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【ショートショート】スター論
スターがいた。
誰しもがそのスターの真似をする、憧れのスターだった。
スターの一挙手一投足に注目し、スターが右を向けば右に、左を向けば左に、みんなが従った。
スターの身につけるものは全て売れた。
服はもちろん、カバンに帽子、靴にアクセサリーまで、スターが選んだものは全てヒット商品となった。
世間はスターにもっと近づきたいと、スターの感情まで真似をした。
スターが笑えば笑い、悲しめば悲しみ、怒れば怒った。
スターが意見を言えば、人々は従った。
法案への反対など、国家をも動かした。
スターは考えた。
「今の自分なら世界を支配できる」
スターは大統領になった。
そして、敵国に核兵器を使うと宣言した。
しかし、人々は愚かではなかった。
スターは逮捕された。
人々は手のひらを返したように、スターを処刑しろという声を上げた。
なすすべもなく、スターは処刑された。
スターは文字通り、星になり、伝説となった。
そして、また、新たなスターが生まれる。
人々はスターを生み出し、そして、消費する。
スターがスターに値しなくなれば、人々はそっぽを向く。
別のスターに鞍替えする。
人々は、スターを持ち上げているだけでなく、スターの人生をも牛耳っている。
どちらが強いのかは、言うまでもない。
終