新規事業に向く資質③見えないものを観て、ものごとを抽象的に構想できる
「新規事業に向く資質」の特徴3つ目は、見えないものを観て、ものごとを抽象的に構想できることです。
新規事業の企画は、人々の様子や社会の流れ、市場動向などを洞察して不合理や機会を見出し、それに対応すべく離れた領域を越境して繋いで案を紡ぎ出し、顧客を巻き込みながらインサイトをもとに新しい顧客価値や事業構造を再設計し、その全体像を統合して構想することです。
イノベーションは全く何もないところから新しいものが生み出されるのではなく、既存のもの同士の過去にない新しい組合せ=新結合 と言われます。見えないものを観て、ものごとを抽象的に構想することは、まさに新結合を考え出すことでもあります。
新結合を考え出せる人は、新規事業に向く資質の持ち主です。 新結合は、既存のもの同士の”思ってもみなかった”新しい組合せがポイントです。
思ってもみなかったもの同士を組み合わせるには、目に見える”具体”同士では難しく、ものごとを”抽象的”に解釈して”構造的”に捉え、別業界のあれは使えそうと繋げたり、別業界のあの構造は当てはまるのではないかとアナロジーで考える能力が必要です。
例えば自社の強みを活かす際も、目に見える”具体”レベルではなく、強みを生み出す”構造”や背景を抽象的に捉えることで、別領域に転用可能な強みとして用いることができるようになります。
新結合を生むには、抽象化能力に加え、離れた領域の多種多様な情報や事例、ビジネスモデルやノウハウを大量に知っている必要があります。
離れた領域の情報は、自社とは異なる業界の情報や、自分の普段の仕事とは関係ない情報です。仕事とはなんら関係しなさそうな情報も含みます。そのような離れた領域の情報は、会社の仕事を真面目にコツコツやっていても、情報収拾がなされることはありません。
多種多様な情報を得る前提には、様々なことに興味が湧く、底なしの好奇心があります。それを知ればメリットがあるという打算的な思考ではなく、純粋に知りたいと思う知的好奇心。
誰に頼まれるでもなく、自らの内なる好奇心に従って、10年20年と収拾されて自らに蓄積された雑多な情報が、思ってもみなかった新しい組合せの源です。
自らの頭に浮かぶ新しい組合せを起点に、何かしらの形に組み上げるのが構想力です。ただの不思議な組合せを、その周辺観点も考慮し、ビジネスの型を意識してトータルに組み立てる能力は、新規事業で必要とされる資質です。