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【短編小説】誓い

「私が幸せにするなんて言わないけどあなたが勝手に幸せになる姿を眺めながら私も勝手に幸せになれると思うの。よかったらあなたの人生の傍らに私を置いて2人で良い時間を作っていかない?」

『幸せにするなんて言われたら“もう幸せです”としか言えない僕のこと、よく知ってるんだね。そんな物知りな君は、勝手に幸せになってる君を見ている時の僕の気持ちは知らないのかな』

「私より回りくどくて嫌味な人はあなたくらい。つまりあなたは私を見ているだけで幸せだって言いたいわけね」

『それを言っちゃおしまい。君の前ではちょっとばかしスカした態度でいたいものだよ。それで、もしもいつかの二人の休日、雨上がりの朝だったら、僕と散歩をしてくれる?』

「あなただけを愛する自信はないけどその約束は守ると誓うわ」

誰に理解されずとも、二人には二人の愛の形があるのだから、二人の手がその形を支えているのならそれでいい。僅かに波打つ不安を打ち消す仮初めの言葉を伝えるくらいならば、どんなに矮小でも等身大で構わない。生身の真実は言葉にした瞬間に過去になる。未来にも過去にも生身の真実は存在しない。それでも生身の私があなたと生きたいと願う気持ちだけは今の私の真実だから、まだ見ぬ二人の未来を加工保存して、その花束を指輪にするの。今はそれだけでいいと思った。だからあなたと生きていきたいと願ったの。

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