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ローエンド型破壊的イノベーション:日本の8大成功事例

「ローエンド型破壊的イノベーション」は、クリステンセン教授が、名著「イノベーションのジレンマ」で提示した「破壊的イノベーション」の2類型のうちの一つです。
「ローエンド型破壊的イノベーション」の平成時代の8大成功事例を説明します。

■「ローエンド型破壊的イノベーション」とは

ローエンド型破壊イノベーションは、市場でシェアを持つ既存優良企業の高品質・複雑商品に対して、既存のものと違う画期的な技術革新やビジネスの発明を通じて圧倒的に低価格な商品を開発し、既存企業のハイエンド商品が軽視していたローエンド顧客市場を開拓・参入するタイプのビジネスイノベーションです。
既存優良企業が軽視するローエンド市場でシェア獲得し、その業界における地位をローエンド側から徐々に確立します。商品ラインナップを拡充し、商品やビジネスに改良を加えて洗練させ、じわじわとハイエンド市場を侵食し、既存優良企業のビジネスを真綿で首を締めるように破壊していきます。
そのようにローエンドから市場を切り開くタイプのイノベーションです。

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■ローエンド型破壊イノベーション 8大成功事例

平成時代の30年(1990年〜2019年)は、失われた30年と言われます。
確かに1990年頃の時価総額の世界上位は日本の銀行が占めてましたし、日本の家電や半導体は世界を席巻していた気がします。鉄は国家なりでしたし、小売業の元王者の百貨店のピークは1991年だそうです。

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30年減り続けに見える一方で、1980年代後半のバブル値上がりし過ぎに勝機を見出し、「ローエンド型破壊イノベーション」で攻め入り、平成時代の30年成長し続けた会社もあります。

①ユニクロ

1998年に原宿店とフリースで一気にブレイクしたユニクロ。
私の地元にもあり、中学時代(1990年代前半)に「安い、ボロい、ダサい」から買いたくないと思っていた記憶があります。
それが1990年代後半頃から、安くて、そこそこ良い品質に。製造小売で攻め、東レとのパートナーシップで素材開発まで手がけることで、本州最西端から攻め入り、国内のアパレル勢力図を一気に塗り替えました。
平成初期にはこの世の春を謳歌していた大手アパレルメーカーや百貨店を、ローエンド型破壊で、奈落に突き落としたのがユニクロです。

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②ダイソー

広島から名乗りをあげたダイソー。
「100円SHOPダイソー」のチェーン展開を本格化したのがハブる崩壊直後の1991年。なんでも100円、お手本のようなローエンド型破壊イノベーションで、スーパーマーケット業界や百貨店業界の売上を下から喰っていったのがダイソーです。

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③ニトリ

北の大地から攻め入ってきたのが、お値段以上のニトリです。
2006年に東京進出し、リーマンショックに揺れた日本列島に、値下げ宣言を10回以上実施。デフレ戦争を仕掛けて一気にシェアを拡大しました。
1991年に市場規模ピークだった家具業界や、95年頃から市場縮小していたスーパーマーケット業界を、ローエンド型破壊イノベーションで更に追い詰めた主犯格がニトリです。

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④アイリスオーヤマ

東北地方の首都仙台から、全国制覇を狙うのがアイリスオーヤマ。
2009年に家電事業に本格参入後、多くの大手家電メーカー技術者を採用。今やアイリスオーヤマ単体売上の6割以上を家電が占めるほどに。
ユーザーインの商品開発で、そこそこ良い品質で安い家電商品を大量に量産します。

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⑤スシロー

衣食住の「食」でも、ローエンド型破壊イノベーションが進展。高級料理の代名詞の寿司をローエンド破壊したスシロー。あきんど大阪から全国制覇を狙います。
「誰が握ったのかわからない寿司なんて」という寿司職人の常識に反して、そこそこの美味しさでお財布に安く、広く庶民が食べれるようになった回転寿司は、ローエンド型破壊イノベーションの代名詞で、その業界筆頭格のスシロー。

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⑥オープンハウス

衣食住の「住」で、ローエンド型破壊イノベーションを仕掛けたのが「東京に、家を持とう」のオープンハウス。
ローエンド型破壊イノベーションで、群馬生まれの荒井氏が「東京の戸建て高すぎやろ、真面目に働く庶民に買えへん」と、1996年に創業し、今や新築戸建て住宅のトップ級ビルダーに上り詰め、住宅業界で勢力図を塗り替えました。土地仕入から販売まで内製化する製造小売モデル。古い戸建てを買い取って解体し、そこにペンシルハウスを3棟立てるという必殺技で、東京に戸建てを持ちたい消費者のハートと懐をがっちり掴んだオープンハウス。

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⑦カーブス

ローエンド側破壊イノベーションは、小売・メーカー領域のみならず、サービス業でも。オトナ女性のライトフィットネスで、業界に風穴を開けた風雲児がカーブスは、アメリカテキサス流を日本に持ち込みました。
平成時代は、フィットネス業界全体は伸びた業界ではあるものの、大手が苦しむ中で、リーズナブルプライスで一気に大手の一角にのし上がったカーブス。

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⑧QBハウス

髭剃りやシャンプー要らんから、早く、安く髪を切るQBハウス。安く提供できるように、カット以外のプロセスを簡略化するオペレーションを徹底的に突き詰めたローエンド型破壊イノベーションの成功事例。

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■平成時代 「ローエンド型破壊的イノベーション」の実態

平成時代のローエンド型破壊で、伝統企業を圧倒した新興企業(今や業界大手)は、みな最初はローエンドに安かろう、そこそこよかろう品質で参入し、 伝統企業の売りとは異なる価値軸で訴求。
ビジネスモデルなり、提供モデルなりの差別化を通じて、一気に存在感を高め、そして徐々にハイエンド側に品質を高めるという「ローエンド型破壊的イノベーション」の教科書通りの攻め方でした。
その多くは1990年代にビジネスの型が作られており、Beforeインターネット・Beforeスマホ時代のビジネスです。平成時代のローエンド型破壊イノベーションは、EC市場やメディア・コンテンツ業界を除き、デジタル活用はあまりなされていません。

2010年代にスマホが浸透し、きっと令和の時代は、software will be eating worldを地でいく「ローエンド型破壊的イノベーション」が、様々な業界で現実のものとなるでしょう。


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