見出し画像

105:「ゴルフで地域創生」を目指す五島市

「ゴルフで地方創生」の必要性と必然性


「なんでゴルフじゃないといけないんですか?」

 約5年前、「地域のゴルフ場を中心としたゴルフ資産は地域創生のキラーコンテンツになり得る」というという思いと客観的理論を元に、これまでいろんな地方自治体に「ゴルフで地方創生」を実現するための戦略立案と具体的な戦術実行の提案を行ってきた。

 しかしながら、殆どの自治体の担当職員から返ってきたのは冒頭のセリフだった。その他にも、

「私自身ゴルフをしないから」
「ゴルフは万人受けするスポーツじゃないでしょう?」

など、改めてゴルフが「やるスポーツ」としては未だマイナーなポジションにいることを思い知らされる日々が長いこと続いた。中には、

「いやあ、私もゴルフをするんですがウチの近く(その自治体の管轄内)にあるゴルフ場はどれも高くてプレーできないんで、〇〇方面(その自治体から車で1時間ほど山奥に行った土地)にあるゴルフ場にしか行けないんですよ」

という、公務員の赤裸々なゴルフライフの実態を聞かされて途方に暮れた時もあった。

 「地域にあるゴルフ場を活用して地域外のゴルファーを誘致し地域活性化を図るだけでなく、地域住民の心身双方の健康増進を実現して地域住民満足度の向上を図る」

 その実現に向けて自治体と連携する。具体的には「ゴルフ資産を活用した地域活性化のために、自治体の予算を行使する」。その実現ハードルの高さを痛感しつつも諦めずこの数年活動を続けてきたが、この度長崎県五島市による「五島の地域資源を活用した着地型旅行商品の造成支援事業」の企画募集が開示され、ゴルフの事業を当社が受託することとなった。

 上記事業は「五島市の釣り資源を活用した観光事業の造成」と「五島市のゴルフ資源を活用した観光事業の造成」という二つの事業に分かれていて、今回当社(矢野経済研究所)はゴルフ事業造成の担当になった次第。ちなみに釣り事業の造成は「一般社団法人リゾートツーリズム協会」様が受託、担当することとなっており、我々は同協会さまとタッグを組む形となる。

今年一年で「五島ゴルフ+α」の体験機会を創出

 私の知る限り、「ゴルフで地方創生」に対して自治体が予算化したケースは殆どなかったのではないかと思う(過去に宮崎県がプロポーザル案件を出したことはあるような記憶があるけれど)。それを市内にゴルフ場が1場(五島カントリークラブ)しかなく、ゴルフショップもゴルフスクールも存在しない五島市さんが予算化してくれたことということが非常に画期的であり、ゴルフ産業としても非常にニュース性が高いのではないかと考えている。決して大袈裟ではなく、ゴルフ産業にとってのビッグニュースであると。とはいえ、私の知り合いのゴルフ産業関係者に話をしても、

「五島列島にゴルフ場なんてあるの?」
「そもそも五島ってどこにあるの?どうやって行くの?」

と言われるのが実情。過去のnoteでも書いてきたけれど、「離島=最果ての地」というイメージも強いようで、福岡空港及び長崎空港から夫々飛行機も飛んでいて「行きづらい場所」という先入観が強いのもまた事実。

 まず今年一年、(比較的アクセスしやすい)九州地区のゴルファー及びゴルフ産業従事者を中心に、

五島のゴルフを体験してもらう
「ゴルフ+α」の五島の素晴らしさを体験してもらう

ことを目標に、各種モニターツアー・ファムツアーを企画・実施する計画。そのツアーから「今後の持続的なゴルフによる五島市活性化」を実現するための課題を可視化し、次年度以降の戦略展開と戦術実行に繋げてゆければと考えている。

 今年2月に開催された「五島市長杯椿カップゴルフ大会」にゲストとして参加頂いたタケ小山プロ、塚田好宣プロからも、五島カントリークラブの「ゴルフ場としての素材の素晴らしさ」についてはお墨付きを頂くことができた。コースのロケーションも含め、日本各地の所謂「名コース」と評価されているゴルフ場と比べても決して引けは取らないと思う。

 しかしながら、付帯施設のゴルフ練習場の設備やクラブハウス、更には例えば「ゴルフスクールの合宿場所」のインフラとして宮崎や沖縄などのゴルフ場と伍して戦えるか?と言われると厳しい面があるのが、客観的に見た際の事実でもあると思う。今年一年の施策展開で、その点を浮き彫りにして対策を立案実行し「ゴルフ場としてのインフラ強化」に繋げてゆきたい、というのが私の考え。

 そしてもう一つ大切なのがゴルフ+αの「α」をコンテンツ化してゴルフと結びつけること。具体的には「釣り」と「グルメ」と「お酒」を当てはめてゆきたいと思っている。

 私自身矢野経済研究所で「ゴルフ産業」「釣り産業」「スポーツバイク(自転車)産業」の調査を担当しているが、「ゴルファー」と「釣り人」というのはあらゆる面で親和性が高いと実感している。端的に言うと「ゴルフ好きな人は釣りも好きになる可能性が高い」ということ。実際タイガー・ウッズも実は大の釣り好きだし、日本のプロゴルファーにも釣り好きな人が実は多かったりする。

 また自分が普段ゴルフ産業の調査活動を行っている中でも、ゴルフ産業従事者やゴルファーから「チャンスがあったら釣りに行ってみたいんよね」という言葉を本当に多く耳にする(但しその後で必ずと言って良いほど「でも何から始めていいのか」「でも船酔いが・・・」という枕詞が続くのだが)。

 「プラスα」のコンテンツとして「釣り(釣り未経験者向けの釣り体験企画や、ゴルフと釣りを両方楽しむ人のガチ企画など)」を体験して頂くことで「ワンモアステイ(もう一泊)」の実現を目指したい。

 「グルメ」に関しては過去の私のnoteでも「五島のうまかもんシリーズ」で書いてきたように、海の幸から五島牛を中心とした肉類、麺類までバリエーション豊かなコンテンツが揃っており全く以て問題ないと思う。

 そして密かに私が期待しているのが「お酒」。五島市(福江島)には芋焼酎「五島芋」・麦焼酎「五島麦」を製造している「五島列島酒造」がある。醸造所では試飲、販売も行っていて、そこでしか購入できない原酒も売っている(今年2月の五島市長杯椿カップ開催前日、全日本ゴルフ練習場連盟の幹部と塚田プロを連れて訪れたが、恐らく総勢6名程度で50万近くお酒を購入したのでは・・・・・・)。

五島列島酒造

 また、昨年秋には福江島の「半泊」という集落にクラフトジン「ゴトジン」の醸造所が完成した。私も何度か購入させて頂いているが、なかなか製造が追いつかず慢性的にバックオーダーを抱えている状態が続いている様子。

 更には五島カントリークラブ近くのリゾートホテル「コンカナ王国」にはワイナリーがありワインの製造と販売も行われている。

 「ゴルファーはグルメでお酒好き」というのが、これまでこの業界で仕事をさせて頂いて肌で感じていること(もちろんそうじゃない人もいるけれど確率論として)。

五島列島酒造
五島つばき蒸留所
五島ワイナリー

 ゴルフ活性化、そこからの地域活性化に自治体の予算(税金)を使わせて頂く、という初めての経験に背筋がピーンと伸びる思いでいるが、何とか今年一年で成功の道筋を作り上げたいと思う。


いいなと思ったら応援しよう!