見出し画像

<福祉施設への訪問2>

 その年の冬、再び、下越地区の介護施設に訪問することになりました。夏に続き2回目になります。
 前回は、初めての訪問で緊張しましたが、皆さん楽しそうな様子でしたので、気持ちよく演技をさせていただきました。盛り上げていただいた職員さんには感謝しています。
 今回は2度目ということでの慣れもありますし、何より雰囲気の良い施設ですから、前回よりも上手くいくはずという思いがありました。早々に、新ネタを完成させ、順調に準備を進めていました。
 ところが、本番3日前、この依頼の引受人でもあるマジシャン先生の方から、思わぬ要望を預かることとなりました。
 要望は大きく2つあって、1つ目は、腹話術の合間に指定したマジック加えること、2つ目は冒頭の挨拶からそのマジックまでを別に作成した台本のセリフでやってほしいとのことでした。
 1つ目は、過去に何回かあったので覚悟はしていたのですが、2つ目は想定外でかなり抵抗感のある内容のものでした。
 その内容というのは、人形が挨拶でダジャレを言うのですが、誰でも聞いたことがあるようなありふれたもので、正直、本番中に恥ずかしくなるのではないかと思われました。また、人形が言う悪口をたしなめるところがあって、これは人形の愛らしいキャラクターに合いませんし、人形にも悪いような気がしました。
 そのままでは、とても受入れられるものではありませんでしたが、その方からは何度か出演依頼をいただいている(今回も)ので無下に断ることはできないと思いました。そこで、最初はダジャレ挨拶から入って、お客さんの反応が薄ければ、そこで当初予定の台本に戻すことにしました。
介護施設ですから大声で笑うような利用者さんはいないだろうという変更ありきの妥協案です。本番中の状況判断なら、先生もやむを得ないと大目に見てくれるような気がしました。
 2つの台本が干渉しないよう当初の台本を少し書き換えて台本の妥協版を作って本番に臨むことにしました。
 言われる通りやって上手くいかなかったらどうしてくれるのかという思いもなくはなかったのですが、それでも上手くやれるのが実力なのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?