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初期アイデア案のスジの良し悪しを判断する【初期アイデア創出ステージ】

新規事業の初期アイデアたる「顧客・課題・ソリューション・ビジネスモデル・単価・顧客数」のセットを考え、検証方法の目処をつけたら、次の「顧客と課題定義ステージ」に進みます。
新規事業の検討は1人で進めることもあれば、複数メンバーで複数アイデア案を考えることもあるでしょう。いずれの場合も、初期アイデアを次ステージに進めるか否か選別する必要があります。
選別の仕方で最もやってはならないのは、上司や新規事業部門責任者が「しっくりくるかどうか」で選別すること。ある人の好みや気分で選別してうまく行くことありません。更に、担当者も上司の顔色を伺い、上司のお眼鏡に叶う事業アイデアを考えるようになり、新規事業推進として最悪の状態になってしまいます。

初期アイデア選別は一定の基準を設けて「スジの良し・悪し」で捉え、スジの悪いものを振り落としましょう。初期アイデア創出ステージの段階では「スジの良いアイデアがどれか」はわかりません。しかし「スジが悪いアイデアがどれか」はわかります。複数チェックポイントを設けて、スジが悪い初期アイデアをふるい落としましょう。

●顧客・課題・ソリューション・ビジネスモデル・単価・顧客数が適切な粒度で考えられているか

初期アイデア創出ステージで考える「顧客・課題・ソリューション・ビジネスモデル・単価・顧客数」セットは、仮説という名の妄想であり、曖昧な状態で構いません。但し「曖昧でも考えてある」状態と「そもそも考えてない」状態は異なります。「顧客・課題・ソリューション・ビジネスモデル・単価・顧客数」のいずれかが考えられてない案は、次のステージに進めるのではなく、再度考え直す必要があります。
初期アイデア創出ステージでは、このくらいの粒度で初期アイデアを考えましょう。
・概要:子ども向けの、動画用いた教育サービス。
・顧客:大都市圏以外に在住する中高生(の親)。
・課題:良い塾は大都市に集中し、何より高い。地理的理由・経済的理由により、多くの中高生は良質な学習支援にアクセスできない。
・ソリューション:良質な学習塾の授業を、オンラインで受講できるウェブサービス。いつでも、どこからでも、どのデバイスでも利用できる。塾講師は、元有名講師を想定。
・ビジネスモデル:ECサイトと同じ形で、コンテンツ課金。
・単価:1授業あたり1000円くらい?・顧客数:中高生人口は600万人。

●具体的に顧客の顔や名前、社名を思い浮かべることができるか

「誰の、どういう課題に取り組むのか」は、新規事業に取り組む際の「基本のキ」の字です。その顧客を具体レベルで考えられていない初期アイデアはスジが悪いです。
初期アイデア創出ステージでも、具体的に顧客の名前や顔、社名が思い浮かべられるレベルまで、顧客を具体化しましょう。そうでなければ、次のステージで検証しようがありません。例えば「20代・男性」のように属性セグメントで切り取るのは、スジの悪い典型例です。
新規事業案の着想には様々なきっかけがあり、そこに良し悪しはありません。しかし自社技術起点、市場分析起点、未来からの逆算思考、ビジネスモデル起点、流行中心発想で新規事業アイデアを考え始める場合は特に、取り組む顧客不在になりがちのため注意が必要です。
市場調査や分析起点のアイデア検討は、縦横の2軸マトリクスを書いて「安価かつ品質の良い市場がチャンス」のようになり、顧客特定含めて具体性が何もない内容・机上の空論になりがちです。市場分析起点で取り組む場合に、具体的な顧客が思い浮かぶまで考える必要があります。
未来予測からの逆算で検討する場合も同様です。未来を想像して、そこからバックキャスティング的に考える場合も、今の顧客まで引き戻して考えましょう。仮に未来の顧客がお金を払い得る新規事業を開発できたとしても、今の顧客がお金を払ってくれなければ事業継続は不可能です。

●ビジネスモデルが不在となっていないか

ソリューションやビジネスモデル、課金モデルが1つに定まっていない初期アイデアはスジが悪い証拠です。
「新プロダクトの直接販売があり、広告ビジネスもあり得る。データが集まったらデータ販売も視野に入れる」のように焦点が定まっていないものは、深く考えられていない典型的な状態です。
は次ステージに進めようがありません。
初期ビジネスモデルは1つに絞り、顧客・課題・ソリューション・ビジネスモデル・単価・顧客数のセットを適切な粒度で考えましょう。

●事業収支がそもそも破綻してないかどうか

「単価・顧客数」含めた事業収支を簡単に計算し、破綻していないか確認しましょう。
新規事業は、うまくいったらどこまで成長するか初期アイデア創出段階で見通すことは不可能です。その一方で、簡単な収支計算段階で破綻しているものは、その後確実に破綻します。
「単価×注文数×注文頻度・継続利用期間」で計算し、ざっくりコストも比較をすることで、収支計算が破綻してないかどうか、新規事業で狙う事業規模に達する可能性がゼロではないか確認しましょう。ざっくり収支計算の時点で破綻していたら、その初期アイデアを練り直しましょう。
このステージでは緻密な計算は不要で、小学生の算数レベルの話です。そもそも計算自体ができなければ、仮説妄想レベルでさえ、ビジネスモデルや想定顧客、ソリューション案が考えられていない可能性が高いです。単価も綿密に算出する必要はもちろんなく、他業界の類似サービスや業界相場観、既存の別手段などを参考にします。

●自社の中長期ビジョンや会社の方向性と絡むかどうか

新規事業開発のステージを進める際など「なぜ、我が社がそれをやるのか?」と何十回も問われます。極めて単純かつ当たり前の質問です。その質問に答えられない事業アイデアは、スジが悪い場合が多いです。
そこが曖昧な状態なままで初期アイデア創出ステージから次に進めたとしても、一定の事業投資が必要な判断で却下される可能性が高いです。
新規事業開発は自社の未来事業を創る営みともいえ、会社の中長期ビジョンを何らかの形で具現化するものであるのが望ましいです。新規事業リーダー1人で創れるものではなく、特に事業ステージが進むにつれて多くの社員を巻き込みながら事業拡大させるものです。その事業に「自社らしさ」の片鱗を感じられるほど、多くの社員が共感し、力を貸してくれるようになります。

■次ステージに進める事業案の選別で注意すべきこと

初期アイデア選別は一定の基準を設けて「スジの良し・悪し」で捉え、スジの悪いものを振り落とします。このステージ時点では、どの初期アイデアがうまくいくか見通すことは不可能であり、スジの悪いアイデア以外は次ステージに進めるのが好ましいです。
ただし、投下リソースや人員の都合などにより、次ステージに進めるアイデアをより絞る必要のある会社はあるかもしれません。初期アイデアを選別する際は、いくつかの点に留意しましょう。
上司や新規事業部門責任者が「しっくりくるかどうか」で選別してはならないことに加え、この段階では、事業アイデアやプロダクト案自体の評価をするのは避ける方が賢明です。初期アイデア創出ステージでは仮説の塊であり、何がうまくいくかどうかわからない状態です。あるプロダクト案の良し悪しを上司や社内の責任者が決めることは不可能です。
儲かるかどうかで判断するのも避けるべきでしょう。新規事業も将来的に利益創出してもらう必要はあるものの、うまくいくかどうかわからない初期アイデア創出ステージで、儲かるからという(思い込みの)理由で選別するのは悪手です。「儲かるから」という理由で立ち上げる新規事業は、それ以外の意義や動機が希薄な場合が多く、立ち上げ初期にうまくいかないと分かると、すぐ事業撤退することになる可能性が高いです。
このステージでは、一つ一つの情報が正しいのかと、逐一検証しないことも大切です。このステージ時点では曖昧な状態で構わず、保守本流事業のように一つ一つの情報が確かかを調べてしまっていては、いつまで経っても初期アイデアさえ作れません。この次のステージで、本当に顧客がいて、本当に課題があり、お金を払って解消したいくらいのペインかどうか、検証しましょう。

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