新規事業リーダーは「新規事業の経験者」である必要性
新規事業リーダーの任命にあたり、「新規事業に向く資質」と同様に、もしくはそれ以上に重要なのが「新規事業の経験」があることです。
新規事業は、前任者からの業務引き継ぎやOJTがありません。会社に知見がない未知の領域に対して、ゼロから考えて試行錯誤をするため、必然的に多くの失敗をすることになります。
そのような実務経験や手痛い失敗を通じて、その人なりの新規事業の勘所や嗅覚が磨かれ、新規事業における判断基準や事業センスといった実践知が「身体に刻み込まれて」いくのです。
初めての新規事業、2回目、3回目と、経験回数が増えるほど、自身の中に失敗経験や判断基準が積み上がり、新規事業の勘所や嗅覚が磨かれます。加えて、社内での企画や予算の通し方などの業務に習熟し、新規事業リーダーに相応しくなっていきます。
座学の知識以上に、経験を通じて身につく実践知や業務習熟が重要なのは、新規事業に限ったことではなく、会社のあらゆる業務と何ら変わりありません。
営業やマーケティング系業務も、企画設計や品質保証・検査業務も、研究開発や製造生産管理も、経理や人事も、接客や調理や施術業務も、会社のあらゆる業務は、実務経験を通じて業務に習熟し、様々な状況に直面して試行錯誤を通じた結果として実践値が蓄積されるものです。まずは前任者の業務をそのまま引き継ぐ。一定範囲の業務を担当し、その業務領域のリーダークラスになる。異動して隣接領域の業務経験も積み、やがて係長になり課長になる。
実務経験を通じて、担当業務における大切なことや勘所が磨かれるのではないでしょうか。
いやいや、そのような保守本流事業と新規事業では違うのではないか、と感じるかもしれません。
実は、新規事業の経験が豊富な人にとっては、新規事業の仕事は「いつも通りの業務」になっているのです。
新規事業の仕事を複数回経験すると、未知の領域に取り組むのはいつも通りのことで、必然的に試行錯誤が必要なだけだとわかってきます。
社内に答えや知見がないから新規事業なのですから、社内への働きかけと同程度以上に、いつものように顧客の未解決課題に向き合い、社外に知見や連携を求めようと動くだけです。
社内に対する対応も、新規事業の経験を積むほど慣れています。保守本流事業の人がどう考えがちか、過去の延長線上でものごとを捉えがちな大半の本流事業の部長や役員とどう折り合えばよいか、変化を嫌う大半の従業員に対してどう振る舞えば良いか、誰は味方につけて誰はしばらく放っておけばよいか。
新規事業を1度経験しただけでは、このような組織力学は見えませんが、3度4度と経験すると「いつか見た光景」が増え、いつものことになっていきます。
新規事業のプロである守屋さんも、量をこなす重要さを強調します。
https://type.jp/st/feature/5068/
新規事業開発で活躍するための答えはすごくシンプル。常に走りながら考えること。量稽古をすること。この2つをやりきる、ただそれだけ。
ベットTECHベンチャー PECOの岡崎さんは、創業前に勤めた会社で、沢山の新規事業を担当されたそうです。
https://voice.aktsk.jp/1665/
新規事業立ち上げが3つ目くらいになってくると、やっと少し考えられるように。
新規事業未経験な人を、新規事業リーダーを「抜擢」する会社もあるそうですが、新規事業の経験が乏しい会社ほど、なぜか新規事業の経験有無を気にせず、資質・素養を過度に重視しがちなようです。
一方、新規事業を何度も経験し、苦労した経験がある人や組織ほど「新規事業の経験者」であるかどうかを重視します。実践知が極めて重要であると、経験を通じてわかっているからです。
新規事業リーダーが、新規事業の未経験者で良いはずがありません。「新規事業の経験」が複数回ある人を、新規事業リーダーに任命しましょう。
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