【海外ニュース】未来産業アライアンス代表に聞くフランスの産業の未来とは①
フランスでは、産業におけるエネルギーとデジタル移行の課題解決を目指す「未来産業アライアンス (AIF) 」という組織がありますが、フランスの産業構造を強化する「フランス 2030 計画」を強化し、コミュニティをさらに構築することという 2 つの優先事項を掲げています。
デジタル産業プラットフォームを介して構造化された未来のソリューションを提供する企業や産業、そして、メーカーがアップスケーリング、エコデザイン、デジタルトランスフォーメーションのプロジェクトを開発するための共同スペースなどを強化しています。AIF事務局長のジャンマリー・ダンジュー氏(Jean-Marie Danjou)が、特にフランスの主要な産業問題と、インダストリー5.0に向けた成長を促進するための新技術の開発について語った記事をご紹介します。
※本記事はこちらの記事の翻訳記事となります。
未来産業同盟 (AIF) が特定した、今日のフランスの産業上の課題は何ですか?
Jean-Marie Danjou 氏: 2020年秋のフランス再始動計画、そして2021年末にスタートした「フランス2030計画」を通じて、フランスでは、環境、産業、社会、経済の社会課題の解決に向けて動き出しています。これらの課題解決に重要になるのが特に、AIFが支援する未来の産業を牽引するソリューションプロバイダー企業となります。
「未来の産業」では、「ハード」のソリューションプロバイダーと「ソフト」のソリューションプロバイダーの連携が必須になります。ソフトウェアのない産業は存在せず、ツールや製品、機械への適用がなければソフトウェアも存在しません。
フランスにも、アジアやドイツに匹敵するぐらい効率的で創造的な企業があり、フランス社会の課題解決やインダストリー 5.0 を通じてヨーロッパが掲げるビジョンへ対応しています。具体的には、まずはわたしたち産業界が主導していくこと、そして、環境上の課題解決を導くため、産業界の脱炭素化を進めることが必要となります。そのため、製造業企業が、優位性や競争力のある技術に精通することが大切になります。
未来の産業に向けた[1]生産設備のバージョンアップには、垂直産業セクターとの新たな協力関係の発展も見据えなければなりません。そのためにわたしたちは、未来の産業のためのソリューション・ハブを形成し、数多くの分野(産業用 5G、コンクリートの脱炭素化、廃棄物分別用の新しいロボット、バッテリーギガファクトリー向けのソリューション、水道網のデジタル化など)での協力体制を促進しています。
近年のフランスの産業の進化についてどのように評価していますか?
Jean-Marie Danjou 氏: 長期にわたる産業空洞化の後、過去 10 年間のうち、特に 2017 年以降は導入された政策は成果を上げています。フランスでは工業用地の数が急増しており、産業への投資も加速しています。このことは直近開催された「Choose France」サミットでも強調され、28件の投資プロジェクト及び総額130億ユーロが発表されました(2018年の発表では、投資案件は11件、投資総額は21億ユーロでした)。
これらのプロジェクトは、電池、モビリティ、農業食品、建設および住宅、さらにはエネルギー(例:フランスにおける SMR(小型モジュール型反応器)の開発)などのさまざまな産業分野に関係しています。当社の未来産業ソリューション部門は、これらの分野に参画し、自動車、原子力、建設などの垂直部門と常に連携をしています。
しかし、競合他社と比較してフランスの生産税は依然として高水準である点、脱炭素化への投資規模など、政府レベルでの取り組みは始まっているものの、未だに製造業が克服すべき多くの課題が残っています。したがって、私たちの業界は、公正な国際競争力を保ちつつ、必要な範囲での支援も必要なのです。よって、未来の産業の主要な技術を今から培うことは、製造業の国際的な優位性をもたらすと考えています。
新型コロナウイルス感染症危機、ウクライナ危機、そして業界における新技術の到来など、どのように今を切り拓いたのでしょうか?
Jean-Marie Danjou 氏: フランスの産業は、デジタル革命とエコロジーの移行によって大きな変革を迎えています。2022 年にフランスで販売されたロボットの数が 2021 年と比較して 15% 以上増加していることが示すように、これらの危機はこの変革を加速させています。
また、この時期は、社会の発展に対する期待と機会に満ちた時期でもあり、電気自動車、デジタル化、脱炭素化、水素、積層造形などの強力なトレンドが加速する未来の産業が台頭しつつあります。そして、多くの分野で新しい産業が生まれ、蒸気が電気によって取って代わったように、30 ~ 40 年後には石油からの脱却により、また新たな産業が生まれていることでしょう。
フランス2030計画(540億ユーロ)の規模からも分かるように、政府は、こうした変化を評価しており、フランスが主導していくために、新たな部門の創設や統合を目指し、私たちも特に国家産業評議会 (CNI) の元、共に推進しています。
メーカーは原材料とエネルギーの価格上昇にどのように適応しているのでしょうか?
Jean-Marie Danjou 氏: エネルギー効率の問題は、企業や政府で大きな課題と認識しています。2023年3月には、我々の「未来の産業ソリューション・プロバイダー」部門は、産業ソリューション・プロバイダーが実践しているベスト・プラクティスや具体的なソリューションに関して、40以上の例をご紹介するため、会員企業向けにコンサルティングを行いました。2つほど例があるのですが、1 つ目は、エネルギー管理の分野で、ある企業が 3 年間で内部エネルギーを 30% 節約し、消費量を 3 GW から 2 GW にする監視システムを導入しました。2 つ目は、デジタルソリューションを使用したインテリジェントな規制プロセスです。システムの単純な監視だけでなく、設置をシュミレーションし、消費量の変化にも対応をしました。私たちは、CNIによる産業の脱炭素化に向けた取り組みの一環として、産業界が提供するこうした脱炭素化ソリューションを推進していくつもりです。
[1] https://www.solutionsindustriedufutur.org
【海外ニュース】未来産業アライアンス代表に聞くフランスの産業の未来とは①
<<Smart Manufacturing Summit by Global Industrie>>
開催期間:2024年3月13日(水)〜15日(金)
開催場所:Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)
主催:GL events Venues
URL:https://sms-gi.com/
出展に関する詳細&ご案内はこちらからご覧ください。