【国道の謎】 滅した港国道の地図探索 ~国道350号:新潟市の万代島区間~
国道350号は昭和50年4月1日に国道指定されました.日本で最多国道起終点の一つである新潟市の中央区・本町交差点からはじまり,文脈上では「新潟港」から佐渡汽船で佐渡島へわたり,そして再び海上区間を経て上越市の直江津港へもどる「海上国道」となっています.
ところが,新潟市内では他の国道との重複区間はありますが,単独区間が存在せず,したがって,国道350号のおにぎりは新潟市には存在しないことで知られています.
新潟市内の失われた「単独区間」
かつては,新潟市の万代島区間に単独区間が存在しました.万代島は,今は朱鷺メッセの会議場があり,学会などの国際会議なども多く開かれています.もしかすると,知らずのうちに旧国道を歩んでいる方もいらっしゃるかもしれません.
そのルートは地理院地図(「昭和58年二改 昭和60年発行」)で確認することができます.
当時の様子を今昔マップの二面図で対比したのが下記の図.「昭和60年発行」の地理院地図と国道指定の頃の昭和49年~昭和53年の航空写真との対比です.
図:「昭和60年発行」の地理院地図と国道指定の頃の昭和49年~昭和53年の航空写真との対比(今昔マップより)
地理院地図(昭和60年発行)では,国道345号からの分岐して貨物線の踏切を2つわたり,信濃川で直角に折れて万代島の北端へ伸びていることが、2つの(350)の刻印によってわかります.
対して、航空写真(昭和49年~昭和53年)では,そのような道はみあたりません.影時期が10年ほど時代をさかのぼっているためでしょう.この間に新たに新設されたことがうかがえますが,それでも指定された時代の万代島の様子と道の線形が見えてきます.
ポイントとなるは,国道350号のキーともなる佐渡汽船のターミナルの位置関係です.今のターミナルは万代島の北端に位置しますが,国道指定の昭和50年には,現在の万代島ではなく信濃川をはさんで対岸の下大川前通,信濃川左岸地区にありました(※).信濃川右岸の万代島にターミナルが竣工し移転したのは昭和56年のことです.
※移転前の佐渡汽船のターミナルは、『トラック野郎シリーズ』で記録されているとのこと。(改めて『トラック野郎シリーズ』は旧道トレースにおては、考証のための貴重なロードムービーといえるでしょう。)
http://takizawanaoki.web.fc2.com/ichibanboshi5.html
では,そうなると国道指定の昭和50年からターミナル移転までの昭和56年の間,国道350号はどこを通っていたのでしょうか.一つの仮説は,新潟市のシンボルともなっている萬代橋を渡らず,その手前で折れて旧ターミナル(下大川前通)に向かっていたのか.それとも,別の仮説としては国道7号の重複区間として埋もれていたのか.
国道350号の万代島内の単独区間廃止に至った経緯
wikiによれば港湾法扱いの港湾区域としての管理区分となり,またその一帯の再整備によるものだそうです.
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%81%93350%E5%8F%B7
国土地理院の1/25,000の図歴でみるかぎり,1996/05/01(平8)発行までは国道の着色の影が見えますが,2002/06/01(平14)発行では消えております.単独区間の消滅はミレニアムを跨いだあたりでしょうか.
消えてなくなったはずの国道350号の単独区間は,ところが,最新の「新潟市」のオンライン道路管理台帳では万代島の朱鷺メッセの前の道路に「国道350号」と表記がありました(下図).
写真はその付近で撮影した「国道350号」です.
https://www.city.niigata.lg.jp/.../doroni.../mouzuindex.html
政令指定都市であれば本来は国道350号は市管理の対象となりますが,この「国道350号」と示された道は管理としての着色はされていません.(万代島は港湾法の港湾区域として、現状、この区域内の道路は港湾道路扱いで「新潟市」ではなく「新潟県」の管理となっているためでしょう.)
ともあれ、道路の台帳上は「国道」として存在しているのであれば、新たな発見! 祝復活? 誤植でないことを祈りつつ.
もう一つの仮説
現在、明治国道での比定を楽しんでおりますが,中山道ともなっている明治国道5号の終点は新潟港となっています.これは,旧税関があった場所であることが考えられます.
明治国道の視座からは,横浜港の国道133号と同じく,国道350号の道筋もかつての旧明治国道筋を辿っていたのではないかと考えられ,1983年のエリアマップは、その残影を映し出している可能性があります.
また,本来ならば新潟港の格からすれば港国道になってもおかしくないもの.ところが,不思議な事に昭和28年の二級国道指定では新潟港は外れました.その意味では国道350号は港国道を補間しているようでもあり,また幻の港国道とも思えてなりません.