ウチの子 発達障害!?vol.61~65
vol.61「貴重な体験」
昨年末、報道番組のスタッフから、息子がYouTubeに投稿していた動画を使わせて欲しいと連絡があった。12月6日に営業運転を終了した南武線205系0番台の車内での最終アナウンスがツイッターやインターネットニュースで話題になり、それについて番組内で特集を組むことになったというのだ。
その特集に私たちも少しだけ出演することになり、3回に分けて取材を受けた。初回は自宅での長時間のインタビューで大変だった。息子は「なぜ南武線が好きなの?」と聞かれても気の利いたこと一つ言えないし緊張感もないし…。私の方が気を遣って疲れた。考えてみれば、物心付いた時には電車が大好きだったので、理由を聞かれても答えようがなかったかもしれない。
放送当日、あのインタビューからよくこのコメントを使ってくれたなぁとホッとしたのと同時に、番組制作スタッフの編集技術に感動した。息子もテレビに映った自分の姿を見て大興奮だった。私たちの恩師、知り合いも喜んでくれたし、何より関西にいる両親たちが喜んでくれたのが嬉しかった。いつもハラハラドキドキさせてくれる息子だが、今回は息子のおかげで貴重な体験をさせてもらった。(2016.4.4)
vol.62「『指導』という言葉にうんざり」
心配していた音楽教室の発表会は無事に終わった。でも学校の方は不安ばかりだ。年度末には学校でトラブルがあったと担任の先生から何度か電話がかかってきた。それらのトラブルのほとんどは、息子が起こしたものというより巻き込まれたものだった。
相手の子は気分次第で自分より弱い子に八つ当たりすることが多いので、以前から息子には気を付けるように言ってあったが、それでも訳もなく蹴飛ばされることが何度もあった。こちらは気を付ける以外どうしようもないのに、息子にも非があったかのように言われたこともあり、もうあと数日で1年生も終わりという時に、先生に対して怒りをぶつけてしまった。
何より相手の親に対してただ「指導しました」で済ませる学校に腹が立った。その子が八つ当たりする原因を探るには、家庭の内部事情にまで踏み込まなければならない。だから先生には「指導しました」で済ませるしか術はないのだろう。でもその「指導」は解決につながるのか―。何とも言えないもどかしさを感じる。(2016.4.29)
vol.63「通級は楽しいらしいけど…」
多摩区内に中学校の通級指導教室が開設されて、この春で3年目に入った。最初の年は利用者も少なくどうなることかと思ったが、今ではびっくりするほど利用者数が増えている。
息子は小学校から引き続き利用しているが、通級の日は嬉しそうに出かけて行く。小学校の時と違って親の付き添いはないし、朝から一日通級で過ごせるので気楽なのだろう。おまけに歩いて行ける場所なのに、バスに乗って行けることも楽しいようだ。
通級指導教室には個別指導と集団指導がある。個別指導では学校生活のことを聞かれたり、少し課題があったりするが、文句を言いながらもきちんとこなしている様子。集団指導では卓球をやったり少人数でゲームをやったりと、小学校の時と似たような内容だが、毎回メンバーが違うので面白いらしい。
これからは高校進学のことも考えていかなくてはと思う。でも成績は上がらないし、やる気もイマイチだし、どうすればよいものやら。本人が行きたいと思う学校を見つけてそこに入学できれば一番だと思うけれど、果たして息子は頑張ってくれるだろうか…。(2016.5.26)
vol.64「適応できているなら診断名は必要ない?」
良かったのかどうかは分からないが、息子は今まで精神科医にかかることなく過ごしてきた。今までに書いた発達障害の診断名は、心理士から「この障害の特徴が見られる」と聞いた程度のものであり、その特徴と検査結果をもとに、保育士や教師と息子の対応について一緒に考えてきた。
早い時期から診断名が付く子どもは10年前にもいたが、福祉サービスを受けるでもなく投薬治療の必要もない子なのに、なぜ診断名が必要なのか疑問だった。親や保育者、教育関係者がその子に合わせた対応や見守りをすることができ、それなりに社会生活に適応できていれば、診断名は必要ないように思う。
今、息子はそれなりに社会に適応できていると思う。学校では時々細かいことを言われ、「先生はそこまで気にするのか」と思うこともあるが、最近は「細かい指摘はほぼ適応できているからこそ」と思うようになってきた。学校では周囲の笑いを取ることに徹しているようだが、それが適応につながっているのならいいと思う。(2016.6.16)
vol.65「視線の先にある、大切なこと」
私が子どもの頃にも鉄道ファンはたくさんいたが、陰に隠れた存在で、取り沙汰されることはなかった。それがここ数年は、鉄道の話題がテレビで頻繁に取り上げられたり、子ども向け鉄道番組が放送されたりとはなやかで、鉄道ファンもやっと日の目を見るようになったと感じている。
息子が電車を好きになったのは1歳前後だったが、私はその時に「この子はきっと一生、電車を追いかけることになるだろうな…」と直感した。だから特に用事がなくても、電車を見に行ったり乗りに行ったり、息子とよく出かけたものだ。特に南武線、東急東横線、京急線には頻繁に乗りに行き、楽しい時間を過ごさせてもらった。
息子の成長とともに一緒に出かける機会は減ったが、今も小田急線の駅の近くの踏切で電車を眺めている親子を見かけると、昔を思い出して微笑ましく思う。親子で同じものを見て共感する時間は、きっとかけがえのないものになるだろう。(2016.7.21)