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【後編】フォロワーの #2024年自選十句をつぶやく から一人一句。【約百人百句】

前編の続きです。

ハッシュタグの無い方・違う方・「下半期十句」だけの方・リンクの貼れない鍵アカウントの方などは入ってません!

また、選んでいて特に好きだと感じた句には★をつけています。
なんとなく。



公式を噛むアスパラガスが嫌い もりさわ

テスト前の昼休憩だろうか。
公式を確認しながら嫌いなアスパラガスを噛む。公式も噛む。

おじさんに名前あるんだアロハシャツ 斎藤よひら

当たり前ではあるけど忘れがち。
おじさんはいつまでもおじさんでいてね。

堕天して真つ赤なジャムを売る寒夜 沖原イヲ

このジャムは何味なのだろう。きっと驚くほど甘いのだと思う。
罪深い寒夜。堕天ってどんな気持ちなんだろう。

テーブルに逆さまの椅子花の朝 山城道霞

お掃除が終わったあとだろうか。逆さまの椅子をひとつづつ戻していく。
気持ちの良い花の朝。家事を片付けて午後は散歩でもしようか。

桜蕊降るわたくしに誤差いくつ コンフィ

(縦書きで読みたかったよ…!)
桜蕊を見てそう思うという事は、桜蕊にも誤差があると感じているのだろうか。
むしろ誤差の無い存在とはこの世にあるのだろうか。考えさせられる一句。

愛されたいだから心に蜂を飼う 柊琴乃

なぜ蜂だったのだろう。蝶では甘すぎるし蟻では小さすぎる。
では、蜂は愛されているのだろうか。愛されるとは何なのだろうか。

犬褒めて笑み返さるる寒さかな 西村棗

褒めているのは犬なのに、飼い主が自慢げになるのは何故だろう。
褒めているのは犬の事なのに。寒さが響く。

占いを信じすぎる子さくらんぼ 蒼空蒼子

「信じすぎる」と言うのだから、本当に信じすぎているのだと思う。
「さくらんぼ」なのでまだ引き返せそうな気がする。気を付けて。

蚊を打つて手相の左右非対称 北欧小町

パン、と蚊を打った後で気付く手相の非対称。
学生の頃本当に非対称な友人がいて驚いた。ぐちゃぐちゃだった。

神々に性あるふしぎ初山河 碧西里

神様に性別がある事も不思議だけど(例外もいつつ基本的には)
人間と同様二種類なのも不思議だ。百種類あっても良いのでは。

夏の蝶一羽はぐれる玄きゆゑ 沼野大統領

「玄きゆゑ」が良い。夏の蝶は影になってしまったのだろうか。
これは「夏の蝶」でないといけない。

雀蛤となる地の足裏が痒い けーい◯

もしかしたら足裏が痒いのは何かに変化する途中なのかもしれない。
足裏から地へ根が伸び、大きな木になるのかも。

そのほかの中の一人を踊りをり かむろ坂喜奈子

主役がいれば脇役がいて、実際は脇役の方が数が多い。
私も地球の「そのほかの中の一人」だ。踊ろう。

就職をしなさい網戸閉めなさい たーとるQ

作中主体は良い歳のニートだと思う。
就職して欲しいけどその前に最低限網戸くらいは閉めなさい。
網戸を閉められないニートがはたして職に就けるか否か。

矢印のかたちに鳩の飛ぶ寒さ さるぼぼ17

確かに矢印のかたちだなと言われて思う。
素直によく観察した秀句だと感じた。

陰口を明るく語る石榴の実 西田月旦

悲しいけれど共感。特に女性に多いと思う。
陰口がコミュニケーションになってしまっている。
良くも悪くも本人たちに悪意などとうに無いのだと思う。

山笑ふ母の記憶の吾は金魚 じゃすみん

一読して、思わず声が出た。すごい句。
母は永遠を金魚と共に泳ぐのか。山笑ふが少し淋しい。

剥がれたる星を拾ひぬ聖夜劇 ギル

聖夜劇は良い句が多いので好きな季語のひとつ。この句も素敵。
ファンタジーと現実の合間を行き来する感覚。まさに聖夜劇。

草笛を吹けよ背筋が伸びるまで 猪倉さえこ

背筋が伸びたら前を見て歩こう。
草笛はどこまでも明るい音を奏でる。

春光をラクダ辞令は突然に あみま

ラクダからの辞令。本当に突然すぎる。
リアルの光景では無いと思うがリアリティ溢れる一句。

夏深し手動のドアの街中華 有野安津

きっとこのドアはどっしりと重い。それを開けば
キンキンの冷房と中華の匂いが全力で出迎えてくる。
初めての店なのに懐かしさを感じる。

はめ直すマネキンの腕冬近し 電柱

十句の中にぬいぐるみや人形の句もあるが、
それらと並べられるとマネキンとは一体なんだろうという気持ちになる。
人形なのか、人形ではない別物なのか。では何なのか。
わからないけれどマネキンの腕は抜かれ、はめられる。

初がつを男ばかりの恋話 安藤文

私は女なので「男ばかりの恋話」がどんな様子なのか想像が出来ない。
しかし「初がつお」とあるので、きっと威勢の良い気持ちいいものに違いないと思う。

秋風をぐるんとまいてさかあがり 星空ぼたん

初めて出来たさかあがりだろうと読んだ。
ちょうどタイミングよく秋風が来て、一緒にまわれたのだろう。

袋ごと渡され金魚の置きどころ 小野更紗

命とは何だろうと思う。
金魚釣りとは思えば思うほど残酷な遊びだ。
しかし惹かれてしまうのはどうしてだろう。私も残酷の一人か。

馬の尾のはらと白露の風を斬る 池之端モルト

馬の尾が気持ちいい。
「切る」ではなく「斬る」なのも思い切りが良くスッキリとする。

父の胃にまた影滲む星月夜 生田久孫子

「また」という事は再発だと思う。
また闘病が始まるのかという思い。月の無い夜がさみしい。

みんな何かに負けているビアガーデン 近藤幽慶

だから酒を飲むのか。
明るいビアガーデンに対して新鮮な切り口に惹かれる。

先生の語る先生鰯雲 岸来夢

先生が先生を語る。私もまた先生を語る。
そうして教えというものは続いていくのだと思う。
鰯雲のように。

湯豆腐やテレビは大雪の渋谷 藤雪陽

ちょっとの大雪で渋谷は大変そうね、なんて言いながら雪国で食べる湯豆腐。
私は渋谷寄りなので大雪になったら湯豆腐を思い出してしまうだろう。

エイプリールフールの電車空くらい飛べ 夏風かをる

それくらいやったって良い。エイプリールフールだもの。
嘘じゃなくて本当に飛んだって構わない。

さじ入れてゼリーに清き断面図 香田ちり

「清き断面図」が爽やかで素敵。
さじの入れ方によって断面も変化し、反射光も変化していく楽しさ。

帰路のバスきみは窓側春いまだ 西瓜頭

「きみは窓側」という事は、作中主体ときみは少し離れた距離にいるのだろうか。
きみは窓に夢中で作中主体に気付かない。春いまだ。

夕浜や黒い水着が死んでいる 中岡秀次

夕浜に落ちている黒い水着を「死んでいる」と表現したのだろう。
人間がいないと水着は生きられないのか。
というか、何故そこに死んでいたのか。

三月の海呼び捨てにしてほしい 青井舞

学生の恋の句だろうか。
三月、学年が上がる直前に進展があったのか。妄想が膨らむ。

壇上で皆を栗飯だと思う 山岸八馬星

季感はさておき楽しい句だと思う。
よく芋畑と思えとは言うけれど、栗飯とは新しい。
確かにその方が楽しいし緊張しないかも。

しない結婚したい結婚桜餅 小川さゆみ

一人の人間がしない・したいで悩んでいると読んだ。
私はしたくないと思うがしたい瞬間もある。
桜餅くらいの薄さであり厚さであると思う。

宮参りふくら雀のすずなりに 高橋笑子

声に出すと楽しい気持ちになる中七下五。
ふくら雀たちも宮参りを祝福しているのかも。

涅槃西風まぶた拭えば眼の硬さ ぐ

措辞も格好良いし取り合わせも格好良いし、
格好良いだけでなくしっかりとした実感が土台にある。
「涅槃西風」はこう使うのか…と勉強になりました。さすがや。

東進が見えて祭の端だつた さとけん

いきなり現実的な「東進」!と思えば、そこは祭の端だった。
祭は祭、現実は現実。境界線が厳しい。

流行風邪畳の縁をジャズ一団 石上あまね

流行風邪を貰い、横になって休んでいるのだろうか。
畳の縁を行くジャズ一団はいま聴いている音楽か、
それとも流行風邪が見せる幻覚か…。

瀬戸内の島なみめぐる花追風 クリスマスローズ

花追風の把握が美しく「瀬戸内」という地名の選択も効果的。
風と共に桜が咲いていくような心地がした。

白シャツは国家機密の恋の色 ぱんだ社長

「国家機密の恋」とは何だろう。
絶対に明かしてはならない禁断の恋とかだろうか。
黒でも赤でもなく白なのが、尊い。

熱帯魚さよなら転校さよなら 坂本梨帆

熱帯魚のいる学校だったのだろうか。
転校はさみしい。学校はいつも「さよなら」で終わる。

残業をばっくれ流星の海へ 千代之人

「流星の海」が素敵。たぶん流星群の事だと思うが
言い換えるだけで日常の風景も特別なものに見えてくるのだから不思議だ。

龍の亡き白露の空の透きとほる 広瀬康

大昔、龍はいたと思う。いまはもう絶滅してしまったけど。
龍の亡き後も空は綺麗だと思う白露。

いいねだけほしい星月夜のきりん 島田雪灯

インスタ映え・SNS映えだろうかと読んだ。
きりんがそれを望むのは不思議な事だが、もしかしたらそうなのかもしれない。

毒親はどこかで元気葛の花 にこ

作中主体は毒親から離れた子だと読んだ。
本当に毒親は元気か、作中主体がそう思いたいから思っているのか。読みが広がる。

人生はロマン扇風機は送風 里山子

最近の夏は扇風機では凌げないと思うが、作中主体は送風で楽しんでいる。
この状況を「人生はロマン」と言い切り楽しめる明るさ。
それこそがロマンであり、私に足りないものだと思う。

声のする次の暗がり美術展 古田秀

美術展のエリア移動を「声のする次の暗がり」と表現するのが妙。
客観的な写生の中にしっかりと詩が生まれているのは、さすが。

名月の錦糸もて縫うトウシューズ 和泉あやめ

トウシューズ職人の句と読んでも、トウシューズの調整をするダンサーの句と読んでも素敵な句。
名月を愛でつつトウシューズも愛でる、良句。

皿洗ふ皿洗ふ皿洗ふ猿 いかちゃん

皿洗いのバイトかと思い読み進めると「猿」と分かる。
働くとは何だろうかという気持ちになった。
また声に出した時の着地も気持ちよく楽しい。良い無季句。

猫の背に砂のかおりや星月夜 桃園ユキチ

猫の匂いといえばお日様のかおりというイメージがあるので「砂」の意外性に驚く。
「星月夜」と「砂」の響き合いも素敵。

秋の夜のガトーショコラを切る重さ 幸の実

確かに、ガトーショコラは切る時少し重たい。
秋の夜との取り合わせがしっとりと響いてくる。

けんかしてつばき置きわすれてしまふ 古瀬まさあき

作中主体は子どもだと思う。
親か友達か、椿を渡そうとしたのに忘れてしまった。
謝って渡そうかどうしようか、椿が重たい。

芋煮会母がアムラーだった理由 丁鼻トゥエルブ

芋煮会で理由を知るのだろう。どんな理由だったのか。
そしてそれを聞く子の前で母はどんな顔をしているのだろうか。
楽しい芋煮会。

心てふ漢字パラパラ桜蕊降る 叶安

心という漢字を何度も書いていると、分離してしまいそうになる。
桜蕊との取り合わせが美しい。
パラパラは心のことでもあり桜蕊のことでもあり。

鍋底の焦げ刮ぎ取る秋夜かな 白猫のあくび

鍋底の焦げってだいぶしぶとい。たっぷり作って食べた後の洗い物だろう。
時間ならたっぷりある。秋の夜だもの。


2025年もよろしくお願いします!



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