移住支援の方針のたてかた
今日は主に地域ユーザーの方向けの記事です~
移住支援て自治体ごとに様々ですが、それぞれの地域でどこに力をいれるかって、ものすごく難しい判断ですよね…
地域のポテンシャルは何か、移住者が求めているものは何か、そもそもターゲットとなる層はどんな層なのか。
そんな支援の方針の検討方法として、面白いと思った鳥取市の事例をお伝えしてみます~
事例の概要
突然ですが、紹介するのはこちらの論文です
鳥取市の移住相談窓口の記録から、移住検討者がどんなことを相談していたのかを丁寧に読み取り、最終的に移住した/しなかったの結果と照らし合わせて、どの部分の支援をのばすべきか、考えている論文です。区町村単位での分析や家族類型ごとの分析もあるのですが、超ダイジェスト版でお伝えします。
移住しなかった人についてのデータも丁寧に分析している点と、方針を立てるにあたって過去の相談内容を分析している点が特徴的だなと感じました。
鳥取市の概要
さてさて、まずはさくっと今回の一例の前提をお伝えしておきます。
鳥取市
・2004(H16)年の202,115人をピークに減少、2018(H30)年には188,286人
・2018(H30)年の生産年齢人口58.4%(全国平均59.7%)
・2018(H30)年の高齢化率27.2%(全国平均28.1%)
調査対象
・2006(H18)-2017(H29)年に移住相談したのは3,983世帯
・実際に移住したのは1,175世帯(年平均約107世帯)
・十分なデータをとれたのは1,755世帯
移住支援
一定期間田舎暮らしを体験することができる住宅の提供、移住者に向けた補助金の交付、鳥取市定住促進・Uターン相談支援窓口の配置など行っていたそうです。(住もう!は相撲にかかってるらしいです、親近感…)
(ちなみに、鳥取市は『田舎暮らしの本』を発行する株式会社宝島社が出した「2017年版住みたい田舎ベストランキング」で1位を取っている市です。2016年の9位から追い上げたということだったのでこの論文が書かれたころにはすでにかなり手を入れている印象を受けています。)
移住者が相談しがちな12TOPIC
①就職支援 ②住宅相談 ③就農支援 ④奨励金
⑤住宅支援 ⑥空き家情報 ⑦お試し体験住宅 ⑧起業支援
⑨子育て環境 ⑩施設・サービス ⑪避難者支援 ⑫交友関係
移住した/しなかった人が尊重したTOPIC
移住した人の尊重TOPIC BEST3(濃グレー)
①奨励金 ②就職支援 ③住宅相談
移住しなかった人の尊重TOPIC BEST3(薄グレー)
①就職支援 ②就農支援 ③住宅相談
分析結果からたてる方針
①「就職支援」「住宅相談」「就農支援」は、相談内容に頻繁に上がった。→これらの一層の支援が有効、情報提供が必要。
②「医療」「交通」「地域案内」「商店」の情報を求めた世帯は移住しにくい。→これらの情報獲得(回答力向上)が必要。/ 鳥取市においてはこれらが不十分。
③「奨励金」「住宅支援」の情報を求めた世帯は移住しやすい。→移住・就職への補助金や、新築・改築への補助金が移住者獲得に貢献している。
(本文では世帯属性ごとに相談内容の傾向があることや、相談内容の傾向によって、市内で選ぶ地域のかたよりがあることも示されているので気になる方はぜひ!)
感想
検討項目について、移住した人しなかった人であんなに差が生まれたのは驚きでした。そして、①・③の結果は当たり前に見えますが、実際に支援や補助金が認知されているのか、十分な情報が提供できているか、決定要因に響いているのか、といった点を確かめることは大事だなと…
でもたとえば、②では、不十分なことが分かったとして、それを拡充するべきなのか、それを望まなさそうな層をターゲットとすべきなのか…といった、その先の議論は難しい印象を受けます。実際に移住した人がその点をどう考えているのかなどもう少し詳しい分析が必要そう…
なので、過去を振り返ることはもちろんとても大事ですし、本人の言及の通り、その先の追跡調査、満足度調査も大事だなと。
そして住む地域のマッチングに関する知見は、特定のまちだけでなく他の地域にも使えるし、災害/怪我/病気などで不意に生活の場をうつさなくてはいけなくなったときにものすごく尊重されるし、人の暮らしや幸せに直結する意義の深い知見だと思っています。
何にせよ、まずは丁寧に記録を残しておくことの重要性を強く感じました。
地方創生の文脈で統計整理してくれてるRESASをもっと拡大させたりなんかして、全国共通の移住相談データ入れたら分析してくれるソフトとかできたらいいのにな…
余談
論文て堅くて読むの苦手なんですけど、著者から直接話を聞いたり、ちゃんと読んだりすると研究者の熱を感じて楽しいです。SMOUTのコンセプト通り、入口は人なんだなと実感します。
特に防災系や居住者支援系の研究者は本当にかっこよくて、いざというときの幸せのために、ずーっとこんな頑張ってくれてるのか…って感動します。
私も何かしら皆さんのお役に立てるような論文が書きたいです…
宮嶋雛衣
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?