あめのほし
このほしは、陽が暮れると雨が降る。
いつも夜とともに
冷たい雨が降ってくる。
はるかとおい昔
このほしの夜空は金剛石でいっぱいだったそうだ。
あるとき
その金剛石を手に入れようと
ひとりの男が空へはしごをかけた。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
そうだ、はしごをかけろ
その男の様子をみていた人々は
次々にはしごをかけ
夜から金剛石をうばっていった。
なんてうつくしいんだろう
もっとほしい、もっと
灯りはほかになんとでもなる
いつしか空いっぱいだった金剛石は
最後のひとつを残すだけになった。
それまで夜は
ただ静かに
人々のするにまかせていた。
そして、人々が
最後の金剛石を手にしたとき
冷たい雨が降りはじめた。
人々ははじめのうちは気がつかなかった。
金剛石がなくなった空が
穴だらけになっていたことに。
そんな空に夜が
雨を注ぎはじめたことに。
三回めの夜がきて
少しずつ気がつきはじめた。
十回めの夜がきて
もう一度はしごをかけることにした。
金剛石を戻すために。
けれども
はしごは雨に濡れて、足がすべって
のぼれなかった。
もう、もとには戻せなかった。
そうして、このほしはあめのほしになった。
いつかあふれて、誰もいなくなるだろう。
「やぁ、こんばんは。
今日はいちだんと冷えた雨ですよ」