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世界最古の喫煙具

時を遡ること数百年前、地球上にとある民族がおりました。
彼らは乾燥した大地に住み、大地の恵みから命を頂き、
自らの命を繋ぐ生活をしています。

食べられる植物の採取や狩猟をしているいつもの山で
ある時火事が起こります。

周囲を焼き払う炎と辺りを覆い尽くす煙。
巻きあがる煙は呼吸を奪い、熱と炎は全てを焼き尽くします。

山火事とはいつも恐ろしいものでしたが、
その時の火事は少し違いました。
辺りになぜか良い香りの煙が漂っています。
芳ばしく、甘く、うっとりするような。
恐ろしいはずなのに逃げたくない、
足を止められるのはこの不思議な香りのせいなのか。

そんな不思議な山火事は彼らの中で話題になります。
あれは一体なんだったんだろう。
なんの香りだったんだろう。

あの香りに取り憑かれてしまった若者が研究を始めます。
と言っても山火事を見に行くだけ、
火事の収まった山へ入って燃え残った木々や植物、
生物達の匂いを嗅ぎ回るんです。

周囲にあきれられ、馬鹿にされる事もあったでしょう。
山火事の度に彼はどこへでも向かいます。
そして数年の月日が流れ、彼の研究の成果が出る時が来ました。

とうとう見つけ出しました。

それはある植物の葉でした。
そうです。
現在のたばこの葉のご先祖です。

その葉が枯れて地に落ち、山火事の炎に巻かれると
あの芳ばしく甘い香りを放つのです。

彼はすぐさま自分の部族の長に伝えます。
この葉です、この枯葉を燃やすとあの香りがするんです。

部族の長は言います、
この煙だ、この葉に間違いない。
これは神が我々に与えてくれた恵みである、
神に祈り、感謝をささげる時にこの葉を焚こう。

その後このたばこの葉をお祭りや大事な儀式の時に燃やして
辺りを煙で充満させます。
だからたばこの葉をすごく大事に育てるようになります。
神への捧げものですから。

かくしてお祭りの時にこの煙が充満するようになると、
今までと少し変わった雰囲気が出来上がります。
熱狂的ではあるが狂った雰囲気は無い、
さりとて静かなわけでは無く祭りの雰囲気は厳かになる。
いわゆるメリハリができます。
今も昔もお祭りの時に大騒ぎして人様に迷惑をかけてしまう
者もあったでしょう、そういう者が少ないのです。
ある時、いつも大騒ぎするお祭りの好きな若者がこう言います。

この煙に巻かれているとなんかぽわっとする。
ドキドキするんじゃなくてすーっと気持ちが鎮まる感じがする。
頭の上から糸でなにかに吊られてる感じ。

これを聞いていた部族の長は思いつきます。

もしかしたらこの煙、普段から焚いてたら
争いごとが減るかもしれない。
確かにわしも最近イライラしなくなっているようだ。

そして、たばこの葉を見つけた若者にこう伝えます。
この煙をいつでもうちの部族の皆が
浴びたり匂いを嗅いだりできるようにならんものか。
できるか?

若者は答えます。
はい、できます。

彼は伊達に山火事の検証をしていたわけではありません。
煙がいつまでも燻っている所、なんでここだけ煙がきれいに立つのか
を見ていました。
そして、窪みの上にある葉や木は燻らずきれいに
灰になるまで燃えることを知っていました。
あとは簡単です。
集落の片隅の地面に手で小さな穴を掘り、
その穴の上にたばこを載せて火を着ける。
これが現在の喫煙具、パイプに近い構造となり、
煙だけを自在に効率よく取り出す事ができるようになります。

地球を道具とする、
世界最古の喫煙具の誕生です。

その後、たばこの葉をうまく燃やし、
集落にはいつでも甘く芳ばしい香りが漂い、
人々の争いごとも少なくなり、
たばこの葉という大地の恵みのおかげで生活が豊かになった事を
感謝しつつ部族は日々を過ごすようになりました。

という妄想。









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