オクトパストラベラーシリーズが好きな理由を考えてみた
オクトパストラベラー、あるいは、オクトパストラベラー大陸の覇者というゲームをご存知だろうか。
前者はハード(Steam、Switch、XboxやWindowsなど)、後者はソシャゲ(iOS・Android)で遊べるRPGゲームだ。
私は長年ゲームに触れてきたような人間ではないので、ゲーム系の情報に触れる人ならともかく、ゲームをしない人ならあんまり聞かないゲームのタイトルなのかもしれない、と思う。実際、私の周りに知っている人は少なく、私が狂ったようにつぶやいているから知った、という人も多い。
ただ、東京に住んでいる人は、もしかすると電車で宣伝を見たことがあるかもしれない。
オクトパストラベラーというゲームの魅力を語る……ことはできないが、私がなぜこのゲームを好きで、そのゲームにどっぷりはまってしまったのかを語りたくなったので書こうと思った。
きっかけは角田光代の「世界中で迷子になって」だ。というか、私は感化されやすい人間なので、言葉が降りてきたらいいたくなってしまうだけなのだ。
オクトパストラベラーについて
オクトパストラベラーはスクエニさんが出しているRPGゲームだ。
公式サイトは以下になる。
様々なプレイヤーが実況動画なりRTAなりブログなりSNSなりで良いところや楽しいところ、何が楽しかったのかを語っているので、自分で気になる感想を調べていくのもありかもしれない。しかし、可能ならば、ネタバレを読む前に自分で遊んでみてほしい、と私は強く思う。
ちなみにソシャゲ版「オクトパストラベラー 大陸の覇者」はこちら。
この作品の良いところは、大きく分けて二つある。
「世界観」、そして「世界観に根ざしたストーリー」だ。
この二つを成り立たせるために必要な設定・音楽・演出が本当によくできている。これらが、オクトパストラベラーシリーズの魅力だと思う。
世界観
オクトパストラベラーの世界は、オルステラ大陸というとある大陸上での話が主となる。そして、この世界には魔法がある。見た目は中世〜近世ヨーロッパ風の世界観で、町の名前は大体その町の立地だったり役割だったりで名付けられているというシンプルな作り込みがなされている。
登場人物の名前もおおよそカタカナだが、時々、東国からきた・南方からきた・西方からきた、といった一文を持つ人々がいて、彼らの名前にはアジアっぽい名前がついている。
この世界には様々な国が存在するが、大陸横断型の旅が本作の主軸なので、プレイアブルキャラクターはそれぞれの国や地方を出身としていたり、出身地すら不明のキャラクターがいる。
彼らが時に集まり、仲間として旅に同行することができるのは、彼らの話す言語が統一されているからだ。
英語のようにアルファベットがあり、それぞれ独特な造形をしている。さらに「古代ホルンブルグ語」と呼ばれる古代語もあり、この言語については話者・翻訳者の数が少ないことが端々で明らかにされている。
言語が統一されているということは、各国・各地方の差異はその土地に根ざした文化から生まれるということにもなる。
これが、よくできている。
たとえばリバーランド地方と呼ばれる川の多く肥沃した地方は、穏やかな人柄のキャラクターが多いものの、NPCに話を聞くと戦火や疫禍が猛威を振るった時代があり、村人同士で結託して乗り越えてきた背景が読み取れる。一方、フラットランド地方と呼ばれる平原広がる同じく肥沃な地方には、穏やかで文化的なキャラクターが多く、どこか垢抜けたNPCが多い。子供達の発言内容にも違いがあり、フラットランドでは学者や勉学などの話が登場するのに対し、リバーランドでは子供同士の遊びなどの話が登場する。
同時代でありながら、各地方・各街での文化の差が明確に描かれているのである。
こういった部分をなぜ取り上げたかというと、ここが物語、引いてはプレイアブルのキャラクターたちに説得力を持たせるからだ。多少の余白はプレイヤーの想像力を掻き立て、ちょっとしたファンタジー要素は「こういうものならあるのかも」という許容を促す。
ゲームというものは、性質上様々な制限を持つ。これは小説や漫画にも言えることだが、ゲームの最たる制限は「プレイヤーが気にかけなければ存在しない」ことではないか、と私は思う。
しかし、オクトパストラベラーは全NPCに話しかけなくとも、各地方の街の雰囲気の違いを感じ取れるように画面作りがなされているし、プレイアブルなキャラクターのストーリーを進める上で最低限必要なことは目にするようにできている。情報の出し方がとても巧みで、うまいのだと私は思う。(無論、プレイヤーの背景が色付けにつながるので、必ずしも楽しめるかというと話は別だ)
世界観に根ざしたストーリー
次に挙げるのが、絶妙な塩梅で描かれる「物語」だ。これには、世界観形成に必要な設定のほか、キャラクターとストーリーの「演出」が重要になる。
さらに、「演出」には様々な要素が噛み合ってくる。
セリフ、音楽、動き。ゲームなのでキャラクターの動作は重要だ。そして、制限のある中で「このキャラ」らしい口調と言い回しを発揮せねばならず、音楽は同じ曲であっても場面ごとにその通りの文脈や雰囲気を持っていなくては途端にストーリーが陳腐になる。(※ここには優先順位があり、各ゲームによって何で演出をするかは異なるため、一概にはいえない。と私は思う。場面ごとに合致した演出をすることがなによりも大切なようにも思う)
オクトパストラベラーは、この点についてどれを取っても素晴らしい。
例えばセリフ。同じような場面でも各キャラで言い方が異なる。なぜなら各キャラはそれぞれの人生があり、それぞれ価値観があり、自分で選んだジョブ(職業)になっているからだ。
これは、オクトパストラベラー大陸の覇者で顕著だろう。例えば同じ花嫁・花婿探しでも、誰一人として同じような結末になったことはない。起承転結のキーポイントは同じであっても、みなそれぞれの人生を歩んでいるので楽しむことができる。
与太話だが、私は上記の理由からネタバレはあまり気にしない人間だ。起承転結や何が起こるかが明らかにされていようと、実際に自分がそれをみない限り、読んだことにはならないからだ。ただ、何も知らない、心構えをしない状態で読みたいということはあるので、それについては適宜避けることはある。
次は、音楽(これは私が言うまでもないだろう)。
これは作曲家の方がゲームの特性を踏まえた上で作られていることもあり、BGMから触れる人間には非常に効果的なものだった、とここに書き記しておく。(実際、私は戦闘BGMを聞いて、このゲームをプレイすることに決めたひとりだ)
同じ音楽でも、場面ごとに雰囲気やイメージ、色合いを変えるので、聞いている側として違和感がない。たとえば、よく取り上げられる「なんと滑稽な!」というBGMは、茶系統の色合いを持つBGMで、キャラクターが人を欺いたり、欺こうとしたり、その名の通りキャラクターとNPCのやりとりが食い違って滑稽な……コミカルな場合に使用されるが、この曲は「キャットリン」と呼ばれる希少魔物の登場時にも流れる。どこか間の抜けた、奇妙ではあるが突飛ではない。そんな曲なのだ。
BGMというのは、場面と紐づけられることでイメージや雰囲気、色合いが固定していきがちだが、本作のBGMはそれをいい塩梅で当てはめていると思う。
一方で、ここはこれだからいいのに、という意見も見かけたことがあるので、これを良しとするかどうかはそれこそ個人の好みかもしれない。
最後に「動き」だ。
本作は2D、ドットである。綺麗なイラストで、各キャラクターの様々な表情が見える、なんてことはない。感情を付けるのはどちらかというと音声のみで、あとはセリフから察するしかないわけだが、これを後押しするのがモーションである。
オクトパストラベラーもさることながら、オクトパストラベラー大陸の覇者でモーションが多様になり、よりキャラクターが魅力的になったな、と私は感じている。
たとえば騎士のキャラクターが剣を振るうモーション。街人が加勢で戦ってくれるモーション。プレイアブルなキャラクターたちの「攻撃」、決めポーズ。どれも「このキャラクター」だと印象付けるものとなっている。
私が感動したのは「おじぎ」のモーションなのだが、これについて詳しく語り出すとネタバレもいいところになってしまうのでやめておく。とにかく、礼節をわきまえたキャラクターの見せる高貴な振る舞いが非常に精緻でうつくしい。感動した。
終わりに
外枠の良いところを褒めただけになってしまったが、これもまた私の好きな理由にほかならないのでよしとしたい。
本作は「きみだけの物語」を宣伝文句にしているように、物語の演出にとにかく力が入っている。
普段、小説や漫画、アニメに触れている人でも納得のいく話が多いだろう。実は私がゲームから離れた理由が「システムと物語に納得のいくゲームを探せなくなった/見当たらなくなったから」だったので、その意味でオクトパストラベラーには感謝をしている。
私はゲームや小説・漫画・アニメを楽しめなかった時、「私はこの作品の対象者ではなかったのだな」と思うようにしている。だって、どの作品もそれが楽しい・素晴らしいと思って生まれたものだから。
ただただ、私が、それを楽しむ背景や経験がなかったがために楽しめなかった。それだけのことを制作側に押し付けたり、プレイヤー(ないしは読者)に押し付けるのは違うな、と考える一人であるので、今回、オクトパストラベラーに触れることができて、対象者になれたことの喜びを味わうことができて、本当に嬉しかったのだ。
ゲームやその他もろもろの間口が広がったし、オクトパストラベラーは何周しても楽しくて発見があるし、大陸の覇者も世界観に深みを増しつつその時間軸のストーリーをしっかり描いてくれる。
キャラクターに焦点を当て、NPCとの関連を踏まえた「旅(物語)」の楽しみ方は千差万別で、いろんな遊び方がある。
だからこそ、そのうちの一つで、ひとりでもある私が、本作を好きな理由を書き残したいと思ったのも、まあ無理もないだろう。
英語圏のプレイヤーから「日本勢は大陸の覇者で遊べていいな」といわれたことがあるので、いつか全世界で大陸の覇者ができる日が来るといいな、と思いながら、本記事はここまでとする。
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