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掌編 | 少年と薔薇
花が咲く
屍から芽吹いた花が
赤く、赤く、咲く
鉄の格子を這う蔦が
伸ばされた腕のよう
荊の褥に眠る君
切り取られた僕の半身
土の下
埋められたカラダ
その肥沃な苗床
蔓は骨の隙間を縫うように
天へと伸び這うのだろうか
そうして僕の指先を
鋭い棘で刺すのだろうか
花が咲く
君の屍から芽吹いた花が
僕を責めるように咲く
埋められたカラダ
せめてそばに、と
言ったわがまま
喪われた君が
まだそこにいるようで
僕は寝台を下りられない
弱りいく足がもういちど
地を踏むことはあるのだろうか
土の下
埋められるカラダ
その肥沃な苗床に
いつか僕もなるのだろうか
赤い、赤い、花
散りゆくままにと思いながら
枕元の水差しを
窓からそっと傾ける
まだ君が
そこにいるようで
僕は寝台を下りられない
2009.06.08 初出
2024.02.22 修正