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メディアあれこれ 11 “日本人にはキーボードアレルギーがある”?! 新しいメディアには否定論がつきもの

新しいメディアが登場したときは必ず否定的な意見が強く前面に出て、本当に先を見通す人はごくわずかしかいないものです。映画電話が登場したときの話が有名ですが、発明者自身も必ずしも見通してはいませんでした。
私自身は、1980年代、電電公社が回線開放をすることになった頃から新しいメディアの動向を見てきていますが、新しいメディアが登場した初期の頃は、毎度、本当に判で押したように否定論が周辺やマスコミ上でまかり通るというのが常でした。

湯川 鶴章さん(ジャーナリスト)は、「メール普及前に『メールが普及する』と主張すると、『別にファックスでいいじゃん』と反論されたものだ。『いや印刷の手間がないので』と説明すると、『そんなの大した手間じゃないよ』と一笑に付された」という例を披露しています。(2012年、Facebook)

下記は私が体験した主なものです。これらのいずれについても、私は「必ず普及する」という確信をごく初期の頃から持ったことが誇りです。

*FAX・・・法務省の業務用のやりとりなど、そのままのイメージでないと困るような特殊な用途だけだろう。代表例は人名や地名が入っている前科照会。当然ながら家庭では絶対に普及しない。
*ワープロ・・・企業の総務部のような定型文書のあるようなところでないと普及しない。ましてや小説家まで使うなどというのは論外だ。
*キーボード・・・日本人にはキーボード・アレルギーがある。
*インターネット・・・コンピュータ・オタクが使うものであって、普通の人にまでは普及しない。
*ウェブで文章を読む・・・ディスプレイを通じて文章を読むなどということはありえない。読みづらい。
*ネットショップ・・・アメリカのように国土が広大なところでは通販が役立つが、日本のような狭い国では不要である。ましてや、ネットは安全性の問題が加わって普及することはない。
*ネットショップでの靴や衣類の購入・・・履いたり着たりして試さないで買うなどということはありえない。絶対に普及しない。

たとえばワープロですが、東芝がJW10というデスク組み込みの機械を初めて作ったときに、当時勤めていたシンクタンクが600万円くらい出して買ってくれました。もちろん共用ですが、使おうという人はあまりいなかったので、幸運にもほぼ独占して、実際に仕事で使ってみたのです。

そのときの用途はアンケート調査の設計でした。アンケートづくりって、なんども書いては消しという繰り返しです。そういう用途にワープロはぴったりでした。当時、そのようなワープロというものの機能や用途について、何も知らない人に、口で説明するというのは実に気が遠くなることでした。
実際、その頃の私は、新しいメディアの可能性を人にさきがけて実感した気負いもあり、それがいかにすごいかを、ハイテンションでやっきになって説明しようとするので、聞く方はわからない上に、その前のめりの姿勢がうっとうしくて、つい否定的な反応をしてしまうという面もあったのでしょう。

<筆者のFacebook投稿(2012年1月31日)から転載しました。>