ガンになった28歳の冬の話⑬
前回のあらすじ
色んな人から聞いていたし、自分でもいろいろ調べていた初めての全身麻酔。どんな感じなんだろう、と少しワクワクしてた。それはあまりにもあっという間で、例えるならそう、ポケモンハートゴールド/ソウルシルバーのレックウザ戦。
「柏谷さん、終わりましたよ!」と肩を叩かれて目が覚めた。手術時間は予定より30分早い2時間30分。わたしの人生においてここまで存在を信じられない2時間30分があっただろうか。ついさっきぼんやり照明を眺めてたのに、この一瞬で首切って癌取ってまた縫い合わせたとか全く信じられない。
肩ポンされてからすぐに意識がはっきりしだした。麻酔医の先生の腕がめちゃくちゃいいんだろうなと感じた。河岸のマグロみたいに「よいしょー」っと手術台からベッドに移動させられて手術室を出ると、両親と妹が待っていた。ピースサインをすると3人とも笑ってたように思う。
↑妹が最新のiPhoneで撮ってくれたので無駄に画質がいい。目は閉じてるけどしっかり起きてる。
頭はハッキリしてるけど体はあんまり動かせない。足先とかはパタパタできるけど、左手の甲は点滴が付いてるし、尿道にはカテーテルが入ってる、首には排血用のドレーン(管)、胸には心電図、右手に酸素モニター、顔面は酸素マスクとなかなかのフル装備だった。今思えばこの時はまだ麻酔が残っていたのか、それとも痛み止めが効いていたのか、「痛い」よりは「重い」という印象が強かった。
病室に戻ってからも父母妹が付き添ってくれてたけど、気を使いたくなくて早めに帰ってもらった。1人になって体感的には30分くらいだったかな、急に不安になって涙が出てきた。そんな時、主治医のS先生が様子を見に来てくれて、何もしていないのは心許ないだろうから、と携帯を手元に置いてくれた。だけど正直、携帯を持つ力もなく、首を動かすこともできず、ただ携帯に手を添えてシクシクしてた。
段々と麻酔が消えてきたのか「痛み」が顕著になってきた。と言っても、傷口がピンポイントで痛むと言うよりは全体的な鈍痛。首筋や、傷口、背中が何かに圧迫されてるようで呼吸もしづらいし、頭も重くて痛い。そして、何より嫌だったのが尿道カテーテルの違和感だった。形容するとすれば、3歳の時、鼻にBB弾を詰めて出てこなくなってパニックになった時を思い出す「あってはいけないものがあってはいけないところにある」感。
正直、傷口のそのものの痛みは大したことなかった。風邪をひいて扁桃腺がめちゃめちゃ腫れて痛かった時の痛みをMAX10だとすれば7か8レベル。ただ、尿道カテーテルは二度と入れたくない。
おかげでこの日はまじで10分以上寝た記憶がないし、何度も携帯を見て時間を確認しては絶望する流れを繰り返した。夜中にナースコールして看護師さんに不快感を訴えるも「こればっかりは我慢してもらうしかないんです…」と言わせて困らせてしまった。「明日になればカテーテルは抜きますからね」という言葉を信じて、唯一少しだけ動かせる右手で布団を握りしめて、まじで泣きながら一夜を明かした。尿道カテーテルは二度と入れたくない。(大事なことなので2回言いました)
つづく!
全然関係のないどうぶつの森の話
アンチョビがまたやってくれました。
前のと色違いでした。
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