ゆにばーすさんにコントを書いた話
ある日、ゆにばーす川瀬名人からこのようなLINEが届いた。
怖すぎる。なにが怖いって、僕と川瀬名人はLINEを交換したことがないのだ。誰かから僕の連絡先を聞き、その一発目がこの黒幕感たっぷりの「やあ!」。間違いなくこれからなにかしらに巻き込まれるのは確実である。
恐る恐る返信をすると、どうやら今度ゆにばーすさんが人に書いてもらったコントをたくさん披露するライブがあるらしく、それのオファーだった。『命を賭けたデスゲーム』くらいのことは覚悟していたのでとても安堵した。こんな光栄なことはないのでもちろん快諾させていただいた。
まずは情報収集だと思い、片っ端からゆにばーすさんのことを調べまくった結果
『ゆにばーすのトップオタ』みたいな閲覧履歴になった。このおかげでなんとなくネタの方向性も決まり、そのまま書き上げることができた。出来上がった台本を川瀬名人に送ると
ありがたいことに『複数の草』を生やしてくれた。
そして本番当日、リハーサルで初めてふたりがこのネタを演じる姿を見せていただいたのだが、あんな多忙なスケジュールの中セリフも入れてくれて感動した。あえて苦言を呈すなら『川瀬名人の演技力が想定より少し下回っている』ということくらいだ。リハーサル終わりで「ここはこんな風な演技で」とレクチャーさせていただいたのだが、今思い返してみると僕も演技力のなさには定評があるので『最弱の演技指導』を行ってしまった。
あっという間に開演時間を迎え、モニターの前でゆにばーすさんの勇姿を固唾を飲んで見守った。普段味わわないタイプの緊張に押しつぶされそうになりながらも、無事お客さんも川瀬名人同様に草を生やしてくれたのでホッとした。
もうどこでもやることもないだろうし、せっかくなのでその時の台本をそのまま載せようと思う。文字だけじゃ完全には伝わらないかもしれないけど、皆さんの『脳内ゆにばーす』に演じてもらってほしい。
コント『最悪の出会い』
明転
川瀬(男子高校生。学ラン)、焦りながら下手飛び出し
川「(時計見ながら)あかん!このままやと学校遅刻や!急がな!」
はら(女子高生。セーラー服)、焦りながら上手飛び出し
は「学校初日に寝坊するなんて!わたしのバカ!走らなきゃ!」
川瀬とはら、走りだす。舞台中央あたりでお互いの存在に気付く
川は「わーーーー!!!!!」
川瀬とはら、ぶつかって倒れる。
川「(倒れたまま)いててて…どこ見て走ってんねんこのバカ女!!」
はら、無言で立ち上がり倒れている川瀬に唾を吐く
は「かーーーぺっ!!!」
川「うわっ!!汚っ!!」
は「悪いけどわたし急いでるの。あんたにかまってるヒマないわ」
はら、川瀬を踏みながら走って下手ハケ
川「痛ぁぁ!!!」
暗転。
(暗転中、川瀬の声によるナレーション)「最悪の出会いやった。ぶつかってきた挙げ句唾を吐かれ、俺のことを踏みながら去っていった。もう二度と会いたくない。あんなやつ、最悪や!!」
ナレ中に下手寄りに学習机とイスを板付き。ナレ終わり明転
設定:教室。川瀬、イスに座っている。
川「(正面向いて)おいちょっと聞いてくれや。おれ今朝、女に踏まれてん。あ、違う違う、そういうプレイ的なことじゃなくて。え?かわいくなんかないわ!そうやなぁ…浅野忠信みたいな女やったな。ん?CHARAじゃなくて。浅野忠信みたいな女!CHARAは、浅野忠信の女だった人!あー、見れば一発で共感してくれるはずやねんけどなー!!」
はら、教室に入ってくる
は「ガラガラガラ。転校生のはらです!」
川「あいつやー!!!!!!」
はら、無言で川瀬に近付く
川「(正面向いて)おい、見ろ!!あいつや!!言った通りやろ!?ん?」
川瀬、はらの方を見る。はら、川瀬をビンタする。川瀬、イスから崩れ落ちる。
川「な、なにすんねん!!!」
はら、川瀬の髪をつかみながら
は「これからよろしくなぁ!!ハーッハッハッハ!!ハーッハッハッハ!!!」
はらの笑い声とともに徐々暗転。小道具ハケ。2人ハケ。
(川瀬ナレ)「激ヤバ女や!とんでもない激ヤバ女や!なんやねんあのラスボスみたいな笑い方!なるべくあいつとは距離を置こう。あんなやつ、最悪や!!」
川瀬、上手飛び出し
川「ただいまー。はーめちゃくちゃ疲れた。今日は早めに寝よう」
はら、下手飛び出し
は「よう」
川「うわぁぁぁぁぁぁ!!!な、なんでおまえがおんねん!!!どうやって入ってきたんや!!!」
は「ピッキング」
川「ピッキング!!??」
暗転
(川瀬ナレ)「ただの不法侵入やないかい。あんなやつ、最悪や!!」
SE終わりで明転。はら、後ろむきで板付き。川瀬、はらに向かい合う形で正面向き板付き
川「広瀬さん聞いてくれよ。はらのやつが俺んちに不法侵入しててん。だからそろそろ法的処置を考えてるんやけど…」
はら、メイク落としの袋を取り出す
川「ん?なんやそれ。メイク落とし??どうしたの広瀬さん??」
はら、メイク落としで顔を拭いていく
川「え…広瀬さん??」
は「よう」
川「うわぁぁぁぁぁぁ!!!はらやぁぁぁぁぁ!!!!」
はら、振り返り、ニヤりと笑う
暗転。ふたりハケ。
(川瀬ナレ)「あいつなんであんなメイクうまいねん。ちょっとした詐欺やであんなもん。暴力に不法侵入に詐欺…あんなやつ、最悪や!!」
明転。はら、上手飛び出し
は「あー漏れる漏れる!!」
はら、上手寄りに後ろ向きでうんこ座りする。
川瀬、下手飛び出し。
川「(下手に向かって)おーい!!いくらなんでも遠くに投げすぎやぞー!ったく…えーっと、ボールボール…」
川瀬とはら、目が合う。
は「キャーーーーー!!!!」
川「わーーーーーー!!!!」
川「こ、公園で野糞してるー!!!!!!いやずっと最悪や!!!!なんやこれ!!!出会った頃の最悪をずっとキープし続けとる!!!」
は「はぁ??」
川「いや、こういうのって基本的に出会いだけ最悪やねん!!そこから仲良くなったりするもんやねん!!おまえの存在は俺にとってストレスでしかないねん!!おまえはな、俺にとって最悪の存在や!!!」
は「…ごめん」
暗転。はら、ハケる
明転。川瀬板付き
川「(正面向き)え?今日はらおらんの?休み?よっしゃー!!!!最高や!!!!これでようやく平穏な学園生活が送れるでー!!!」
川瀬、スキップしながら上手ハケ
暗転。3秒後明転
川瀬、上手飛び出し
川「ただいまー。おい!!はらー!!どうせまたピッキングしてうちにおるんやろ!?なに学校休んでんねん!!おい!!はら!!はら!!…なんや、おらんのか」
暗転。3秒後明転
川「(正面に向かって)え?今日も来てへんの!?えぇ!?入院!?そ、そうなんや…じゃあしばらく学校けぇへんのか。(下を向きながら)最悪や…最悪なあいつがいないことが、こんなに最悪やなんて…」
暗転。3秒後明転
川瀬。体育座りして小石を川に投げたりしている
しばらくしてはら、上手飛び出し
は「よう」
川「(急いで立ち上がり、はらの元へ駆け寄る)はら!?おい、おまえ大丈夫なんか!?入院してるって…!!」
は「うん。盲腸の手術受けたんだ」
川「え、盲腸??(吹き出す)プッ…ハッハッハッハ!!!さすがのはらも、盲腸には敵わないんやな!!ハッハッハッハ!!!」
は「なんだってー!!!!!」
川「やば!!!」
川瀬、走って下手ハケ
は「待てー!!!!」
はら、追いかけて下手ハケ
(川瀬ナレ)「僕はこの時、初めて知ったんだ」
川瀬、走りながら下手飛び出し。センターで止まり、正面に向かって
川「最悪って、最高や」
暗転
願わくば、これを読んだみなさまが
はらを抱えて笑ってくれてますように。
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