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【アーカイブ配信】経済産業省担当者が解説!最新エンジェル税制/エンジェル・カンファレンス2023

こんにちは!スマートラウンドの田中です。
2023年3月31日に、エンジェル投資家向けのイベントとして4回目となるエンジェル・カンファレンス 2023を開催しました!

今回は「エンジェル投資家最前線」と題し、経済産業省の担当者によるエンジェル税制改正に関する解説や、「エンジェル投資家のベストプラクティス」として、Notionなどにも投資したThomas McInerney氏、メルコイン代表の青柳直樹氏、元バスケット代表の松村映子氏をお招きしたセッションから、エンジェル投資の実務に迫りました。

本記事では、カンファレンスの前半セッションである「経済産業省が解説する最新エンジェル税制」のアーカイブ動画と資料、イベントレポートについてのご案内をお届けします。

※後半のエンジェル投資家によるセッションはオフライン参加者限定の実施のため、配信の予定はありません。

当日の動画はこちら!

セッション関連資料

※録画配信・資料配布は「経済産業省が解説する最新エンジェル税制」のみです。
※LPS部分の資料については、経済産業省の都合により資料の一部をカットしております。

開催背景

事業の見通しが不透明な創業直後のスタートアップにとって、エンジェル投資家による投資は、事業の可能性を模索する上で欠かせない資金源となっています。日本におけるエンジェル投資を加速させるべく誕生したのが、スタートアップ企業への投資促進を目的とした、税制上の優遇措置「エンジェル税制」です。

しかし、日本におけるエンジェル投資の総額は、2019年において92億円と、アメリカの34,151億円に比べて著しく少ない状況です。(※1) こうした背景を受け、エンジェル投資の活性化を目的とし、2022年12月23日に「令和5年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。この大綱をもとにエンジェル税制が改正され、より利用しやすい制度へと変わります

※1 引用元:「令和5年度(2023年度)経済産業関係 税制改正について」 

【イベントレポート】日本経済の先行きを担う「スタートアップ育成5か年計画」

スマートラウンドの大畑です。ここからは、セッション「経済産業省が解説する最新エンジェル税制」の内容をレポートでお届けします。

2022年11月、政府は「スタートアップ育成5か年計画」を発表しました。この計画は、国内におけるスタートアップ育成の戦略とロードマップを示したもの。

はじめに、経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室室長の石井氏(以下、石井氏)より「スタートアップ育成5か年計画」の概要をご紹介いただきました。
15年以上に渡ってスタートアップ支援に従事している石井氏は、スタートアップ政策について「いま大きな波が来ている」と形容します。

(引用元:経済産業省資料)

石井氏「これまで日本政府は経済成長に重きをおいて政策を進めてきました。しかし、現在は環境問題や格差の広がり、歯止めのかからない高齢化など、様々な社会問題により、行政だけでは課題解決が難しくなっています。新しいプレイヤーの存在が不可欠な状況です。

また戦後直後に若者が創業したスタートアップは、いまや日本経済を牽引するグローバル企業へと育っています。そのことを受け、社会課題を解決しながら経済の活性化も担うスタートアップが次々と創出されるような、第二の創業ブームを作りたいと考えています」

スタートアップ育成5か年計画では、3本柱の取り組みを一体として推進しています。

① スタートアップ創出に向けた人材・ネットワークの構築
② スタートアップのための資金供給の強化と出口戦略の多様化
③ オープンイノベーションの推進

詳しくは、スタートアップ育成5か年計画の資料をご確認ください。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/sdfyplan2022.pdf

日本のスタートアップエコシステムを拡大させるためには、エンジェル投資家によるエンジェル投資の存在も欠かせません。

(引用元:経済産業省資料)

石井氏「特に、福祉や教育、地方創生など社会課題の解決に取り組むソーシャルスタートアップを盛り上げる上で、エンジェル投資家による資金は大きな支えとなります。アメリカでは、VC投資と同規模のエンジェル投資が盛んに行われており、様々なスタートアップが誕生しています。一方で、日本はエンジェル投資家によるスタートアップへの投資額が非常に少ない状況です。ソーシャルインパクトとファイナンシャルリターンの両方を期待するエンジェル投資家が増えることで、世の中を良くしていけるのではないか。エンジェル投資家のみなさんと行政が連携することでより良いスタートアップエコシステムを作っていけたらと思います」

スタートアップ支援の活性化に寄与する「エンジェル税制」

続いて、経済産業省 経済産業政策局 産業創造課課長補佐 上田氏(以下、上田氏)より、令和5年4月1日より施行されるエンジェル税制の仕組みについて解説いただきました。

「エンジェル税制」は、起業して間もないスタートアップに投資する個人投資家に対し、税制上の優遇措置を行う制度です。「投資時点」「株式譲渡時点」で優遇措置を受けることができます。

(引用元:経済産業省作成資料)

「投資時点」で受けられる優遇措置は、下記2つのいずれかです。

優遇措置A:設立5年未満の企業への投資を対象として、[対象企業への投資額 - 2,000円]をその年の総所得金額から控除できます。

優遇措置B:設立10年未満の企業への投資を対象として、対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除できます。

また「株式譲渡時点」では、対象企業の株式売却によって生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と通算(=相殺)できます。さらに、その年に通算(=相殺)しきれなかった損失は、翌年以降3年にわたって株式譲渡益と通算(=相殺)することが可能です。

エンジェル税制の仕組みについて理解したい方は、経済産業省が公開している動画(https://www.youtube.com/watch?v=k96VygoEHrM )も合わせてご覧ください。

「エンジェル税制」改正の背景と、4つの主な変更点

事業の見通しが不明な起業直後における資金調達の手段として、重要なリスクマネー供給源の役割を果たす「エンジェル税制」。今回の改正に至った背景について、上田氏は2つの理由を挙げました。

(引用元:経済産業省作成資料)

上田氏「1つは、海外との比較です。アメリカのエンジェル投資額は日本と比べて約370倍と大きな開きがあり、日本の投資額は極めて低い状況にあります。さらに、ラウンド別の投資件数の割合を見ると、プレシード・シード期への投資件数がアメリカでは43%に対し、日本は22%と約2倍近くの差があります。
もう1つの理由は、起業に失敗した時のリスクに不安を抱えている人が多いこと。特に、金銭面での負担を理由に挙げる人が多く、日本の開業率は諸外国と比較しても低い水準です。税優遇措置を活用していけば、国内における起業を後押しできるのではないか。そこで、エンジェル税制の改正に至りました」

令和5年度のエンジェル税制改正では下記の通り、4つの大きな変更がありました。

①課税繰延を非課税に
②自己資金による起業も税制の対象に
③外部から一定の比率以上の資本を調達する要件を緩和
④申請手続きを簡素化

(引用元:経済産業省作成資料)

①課税繰延を非課税に

従来のエンジェル税制には「課税の繰延」という優遇措置が設けられていました。通常、株式を売却して利益を得ると、所得税・住民税・復興特別所得税が課せられます。起業して間もないスタートアップへの再投資や自己資金での起業は課税を繰り延べることができ、繰り延べた分は、再投資で取得したスタートアップ企業の株を売却し、利益を得た時に課税される仕組みでした。

今回の改正で、自己資金による起業や、一定の要件を満たしたプレシード・シード期への投資に限り、「非課税」となりました。また、非課税の対象となる再投資分の上限は、20億円と設定しました。

②自己資金による起業も税制の対象に

これまで自己資金による起業は、実質的にエンジェル税制の対象外でしたが、本改正で制度の対象となります。

③外部から一定の比率以上の資本を調達する要件を緩和

「外部資本要件」に基づき、外部からの出資を1/6以上受け入れていることが要件に定められていましたが、起業して間もないスタートアップにとってその比率が高いという声が上がっていました。そこで、プレシード・シード期のスタートアップへの投資については1/6以上から1/20以上に緩和、自己資金による起業については1/6以上から1/100以上に緩和されました。

④申請手続きを簡略化

「書類が多くて、手続きが大変」という声に答えて、提出書類の一部を削減し、簡素化しました。

最後に、経済産業省 経済産業政策局 産業創造課課長補佐で公認会計士の長谷川氏よりファンド等を通じた投資についても一定の要件を満たした場合にはエンジェル税制の対象となることについて紹介があった上で、「エンジェル投資家へのアンケートを通して実態を把握し、さらなるエンジェル税制の改善につなげていければと思います」とコメントをいただき、セッションは終了となりました。

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