よもぎ餅
小さい頃、祖父母と、毎日山にのぼっていた。朝は、山の上で、皆ラジオ体操をしたり、輪投げをする。ラジオ体操が行われていた小さな広場の奥には、たくさんヨモギが生えていた。ときおり、祖母と一緒につんでかえった。私は、山から家に帰ると自分の部屋でいつも昼寝をしていた。ふと、起きると下の階から良い匂いがする。甘くない匂い。眠たい目をこすりながら降りると、祖母の背中が見える。換気扇がまわっていて、湯気が吸い込まれていく。一番ちかい椅子にすわって、ぷかぷかうかぶよもぎ餅ができるのをみる。よもぎ餅ができると祖母は、それを氷水にうつす。少しだけ表面が冷たくなったよもぎ餅の上に、あまじょっぱいきなこをかける。口に入れると、たまにきなこのなかに紛れ込んでいる砂糖の塊を噛んでしまい、ぞくっとするような甘さが脳みそにながれこんできたりする。ヨモギはいまどこにはえているんだろうなぁ。