失敗の繰り返しから。
人は様々な失敗をするものだ。
とても努力する人でも、
どんなに優秀な人であっても、
生きている限りは、
“失敗しない”なんて事は、無いはずだ。
かく言う私は“失敗王”で、
極々当たり前のように
間違えたり、大失敗したりして、
頭を抱えながら日々を生きている。
小さな子供の頃から
ずーっと、そうなのだ。
だからもう、
いちいち落ち込んでなんか、いられない。
細かい事にはこだわらない。
もうこれは、
“不治の病”なのだと
開き直って生きている。
スマイルリングには、
様々な失敗をした青年達がたどり着く。
その背景もまた様々なのだが、
彼等に親などの
しっかりした保護者さえ居れば、
ここまで失敗を繰り返し、
彼等が世の中で彷徨うほどには
ならなかっただろうと思ったり、
その失敗が、どうしても、
彼等だけの責任とは、思えないのだ。
この子が少年院に入らなければならないなら、
親や、この子の周りにいた
大人達も刑務所に入れば良かったのに。
と私は本気で思う。
自分で自分の事を、
“失敗作だ”と
思い込んでいる彼等は、
刹那的な生き方を
覚えてしまっている。
その日その場だけの楽しみや、
その場だけの苦痛からの逃避に、
酒や薬物などが無いと
生きるのが辛い青年達も多い。
『ぶっ飛びて〜っ!!』
と私の横で叫び、
シラフでいるのがキツいと言う青年は、
可愛い顔をした中学生の時から
大量の薬物を使用していた。
死ぬギリギリが、
一番気持ちが良いのだと言い、
実際、死んでしまうぐらいの、
本当に恐ろしい薬物の量を
毎日ためらいも無く摂取していた。
彼は何度も病院に入院し、
“地獄巡り”を味わって、
今やっと腹を括り、
いろんな人や場と関わりながら、
毎日をシラフで生きる練習をしている。
物心ついた時から、
とても正常な意識では
生きてはいられない程の
“虐待地獄”の中にいた青年は、
これもまた中学生の時に、
『あっという間に心が楽になる方法』
を見つけてしまった。
とにかくシラフでいなければ、
その時だけは、
何とか生きてこられたのだろう。
彼にとって、
恐怖と悲しみしか無い
現実世界を生きる為には、
意識を曖昧にし、
現実の毎日を歪め無ければ、
変な話だが
“普通に”生きていられ無かったのだ。
ただその
『あっという間に楽になるもの』が、
本当はもっと大変な
地獄の足枷だと気づいた今となり、
本来はとても純粋な心をもつ、
優しい彼の生活を
トラブル続きにしている。
薬物やアルコールを
常用する青年達には、
しょっちゅう、嘘をつかれる。
それらの副作用で
猜疑心がとても強くなる彼等は、
被害妄想や勘繰りで、
時にグダグダの甘ったれた事を言い、
様々な、
本当にくだらないトラブルを起こす。
一生懸命にご飯を食べさせたり
話を聴いたりして、
何度も何度も行ったり来たりと
車を走らせる相手に、
嘘をつかれ、
トラブルの後始末も自分達で出来無いで、
結局周りを巻き込んだり、
私や理事長の堀ちゃんが
『ケツを拭く』ような事態になる。
それでも大抵、
つまらない嘘というものは
直ぐにバレてしまうし、
あえて気付かない振りを
している事も多い。
結局、彼等の方が
私に嘘をついている事に耐えかね、
『ホントはね…。』と、
伝えてくれる事がほとんどだからだ。
全くもうと呆れながらも、
そんな時こそ、彼等とガッチリ、
本音で語り合えるチャンスだと思っている。
それを繰り返し、
とにかく、繰り返すのだ。
これでもか、これでもかと、
何かトラブルがある度に、
彼等の気付きを助け、
心をギュッと抱きしめて、
“決して、諦めないよ”
と、繰り返してゆくしか無い。
私は待っている。
彼等だって本当は全部、
自分がそろそろどうするべきか、
分かっているのだ。
失敗と欠点が多い私の、
たった唯一の、
自分の強みだと思う
気長な忍耐力で、
彼等がシラフで、
現実の世界をクリアな意識で
幸せに生きていく為の力が、
もっともっと強く湧いてくるのを、
私は待っている。
それには栄養が無ければならない。
本来の彼等は絶対に
“失敗作”でも“不良品”でも無い。
彼等は発芽しにくい
アボカドの種のようなもので、
諦めたらそれでお終いなのだ。
信じて待ち、
笑顔で安心させて
話に耳を傾け続ければ、
必ず根が出て、
素敵な葉を茂らせるようになる。
シラフの時の彼等は
とても可愛いく、
本当に素敵な青年達なのだ。
この頃時々、
青年だけでは無く、
中高年の元受刑者の方からの
連絡が来る事もある。
4回、務めまして、
今度こそ、
本気でやり直しているんです。
先日はそんな方から、
“自分も人生で、
誰かの為に役に立ちたい”と、
爪に火をともすようにして貯めた
寄付金を振り込んで頂いた。
本当に嬉しかった。
祈るような気持ちで
遠方に住むその方が、
一日一度でも誰かと、
笑顔で接する触れ合いがありますようにと
心から願っている。
反対に、
辛い事から逃げ続け、
誰かや何かのせいにし続けてきた人生は
恐ろしいほど、ボロボロだ。
結局は“孤立”という、
最も恐ろしい人生になってしまうのだ。
このところ毎日
そんな何かしらが起きて
朝から晩まで
あっちにこっちに走り回っている。
『自分で自分のケツを拭け!
誰が一番面倒な事になると思ってるんだ!』と、
最近かなり寝不足になっている、
恐怖の大魔王の私に怒られる彼等なのだが、
それでもやっぱり本当に
可愛いから困ったもんだ。
結局今日も、朝から晩まで
あっちとこっちとそっちに
走らなければならない。
あんた達ねぇ。
そろそろ私を労わりなさいよ。
今日もシラフで頑張るんだよ。
NPO法人スマイルリング💫
理事 ののむら ちあき
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