【SMDレポート/沖直子さん】私も、SMDに誘った大学生も。背中を押すきっかけに。
2019年〜2022年まで4期にわたって開催した「Social Mirai Design(SMD)」。これまでの取り組みをふり返り、SMDの活動や受講生の声をレポートにまとめました。この記事では、2020年(2期)に受講生として参加し、2022年(4期)には事務局として活動された沖直子さんの体験レポートをお届けします。
SMDに参加した背景・理由は?
私は愛知県にある大学にて、コーディネータとして活動しています。コーディネーターとは、地域と学生をつなぐ役割を持つ人のこと。具体的には、「コミュニティ・コラボセンター」といって、ボランティアセンターと地域連携センターが合体したような組織に所属し、学部・学年が混ざり合う学生たちにアクティブ・ラーニングを展開しています。授業のテーマは、「地域」「まちづくり」「ファシリテーション」などさまざま。地域で活動している人の声を伝えたり、学外に出て、地域活動したりする場面もあります。
実は、コーディネータとして活動するのが今の学校で4校目なんです。これまでにも地域と学生が連携したプロジェクトの立ち上げや支援などを行ってきました。
SMDを知ったのは、ちょうどコロナ禍に突入した2020年でした。対面でのイベントが減った代わりにオンラインイベントが増え、私もいろんな会に参加していました。そんな中でSMDと出合い、「このイベントいいな」と思ったんです。一般的に、「地域」をテーマとしたセミナーって、対象地域が限定されていたりするけれど、SMDは全国各地で活動しているプレーヤーや受講者が集っている。SMDを通して、全国にネットワークを広げられるのではないかと期待し、参加を決めました。
SMDを受講して得た気づきや学びは?
講師の方のお話を聞くなかで、感動した言葉があったんです。「コーディネーターや、つなぎ役にふさわしいのは、その人が現場に行くと場の雰囲気がちょっと明るくなる人」だと、コミュニティデザイナーの山崎亮さんがお話しされていて。
私もその通りだなと思ったんですが、なかなかこれを言ってくれる人っていないんですよね。同じ立場の人でないと、この大切さが分かりづらくて。
私も普段コーディネーターとして活動する中で、「場の雰囲気が明るくなる」「一緒に時間を過ごして嬉しくなる」ような感覚を、とても大事にしています。でもこれって、現場目線では重要だと分かっていても、なかなか本に載るような内容ではない。それを、コミュニティデザインの第一線を走る方から言葉として聞けたのが嬉しかったんですよね。
「私は間違ってなかったんだな」って。報われたというか、背中を押された気持ちがしました。
また、受講生の方とのつながりという点では、SMDが終わった後も関係性が続くような交流がいくつもありました。例えば、福島県で地域おこし協力隊として活動されている方に取材をして大学での授業に活かしたり、ワークショップデザイナーの方と一緒に企画を立ち上げたり、東京で地域コーディネーターをされている方に地域情報をヒアリングして私自身の転職活動に活かしたり。
SMDを通して日常生活では出会うことのないような人たちと交流でき、とても有意義な場だったと感じています。
SMDの事務局に参加した理由・取り組みは?
私が事務局として参加した背景には、「学生とSMDをつなげたい」という想いがありました。
大学で授業をするなかで、「地域でプロジェクトを起こしてみたいけど、どうすればいいか分からない」という学生がいて。「じゃあ、SMDに参加してみたらいいんじゃない?私も事務局として参加しているよ」と誘ってみたんです。
学生がSMDに参加することで、「地域でやってみたい!」と考えている企画を実現に向けて一歩踏み出せるんじゃないかと思いました。4期のプログラムは、インプットの時間よりもアウトプット重視。やりたいことの実現に向けて、アクションプランを描くという実践的なプログラムであることが、学生を巻き込んだ理由の一つです。
SMDは有料のプログラムであるため、少しでも参加のハードルを下げられたらと思い、「学割」を考案。本部の方の了承を得ることができ、学割プランが実現しました。
4期は受講生が10名という少人数プログラム。そのうちの6人が学生で、私が誘った学生が3人参加してくれました。
SMDを受講する学生の姿を見ていて、SMDに誘ってよかったと感じています。参加人数が限られているため、一人ひとりに対しての対応がきめ細かく、その人のやりたいことに向けてじっくり壁打ちしながらアクションプランを練り上げていく。大学では授業となると一人ひとりと時間をかけて対話するのは難しいこともあり、学生にとっても価値のある場だったのではないかと思います。
SMDが、現在の活動にどう活きている?
具体的なお話からすると、SMDの運営そのものに影響を受けた場面がありました。運営って一般的には固定の事務局メンバーがいて、打ち合わせも参加必須で、枠組みがカタイような印象があったのですが、SMDの事務局や運営は「風通しのよさ」を感じたんです。
事務局に参加しているメンバーは、私含めてそれぞれ職に就いている人たちだったので、なかなか打ち合わせに参加できなかったり、コアに関わることが難しい場面もあったりしました。
それも受け入れてくれる本部の方々の「出入り自由」な雰囲気づくりというか、「流動的」な状態でありながらも、やるべきことはきちんとかたちにしていく運営力に、私自身学びがありました。
手放せるところは手放しつつも、グリップすべきところはちゃんとつかんでおく。
この運営のあり方を、学生と進行しているアール・ブリュット、まちなか演劇のプロジェクトで実践してみたんです。結果、手放しすぎたなと反省した場面はありつつも、うまくいったこともあって。これまでとは違う運営にトライできた経験は、今後の活動にも活きてくると感じています。
また、SMDを通して知り合った受講生の方たちとは今もゆるやかにつながっています。SNSを通してみなさんの活動や活躍ぶりを見ると私まで嬉しくなりますし、ほのかな「応援の輪」を感じて、励まされたような気持ちにもなりますね。
最後に、私にとって「ソーシャルデザイン」とは何かと考えてみたら…「ソーシャルデザイン」を「社会・課題解決」と訳した時に、社会制度や仕組みを変えたりと、枠組みを整えることがこれまでは「主流派」だったと思います。でも今は、地域で活動する個人の動きや日常を含めた営みも、「ソーシャルデザイン」だと感じることがあって。
レールに乗っかるような生き方・働き方ではなく、自分のありたい姿や進みたい道を自ら描き、築いていく。そんな人が今、地域で動いているし、「本当に生きたい社会をつくる」ことにつながっている気がします。
SMDは、多様な生き方・働き方をしている人たちが集まる「いい意味でごちゃまぜ」の環境でした。それぞれの考え方、価値観が重なり、刺激を与え合える場だったと思います。
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