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066:釣り産業のホスピタリティの進化を考えた
昨日、春休み中で暇を持て余している息子を誘って釣りに出掛けた。過去に何度か沖釣り(船釣り)に連れて行ったことはあるのだけれど、仕立(貸切)船が殆どでガチの乗合船に乗せるのは今回が初めて。
釣り物は、いろいろ悩んだ挙げ句金沢八景の「一ノ瀬丸」がやっている午前メバル船を選択。
.釣り時間が短いこと(一日船よりも早い時間に沖上がりとなるが、海が悪い日などは初心者にとってメリットがあること)
.ポイントが比較的近いこと(船酔いリスク軽減)
.エサが虫系ではなく(生きエビ使用)、またコマセも使用しないため服に匂いも移らずシンプルな釣り方であること
以上の理由から、釣り歴の浅い息子でも楽しく釣りができるのでは?と考え船宿に予約を入れた。ちなみに、コロナ前の乗合船は飛び込み(予約なし)でも船に乗る事ができたが、今は感染対策の観点から殆どの船宿が事前予約制を導入している。例えば前日夜の天気や海の予報を見て翌日の釣り物を決めたりできる気軽さとフレキシブルな面が乗合船の魅力の一つだったのだけれど、こればかりは致し方ないかと思う。
船宿のホスピタリティの進歩を再認識
船宿の乗船システムは概ね以下のような流れである。
.予め釣り物を決めて電話かネットで予約(用具をレンタルする場合は、予約時にその旨を伝えておいた方が当日はスムーズ。またその釣り未経験の場合にもその旨を伝えておくと、船上で船長がレクチャーしてくれるなど良い釣りができる可能性が高まる)
.船宿の受付開始時間、乗船時間をサイトで確認の上船宿へ(受付場所と乗船場所が違う宿もあるので注意)
.当日の釣り物の船の釣り座(席)を取る。大体の船宿が早い者勝ちのシステム。宿によってシステムは違うが、「実際乗る船に荷物を置いて席を取る」方式と「受付時に札を取って席を確保する(受付に船を模した席次表があり、そこに貼ってある札を先着順で取ってゆく)方式に大別される
.受付で釣り物と予約名を告げて乗船料金を支払う。大抵の宿では船宿オリジナルの仕掛類も売っているので、当日購入も可能(船の上でも買える)。カップラーメンなんかも買える(もちろんお湯常備)
.乗船時間に遅れないよう乗船して諸々準備(私は遅くとも30分前には船に乗り、朝ご飯を食べつつ準備する)
今回乗船した一ノ瀬丸も概ね上記のシステムに則っていたのだけれども、今回は息子を連れて行ったこともあってか、普段1人で釣りに行った際には見過ごしていた気づきがいろいろとあった。
■案内が親切丁寧:今回は車で行ったのだけれど、駐車場までの案内が親切丁寧だった。この宿独自なのかもしれないけれど、数名の案内係が釣り物(沖上がり)時間に応じて駐車場まで誘導してくれた
■スタッフの言葉遣いが丁寧:以前の釣船の船長といえば「言葉遣いが荒い」のが当たり前だった。私も魚をバラすと「何やってんだお〜!ヘタクソ!」などと罵られた経験がある。まあそれが船宿のカラーでもあったのだけれど、近年ではタメ語で語りかけるところは減っているようだ。今回も別船のライトアジ船に多くのビギナーが乗船していたが、出船前にスタッフが丁寧に釣り方をレクチャーしていたが、その言葉遣いが所謂「ですます」調で、以前のガラッパチな対応に慣れている身としては新鮮に感じた次第
■船上で仲乗りさんがサポート:今回乗ったメバル船では、乗船人数が多かったこともあり仲乗りさんが乗船していたが、息子にピッタリついて釣り方をレクチャーしてくれた
これらの点は既に10年以上前から顕在化していたように感じているが、当時は「無理矢理やらされている感」というか、能動的に望んでやっている感が殆ど感じられなかったのが実情。しかしながら最近は、供給側がそうしたやり方に慣れていること、サービス改善による効果を実感している(であろう)こともあって、それが「板についていること」を感じた。もちろん、女性アングラーの増加やコロナによる新規層の増加など顧客構造の変化も関係しているのではないかと思う。
それでもやっぱり釣れないとw
そんなことを思いながら息子と一緒に船に乗り沖へと出たのだけれど、結果からいうとこの日の釣りは非常に厳しいものとなった。朝から強く吹く北風の影響で船は大きく揺れっぱなしで、立って釣ることも難しいコンディション。
釣りをしたポイントが岩壁ギリギリだったこともあり、岩壁に当たって返ってくる波もあって仕掛けを一定の場所にとどめておくのが非常に難しかった。おまけに根掛かりが非常に多いポイントであり、2人で軽く10組以上の仕掛けをロストした。また息子にとっては、そんなタフな環境の中3本の針に生きエビを付けなければならなかった点も辛かったようである。
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「それが釣りというものだ」と言ってしまえばそれまでなんだが、どんなに船宿のホスピタリティが高くても、その日の海の状況や釣果によって初心者の釣りに対する印象は大きく変わってしまうという現実。事実息子も終盤は殆ど魂が抜けたような状態だった。これはこの日とこの釣りをチョイスした私にも責任がある。春のエビメバルって、もっと手軽な釣りのイメージだったんだけど。
(ちなみに、妻と付き合い始めた時に連れて行ったのも2月のエビメバルだった。この時も非常に海が悪く、この時のトラウマでそれ以降一切釣りを拒否するようになってしまったw)
コロナによって釣りが盛り上がっていることもあってか、「釣りに連れて行って欲しい」「船釣りをしてみたい」という、未経験者からの要望を結構な頻度で頂くようになった。とても嬉しいことではあるんだけど、今回のような天候リスクを考えるとなかなか気軽に「じゃあいついつ行こうか!」とは言えないのが実情。私の妻のような「アンチ」を創造してしまった罪の意識も脳裏をよぎるw。
船宿側のホスピタリティ改善によりサービス業としての水準は間違いなく向上している沖釣り産業だけど、初心者や未経験者がもっと気軽に沖釣りを楽しむ事ができるような、更には釣った魚を美味しく手軽に食べられるような「仕組み」の構築の余地はまだまだ残されていると感じた次第。
参入促進のエンジンだけではなく、釣り人へと「育成」してゆく仕組みの構築、つまり釣りという世界の沼に「ハメていく」ための仕組み構築が必要なのはゴルフ産業と同様と感じた。普段は自分の趣味で釣りをしているため産業視点で釣りを俯瞰することはないが、今回息子と一緒に乗合船を利用したことで、様々な気づきを得ることができた。