癌と闘った母との約束
「そのジュエリーに、物語が隠れている」をコンセプトにジュエリーサロンを運営している&meeKアンドミークです。小さなサロンですが、いらっしゃるお客様は、頑張っている女性が多く、”こっそりのお話”をしてくださいます。その内容の濃い事濃い事。胸打つ話が多いです。
私だけが感動してはもったいないと思い、許可を頂いたお話だけ、こちらでシェアさせて頂いております。
T様から吉報と悲報を、お電話にて同時に頂きました。
悲報は「母が亡くなりました。」吉報は「教員採用試験に合格しました」でした。
T様は臨時教員として大学卒業後から、公立学校に勤め始めました。非常勤講師ではなく、臨時教員は正規職員の仕事量と変わりありません。よって、担任を持つことも、部活動の顧問を担当することもあります。そうすると、並行して採用試験の勉強をすることは、臨時教員にとって、かなり難しくなります。中でも最も残業時間が長いのは、男女ともに30歳以下の教職員ですから、その忙しさに慣れてしまい、改めて、教員採用試験にチャレンジしようとは奮い立てずに、現状維持を続けていらっしゃいました。
しかし、遡る事5年前、最愛のお母様の癌が発見され失意の底にいたT様。ステージも高かった事から、未来に希望が持てなくなっていました。
しかし、病床でお母様が
「もう一度、教員採用試験にチャレンジして欲しい」
とおっしゃったそうです。
担任を持ち、部活顧問に励み、残業、お母様の介護…妹さんと手に手を取り合い毎日をこなしたそうです。
一度は不合格を、もらったものの、「諦めない」気持ちを確かに、一年後にもう一度挑戦。
一次試験をクリアして、二次試験日前日にお母様がお亡くなりになられたそうです。最終試験日は葬儀の日。最愛のお母様の納棺に立ち会えないかも…それでも
「母は悲しみに負けないで、試験に行ってと言ったと思う。だから、辛かったけど行ったの」
面接の順番も早く、葬儀場の駐車場も1台分だけ空いていた、幸運が重なって通夜も葬儀もしっかり出席できて終えることができたとの事でした。
降っていた雨がいつの間にか止んでいた事が、お母様の苦しみからの旅立ちの様な気がして、とても印象的だったとのことでした。
お母様との約束、正規教員になること。
そして、見事に合格を勝ち得たのでした。
今年の春から正規教員として教団に立つT様。
先日お会いした時
「やっている事は、今までとあまり変わりないの、だけど、責任とか気持ちとかがやっぱり違うよね」
と今まで以上にしっかりした眼差しが印象的でした。
お母様だからこそ分かる
「この子にはこの道が合っている、だから、最大の応援をする」
そういう愛が、T様の決意と努力で実を結んだのだと思います。
姿が見えなくても、大きな羽のようにT様を包んでいらっしゃるお母様の姿を感じられた、こころ温まるT様の新しいスタートのお話しでした。