ガンになった28歳の冬の話⑮

前回のあらすじ

手術から早2日が経ち、個人的には一山越えたなあと思っていた矢先、「熱が下がらないので、念の為隔離します」と言われてしまったかしたに。隣のベッドのおばちゃんが「あの子コロナなの?」と言ってた。不安にさせてごめんなさい、コロナじゃないです。

ということで、入院してから4日目の朝、コロナ感染の疑いで個室に移動することになった。
「ベッドごと移動するので、荷物全部ベッドに乗せてくださいね」と言われたのでベッドを山盛りにして座って待ってたら、「柏谷さんは自分で歩いて下さい」と言われてちょっと恥ずかしかった。自分も一緒に運んでくれるものかと思ってたよう。

感染予防で家族も面会は禁止、病室から出ることも禁止、ポータブルのトイレが病室に持ち込まれた。本当なら今日から院内を自由に動いて体を慣れさせていく術後計画で、欲を言えば院内のコンビニでアイスとか買っちゃおうかな〜と考えていたので非常に残念だった。まるで予定外の1日。唯一、予定通りだったのは首のドレーンが外れて、体に付いているものが全てクリアになったこと。首のドレーンを抜く時は痛みも何も無く「トゥルン」って感じだった。体の内部って、意外と何も感じられないのかもしれないなあ、そりゃガンも育つわ、と思った。

↑綺麗に縫ってくれてるので傷口もほとんど目立たない。すごい!

ドレーンがなくなったことで寝返りが打ちやすくなって、その日は入院後1番よく眠れたかもしれない。眠るって大事だ。

そうして迎えた入院5日目の朝。相変わらず発熱が続くけれどこの病院ではコロナを診断することができないらしく、疑いは疑いのまま個室に隔離されているのだった。
でも、少しずつ暇を潰す余裕が出てきて、この日は本を読めるようになった。娯楽は人を助けてくれる。ご飯を食べるにもまだ痛みがあるので、1時間くらい時間をかけて食べる貴族のようなスタイルで、トイレも相変わずポータブルだけど、本を読めるようになったことで心が丈夫になった。ちなみに入院生活、どうぶつの森ゴリゴリに進めるぞーって思ってたけど、ゲームは意外と体力を使うことに気づいたのでほぼ遊べなかった。

この日、主治医のS先生が様子を見に来てくれたんだけど、その時に「傷口もきちんと閉じてるし、明日退院できますよ」と言われた。いいの?!と驚いたけど、病院に居なきゃいけない理由はもうないらしい。そうか、もう元通りなんだ。と、えも言われぬ感情が生まれた。この時は日常生活に戻ることがまだ少し怖かったかもしれない。

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