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098:3年ぶりのPGAショー ⑤多様性こそがアメリカゴルフ文化の強さの源だ、的な話
フロリダ州オーランドはオレンジカウンティコンベンションセンターにて開催されているPGAショーも2日目。個人的な感覚としては時差ボケから徐々に解放されてくる一方で旅の疲れが徐々に出始める頃でありまして、脳内に何か変な物質が分泌されているのを朧気ながら感じ始めるタイミングでもあります。
本日は幾つかのミーティングを行いつつ、PGAショー訪問時に密かに楽しみにしている「個人が出展している小さなブース」を回ることを主たる目的に設定しました。
飛距離測定機の次のトレンドは「スピーカー内蔵型?」
シミュレーションゴルフ、弾道測定系のブースと同じくらい「増えてるなあ」と思ったのが、レーザー・GPS型を問わずの「飛距離測定器」関連メーカーの出展。これまでは「GPS型を主体とするメーカー」と「レーザー系を主体とするメーカー」とがある程度棲み分けされていたようなイメージが強かったのだけれど、今回はそれらが融合されたような感覚を強く受けた。というよりも「レーザー系」の飛距離測定機に強みを持つメーカーが、それに加えてGPS系の商品をラインナップに加えつつ「プラスα」の味付けを施して新規性のある(ように見える)商品を提案している、と言えば良いのか。
で、その「味付け」が何なのか?というとBruetooth連動の「スピーカー内蔵型」飛距離測定器。改めて各ブースを細かく見てみると、それらの商品のまあ多いこと。
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写真でお見せした以外にも多くのレーザータイプの飛距離測定器を展示するブースがまあまあ多くて、まさに「百花繚乱」という感じ。日本における市場動向を定量的に把握している身としては、「ほんとにここまで需要あるの?」と疑問を持ってしまうレベル。そうした飽和感も手伝って、恐らく先行メーカーと一部の新興系メーカーが「差別化政策(既存ゴルファーの買い替えを促す商材)として「スピーカー内蔵型」の商品を発売しているのではないか?と感じた次第。大雑把に言えば「GPSタイプの飛距離測定機市場における“ボイス型”の復権」というように捉えることができる。日本市場でこのタイプの飛距離測定器が受け入れられるのかどうかは何とも言えないけれど(「うるせえ!」と言われそうw)、果たしてこうした新たな提商品が飛距離測定器市場に新たな活性化をもたらすのか、現在GPS型の測定機市場で主流となっている「ウオッチ型」を凌駕するのか。今後の動向が注目される(と勝手に感じている)。
アメリカゴルフ文化の「フトコロ」は小規模ブースにこそあり?
これまで3年ぶりのPGAショー訪問における個人的な感想を好き勝手述べてきたけれど、その変化を大雑把に括ると、
■「モノ」から「コト」への更なる転換
■「コト」市場におけるテクノロジーの更なる進化
■アジア市場における「韓国」のプレゼンス向上
以上の三点に集約されると言って良いのではないかと思う。もう少し違う言葉で表現するならば「AIなどのテクノロジー進化に裏打ちされた“複雑怪奇なゴルフというスポーツの可視化”」みたいな言葉で形容できるのではないかと思う。
そうした進化、進歩を目の当たりにしながら自分自身その変化や進化を「分かったようなつもり」でいるのだけれど、果たしてそれが「100%腹落ちしているのか?」と聞かれるそうではない自分がいるのも事実だったりする。進化を目の当たりにしつつもどこかで「足りないピース」の存在を感じる自分がいるというか何というか。
そんな「足りないピース」を埋めてくれるような存在が、自分にとっては会場の一角に出展する小規模ブースの存在だったりする。
それらのブースの多くが上述したような「テクノロジーの進化」とは真逆の世界、換言すると「俺が面白いと思うので商品化してみたぜ!」というある種のノリで商品化されたブツたちのオンパレード。そうした商品の多くはティーなどの小物類で数多く目にすることができる。一例を挙げると、
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上の写真は「ネジ式」のティーを展示するメーカー。でも画像を見るとまさに「ネジのようにグルグル回しながら地面に挿して、好きな高さに調節できる」のがウリのよう。一緒にブースを見学していた田村さんが「冬の日本みたいに地面が凍っている時はどうするんでしょうね?」と言っていたけれど、きっとこの商品を考え出した人はそんなシーンを想定すらしておらず、むしろ「そんな寒い日にゴルフなんかしてんじゃねえ!」くらいの気持ちでいるのではないか。そんな開発秘話すら思い浮かべてしまう。
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上の2枚の写真は、夫婦と思しき2人が展示していた「ゴムティー」のブース。デモ動画を見ると、練習場の「ヘソティー」のようなティーとゴムで繋がっている小さな穴にティーを挿して固定、ヘソティーの上にボールを置いてティーショットするらしいのだけれど、小さな穴に挿したティーによって地面に固定されているので「ティーが無くならない」というのがコンセプトのよう。
「だったら小さな穴に挿したティーの上にボールを置いて打てばいいじゃないんですかね?」というのが田村さんの意見で100%正論なんだけれど、多分出展者のおじさんは「いやそうじゃねえんだ。この構造にこそ秘密があるんだコノヤロウ」的なことを言っていた(ような気がする)。
その製品の妥当性とかベネフィットだとかは横に置いといて、こうした「アイデア商品」を写真のような(多分自分より年上の)夫婦がPGAショーに出展してキラキラした顔でPRしていることが何てステキなんだろうと。コロナによって3年ぶりの訪問となった今回のショーで「もしかしたらニュープロダクトのコーナーがなくなってしまっているのではないか?」という思いすら抱いていたのだけれどどっこい彼等は生きていて、そうした姿を生で見ることができて何だか良かったよなあという気持ちと同時に、PGAショーを訪れるたびに感じていたアメリカのゴルフ産業の「フトコロの深さ」を垣間見て、「ああ日本のゴルフ産業はどうひっくり返っても彼等にはかなわないなあ」という“清々しい敗北感”をいつも感じる。そしてそれが日本に帰った後の自分の日本でのゴルフ関連の仕事を進めていく絵での「最大の原動力」になっているのである。
そんな自分にとっての「PGAショーの神髄」である小規模ブースを回りつつ、昨日ツーリズムコーナーで見かけた「SAMURAI-GOLF」のブースで出展社にお話を伺いつつ、
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テクノロジー系の進化も体感しつつ、
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オーストラリア発の新しいプロダクトの日本での拡販に関するプレゼント相談を受けつつ、
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最後の最後で、アクシネットジャパンインクの新社長となった岡本さん(高校時代は2人とも水泳部、私は日大豊山、岡本さんは近大付属という宿命のライバル的な関係だった)にようやくお会いすることができたという、まあまあバラエティーに富んだ一日を過ごすことができた。2日目を終え、PGAショーの「玉手箱的面白さ」と「思いがけぬ出会い」が健在であることを実感。