サマソニ出演!ファッションシーンをも虜にするイタリア・ローマ発の最重要バンド マネスキンを知ろう!
昨年ヨーロッパ最大の音楽コンテスト“ユーロビジョン・ソング・コンテスト2021”での優勝をきっかけに瞬く間にイタリアから世界に飛び出した今最も注目を集めるイタリア出身のZ世代バンド=《Måneskin|マネスキン》、皆さんもうご存じでしょうか?
今年3年ぶりの開催となる音楽フェスSUMMER SONIC2022への出演も発表となり、いよいよここ日本にも初上陸!ライヴパフォーマンスはもちろんですが、メンバーも“日本が大好き”と公言しているだけに、どんな旋風を巻き起こしてくれるのか、今から楽しみしかありません。
今回のnoteでは【Z世代のマネスキンならではの雑多な音楽性とその理由】【切り離すことができないファッションの魅力と考え方】について、 WWDやHYPEBEASTを経て現在はフリーランスのライターとして活躍される小川陸さんに解説いただきました!写真たっぷりの記事となっていますので、ぜひお楽しみください!(記事の最後にある“いいね”もお願いします♡)
ここ十数年のアメリカのヒットチャートを振り返ると、EDMなどのダンスミュージック、ヒップホップやR&Bといったブラック・ミュージックが席巻し、昨年にはロックバンドとして高名なマルーン5でフロントマンを務めるアダム・レヴィーン自らが「もうバンドなんてどこにもいない。今や絶滅種だ」と公言してしまうほど、バンドサウンドは見る影もなくなってしまっていたように思われる。
だが、大西洋を渡りイングランドに目を向けると、2020年頃からバンドサウンドが復権の兆しを見せ、2021年には年間を通してロックバンドの作品が週間アルバムチャートで上位を賑わすことが目立っていた。この“バンドサウンドの夜明け”は諸国で確認されつつあり、そのうちの一国としてイタリアの空も白み始めているのだが、これを牽引するバンドこそが本稿で紹介するマネスキンだ。後述する権威ある音楽の祭典での優勝などから早耳の音楽ファンの間では既に知られた存在だが、まだまだ存じ上げない方も多いはずなので、現在に至るまでの軌跡をキャリアと共に振り返り、さらに彼らのアイデンティティであるファッションの側面からも掘っていきたい。
平均年齢は約22歳で、全員がローマ出身
マネスキンは、ボーカルのダミアーノ・ディヴィッド、ギターのトーマス・ラッジ、ドラムのイーサン・トルキオ、紅一点でベースのヴィクトリア・デ・アンジェリスから成るベーシックな4人編成のバンドだ。
平均年齢が約22歳の彼らは、ダミアーノ以外の3人が小学校からの知り合いで、高校生だった2015年にバンドを結成。その後、初代ボーカルと入れ替わる形でダミアーノが加入し現在の形に。全員がローマ出身だが、バンド名はデンマーク語で“月光”を意味しており、これはデンマーク人とのミックスであるヴィクトリアの提案によるもの。そして、結成当初はコルソ通りをはじめとするローマ市内でストリートライブを行うことで、来たるデビューに向けパフォーマンスの腕を磨いていたという。
ロックを下地に多ジャンルのエッセンスを広く感じることができる音楽性
肝心の音楽性についてを書く前に、彼らが影響を受けたアーティストの一例を挙げたいと思う。レッド・ツェッペリンやブラック・サバスから、フリートウッド・マック、デヴィッド・ボウイ、ニルヴァーナ、レディオヘッド、フランツ・フェルディナンド、アークティック・モンキーズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、ブルーノ・マーズ、ハリー・スタイルズまで、挙げ出したらキリがないほど。これはストリーミングサービス時代ど真ん中に生きるZ世代ならではの事象であり、彼らの奏でる音楽を一度聴けば、ロックを下地にファンクやヒップホップなど多ジャンルのエッセンスを広く感じることができるはずだ。
現に、2017年12月にリリースしたデビューEP『Chosen』では、オリジナル楽曲とあわせてザ・キラーズの「Somebody Told Me」、ブラック・アイド・ピーズの「Let's Get It Started」、エド・シーランの「You Need Me, I Don't Need You」などのカバー曲が収録されており、この点からも“雑食”であることが分かるだろう。
そして、先述のストリートパフォーマンスをはじめとする草の根活動と、『Chosen』で早々にファンを獲得したマネスキンは、2018年10月に満を持して1stアルバム『イル・バッロ・デッラ・ヴィータ』をリリース。すると、豊かな音楽性の土壌から繰り出された楽曲群はすぐにイタリア国内の人々を魅了し、アルバムチャートで初登場1位を獲得するだけに止まらず、トータル再生数が1億7000万回を超え、さらにはヨーロッパツアーが全80公演で計14万人以上を動員するなど、国内外にその存在を知らしめたのである。
この勢いは新型コロナウイルスのパンデミックを挟んでも収まらず、2021年3月にリリースした2ndアルバム『テアトロ・ディーラ Vol. I』でも見事に初登場1位を記録。これを引っさげて挑んだイタリアで最も権威のある音楽祭のサンレモ音楽祭と、アバやセリーヌ・ディオンらを輩出したことで知られるヨーロッパ最大の音楽の祭典ユーロヴィジョン・ソング・コンテンスト2021で優勝を果たし(イタリアのアーティストが優勝するのは31年ぶり)、名実共にイタリアを代表するバンドの1組として階段を一段飛ばしで駆け上がっていった。
また優勝を機に、『Chosen』に収録されている「Beggin'」がTikTok中心に世界的大ヒットを果たす。そして、ストーリミング総再生回数11億回を記録しただけでなく、昨年秋にはアメリカの人気音楽番組ザ・トゥナイト・ショーやアメリカ最大の音楽祭の1つであるアメリカン・ミュージック・アワーズに出演、グラミー賞ノミネートのプレゼンターを担当、ローリング・ストーンズの前座に抜擢、イギー・ポップとの共演など、さまざまな角度から音楽シーンでバズを生み出すことにもなったのだ。
ファッションシーンをも虜にするローマっ子たち
ここまで彼らのキャリアと音楽性について早足で振り返ったが、ここからは彼らのアイデンティティを構成するDNAであると同時に、“バズ”を生み出す要因の1つでもあるファッションについて触れていきたい。
冒頭でお伝えしたように、メンバー全員がミラノと並ぶイタリアのファッションの中心地《ローマ》を地元とするローマっ子だけに、彼らにとって着飾ることは当たり前であると同時に、バンドにおける重要なブランディングだった。そのため、1stアルバムをリリースする前の活動初期の段階からシックなスーツやアヴァンギャルドなコスチュームを身に纏うことで、早々とイタリア版GQやバニティ・フェアに登場したりと、ファッションシーンからのアプローチが殺到したのだ。
中でも、彼らと同じくイタリアを拠点とする老舗ブランドのエトロが特に協力的で、2ndアルバム『テアトロ・ディーラ Vol. I 』のアートワークだけでなく、サンレモ音楽祭やユーロヴィジョン・ソング・コンテンスト2021といった晴れ舞台のために特注衣装を制作するなど、ビジュアルを重要視する彼らをファッション面から大いにサポートしていたのだ。
▲2021年サンレモ音楽祭にて
また最近では、エトロと同じくイタリアを代表するグッチも、主催するオンラインライブに招聘したり、創業100周年を記念する特別キャンペーンに起用したり、ヨーロッパ最大級の音楽授賞式である2021 MTVヨーロッパ・ミュージック・アワードのために特注衣装を仕立てたりと、彼らを積極的にフック。
▲L.Aで開催されたGucci Love Paradeにて
一方で彼らも、クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレによる折衷主義的なグッチの世界観が大のお気に入りのようで、「I Wanna Be Your Slave」のMVやザ・トゥナイト・ショーでアイテムを着用してパフォーマンスを披露するなど、非常に良好な関係を築いている。
彼らのファッション性の高さは唯一無二であり、今後はエトロやグッチといったイタリア国内のブランドだけでなく、世界各国から引く手数多だろう。ちなみに、ヴィクトリアはパフォーマンス中に衣装を脱くことが頻繁にあるのだが、その理由をバンドのファッション観と共に以下のように語っている。
「大事なことは、誰もが何も気にせず自分らしくいられること。自分の容姿、ジェンダー、性的指向を隠さず生きていけること。世の中は差別だらけで、社会は人にさまざまな規制を課し、その振る舞いや装いをコントロールしている。それに、女性の体は常に性の対象として見られる。これは許されないことで、どう見られるかに関係なく自分の思い通りに過ごせるようになればいい。もう1つ大事なことは、ありのままの自分を知ること。そのために偏見のない人や友人と付き合うこと」
▲「GQ JAPAN」ヒストリーとお気に入りの衣装を振り返る
ざっくりではあるものの、マネスキンを音楽とファッションという2つの観点からご紹介したが、いかがだっただろうか。少しでも興味が湧いたという方、もしくは前々からファンだった方々には朗報がある。なんと、彼らは8月に開催されるサマーソニック2021への出演が決定しているのだ。初来日公演ということで、パフォーマンスにもステージ衣装にも気合が入っているに違いないので、スケジュールとお財布に余裕がある方々には、ぜひとも足を運んでいただきたい。
▽最新アルバム『テアトロ・ディーラ Vo. Ⅰ』
▽SUMMER SONIC2022公式サイト
▽Måneskin|マネスキン 日本オフィシャルサイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/maneskin/