新規事業開発7つのステージ【後編】

新規事業開発は様々なステージがあり、各ステージでやるべきことは異なります。

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④プロダクト具現化ステージ

プロダクトを開発して具現化させます。並行して、事業として必要なあらゆることの検討と構築を行い、販売開始に至れることを目指します。
プロダクト開発・ソリューション具現化は、最初から100点満点を目指すのではなく、販売開始に至れる必要最小限の機能(MVP:Minimum Viable Product)を実装し、まずベータ版の具現化を目指します。 新規事業は、事前にどれだけ綿密な準備をしたとしても、実際に売れるか売れないかは、売り始めてみないとわかりません。事前にこれが100点と思った内容が、求められるか否かもわかりません。そのため、失敗が決して許されない一部の業界や事業を除き、スピード重視でMPV開発し、早めに市場投入して顧客の反応やフィードバックを得るのが賢明です。
プロダクト開発以外にも、やるべきことは山のようにあります。プロダクト提供に伴う、各種の業務プロセスやルール構築、パートナー開拓や契約締結、規約などの法務面や会計面の検討と社内調整、販売開始後の事業運営リソース確保や製造部門との社内調整、事業運営担当者の教育やマニュアルの整備、販路や流通戦略検討と調整、営業方法やマーケティングプランの検討など、販売開始に至るまでに整えるべき全ての検討と構築を進めます。

このステージでよくある失敗は、販売開始時の機能とプロダクト内容を絞り込めず、開発コストが嵩み、スピードが遅れてしまうことです。顧客と顧客課題の定義ステージで、解決すべき問題をシャープに特定できていないと、あの機能もこの機能も盛り込みたいとなりがちです。
またプロダクト企画ステージでプロダクト案が十分に検討されていないと、具現化ステージの実装段階で問題が噴出することがあります。技術難易度やコストなどが原因で具現化できないとこのステージで判明してしまうと、厳しい判断を迫られることになります。
販売するプロダクトやソリューションを実装でき、プロダクト以外の諸々の準備も整ったら、出荷判定・事業開始判定の判断を仰ぎます。 この判断は、新規プロダクトを実際に販売開始するための重要な判断です。通常は経営会議やそれに準ずる意思決定の場で判断がなされます。

⑤事業立上げステージ

新プロダクトの販売開始おめでとうございます。
事業立上げステージに至ることさえできずに、消滅してしまう新規事業活動は数知れず。新プロダクトが販売開始に至れたことは大きなマイルストーンの達成であり、ようやく新規事業のスタート地点に到達です。

事業立上げステージでは、新プロダクトの販売を開始し、市場や顧客の反応を通じて事業仮説の検証とプロダクト修正しながら新事業を離陸させ、成長ドライバーを発見することを目指します。このステージの前までは、新規事業「開発」であるのに対して、このステージは新規事業の「立上げ」です。
ほとんどの新プロダクトは、販売開始したからといって勝手に売れ始めるのではありません。他社の後追いモノマネプロダクトであれば、大企業の知名度やブランド力により売れる場合もありますが、新規性の高いプロダクトほど、いきなり売れることはありません。事業企画ステージの調査では「買う」と言った人が、実際には買わないことは頻繁に発生します。
新プロダクトを販売開始する前までは、新規事業開発に関するあらゆる活動や内容は、ただの仮説と妄想の集まりに過ぎません。新プロダクトを販売開始して初めて、想定顧客含めたユーザーからの反応が得られ、顧客や非顧客の実情報を収集でき、事業仮説を検証する実データを収集できるようになります。そのような情報を通じて、事業仮説の検証と修正と新プロダクトのブラッシュアップを繰り返します。
何百もの試行錯誤と検証と失敗、新プロダクトの機能拡充などを通じて、「買ってもらえない」を「買ってくれて、喜んでくれる」に至らせ、「どうして買ってくれるか」のメカニズムを検証するのが、事業立ち上げステージの目的です。このステージの目的は、売上ではありません。

事業立上げステージでは、自分たちが創り出した新プロダクトが顧客に受け入れられる喜びを感じ、思うように事業が伸びないことに苦悩し、なんとかしようと打ち手を講じ続けることが求められます。新規事業の修羅場体験であり、なんとか新規事業を立ち上げようと試行錯誤する経験が、ビジネスマンとしての大きな成長に繋がります。
事業を離陸させて次ステージに進めることができても、苦労の末に事業撤退となるとしても、新規事業の様々な実践知が担当者の体に刻まれます。

このステージでよくある失敗は、販売開始のタイミングで、事業主幹を別部門に移管してしまうことです。別部門に移管された結果、実データを通じた検証と修正がなされなくなってしまいます。
「新プロダクトは売れるはずだ」と考えてしまい、いきなり多くのリソースを投入し、大々的な営業展開やプロモーション展開してしまうのも典型的な失敗例です。大きくリソース投入するのではなく、まず事業仮説の検証と修正のための活動を行うべきです。
事業立上げ活動を通じて、実際に商売が成立したか、検証と修正を通じて顧客課題と新プロダクトがフィットしたか、成長のための拡大方法が見えたか、この3点が概ねクリアできたら、次のステージに移ります。

⑥事業初期成長ステージ

施策の実行と検証の試行錯誤を通じて、創発的に戦略や戦術を柔軟に変更しながら新プロダクトの売上を初期成長軌道に乗せ、販路拡大やプロダクトラインナップ拡充など事業拡張可能性がある状態を目指します。
事業立上げステージで、検証を通じて新プロダクトをブラッシュアップし、顧客課題にフィットするものに仕立ることができても、それだけで一気に事業成長するわけではありません。事業初期成長ステージでは、プロダクト以外の諸々の活動や業務領域についても試行錯誤を通じて、事業が成長できるようにする必要があります。
例えば、新規の顧客獲得のための様々な施策を試し、効果ある施策を見出す必要があります。せっかく顧客獲得してもリピート頻度が低かったり、継続利用期間が短い場合は、その原因を捉えて様々な手段を試し続けて対処する必要があります。より多くの顧客獲得のために販路拡大の戦術を練り、それを押し進める必要があります。コアターゲット層から顧客層を広げるに当たり、更なる機能拡充やプロダクトラインナップ拡充が求められます。後発で参入してきた別企業に対する競合戦略を練る必要があります。プロダクト以外の諸々の活動や業務領域について、試行錯誤しながら押し進めます。
事業初期成長ステージも、思うように事業が伸びないことに苦悩し、なんとかしようと打ち手を講じ続けることが求められます。事業立上げステージ同様に新規事業の修羅場体験であり、なんとか事業を伸ばそうと試行錯誤する経験が、ビジネスマンとしての大きな成長に繋がります。

このステージでよくある失敗は、このステージは試行錯誤が必要だと理解しない社員が担当してしまうことです。このステージに至る頃には、新規事業チームは10人を超える場合が多いですが、チームメンバーの大半は新規事業の資質ある人で構成しましょう。
よく、起業家は「0→1」が得意な人が多く、大企業サラリーマンは「1→100」が得意な人が多いと言われますが、これは間違っています。
大企業サラリーマンの大半は「100→100」が得意な人が多く、「1→100」経験者は希少です。このステージでも、新規事業の資質ある人や「1→100」経験者が中心のチームとするべきです。
事業が成長状態に入り、確度の高い事業拡大方法や施策群が見いだせたら、次のステージに移ります。「確度の高い事業拡大方法」とは、このようにお金や人員などリソースを投入すれば、このくらいのリターンが期待可能であると、ある程度予測可能な状態に至れることです。

⑦事業安定成長ステージ

更に売上を伸ばし、業務の標準化や組織的な運営体制を進め、新規事業部門から本流事業部門に事業主管を移しても、継続成長ができる状態を目指します。
事業安定成長ステージは、お金や人員などリソース投入すると会社に判断されたステージです。反復可能な施策が大規模に実施され、大企業の組織力を活かしたマーケティング営業販売を展開し始めます。

このステージでよくある失敗は、リソース投入に伴い売上が増加する裏で、効率が悪化して赤字体質化してしまうことです。マーケティングや営業投資を強める傍で、本流事業同等の事業管理を行い、業務の標準化や自動化による効率性の維持を推進しましょう。
成長率を維持したまま売上を更に伸ばし、各種業務や施策の標準化を進めることができれば、いよいよ新規事業の枠組みからの卒業です。既存の本流事業部門への事業移管がなされる段階です。新規事業の事業安定成長ステージを終える頃の売上規模は、起業家がゼロから新事業を立ち上げて、IPO(株式公開)を具体的に目指せるくらいの規模感でしょう。新規事業開発は素晴らしい大成功です。

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