発生的には両生類以降の全てに十字靱帯が見られます。
進化の過程でも、陸上で生活する上で膝関節の安定性確保が非常に重要であったこと、そこに十字靱帯が果たす役割が大きいことがうかがえます。
以上、膝関節の十字靭帯(前十字靭帯と後十字靭帯)の解剖を解説してみました。
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