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【カタログ解説】オンデマンド交通サービス/富士通Japan株式会社

スマートアイランド推進事務局です。
2024年7月にスマートアイランド推進カタログ(以下、カタログ)を公開したところですが、実装した取組の形だけでなく、どのように官民のマッチングが生まれ、どう両者の関係性を深め、どのようにして実証・実装に至ったのか。
そうしたプロセスを解説することで、より使いやすいカタログになっていくのではと考え、カタログに掲載している事例について深掘りインタビューを行い、ご紹介していくことにいたしました。

今回は広島県大崎上島町でオンデマンド型のコミュニティバスシステムを提供している富士通Japan株式会社(以下、富士通Japan)です。


■スマートアイランド推進カタログの内容

カタログの内容は下記の通りです。

■富士通Japanと大崎上島町のマッチングのきっかけは?

富士通Japanでは、令和2年度にスマートアイランド推進実証調査が始まったタイミングで、オンデマンド交通を開発したメンバーとともに、この事業を活用して地域交通のDXに取り組みたいと考え、いくつかの自治体さんにアプローチをしていました。その際、関心を示してくれた自治体の1つが大崎上島町でした。

オンデマンドバスのサービス全体図(出典:スマートアイランド推進カタログ)

大崎上島町には、民間の路線バスを補完するような形でコミュニティバスが2台走っていましたが、2台の車両で島内全域を網羅しようと路線を設定していたために非常に複雑で、利用者として想定していた高齢者からは「路線、時刻表がわかりづらくて乗れない」という声が多く聞かれている状況でした。利用できていた方も徐々に高齢になって乗らなくなり、新たな利用者も増えない状況であったため、よりニーズに沿ったコミュニティバスへと改善が求められていました。

こうした背景のもと、令和4年度に、コミュニティバスへのデマンド交通導入に向けた実証実験が行われることとなりました。プロポーザルの結果、株式会社地域未来研究所(以下、地域未来研究所)が受託者となり、弊社は地域未来研究所と連携し、デマンド交通に取り組むことになりました。弊社は令和2年度スマートアイランド推進実証調査で大崎上島町の地域交通課題に町と共に取り組んできた経験があったため、町の抱える地域交通への問題意識に理解があり、それが企画提案の中で活かされたのだと思います。

■マッチングから実装に至るまで

令和4年度は1か月程度の実証実験が行われましたが、結果としては、学生さんを中心に予想以上に好評でその効果を実感しました。大崎上島町には高等学校が2校、商船高等専門学校が1校、中学校は町立1校、県立1校があることも背景にあって、スマートフォンを使った予約システムと相性が良かったのだと思います。寮住まいの中高生が島外へ帰宅するケースや、島内の買い物等で移動するケースといった今までに公共交通を利用していなかった利用者の多様なニーズが掘り起こされ、公共交通には珍しく土日の乗降客が多いという結果になりました。

本格的な運用を検討するため、令和5年度には町が交付金を受けて、3か月超の実証実験を行うことが決定されました。弊社はこの実証に対し、システム開発業者としてプロポーザルへ参加し、運行事業者が使いやすいドライバー用アプリの改修を提案したこともあり採択されました。令和4年度よりも長い期間であったことから、学生だけでなく高齢者等の通院や買い物の利用も増えていきました。
令和6年度からはオンデマンドバスの本格運行が開始されています。 

■実装のポイント

一般的にデマンド交通の導入にあたっては、主要な利用者が高齢者であることもあって、デマンド交通そのものを理解していただくことに時間がかかります。バス停で待っていればバスが来るという認識が強く、予約をすることに抵抗がある方も多くいます。電話するのも面倒、かといって、スマートフォンで操作することはできない、という点でハードルが高くなっており、多くの自治体で利用者をどう増やすかが課題になっています。

大崎上島町での実装のポイントは、学生の利用者が多く、スマートフォン予約のハードルを容易に乗り越えたという点が1つ目のポイント、電話予約を受け付けることにより高齢者の利便性も向上したという点が2つ目のポイント、さらに、町が高齢者向けにスマホ教室などを開催し、予約しやすい環境を整えることに注力している点が3つ目のポイントです。

また、運行を担っている地元のバス会社も、積極的に意見を出しながら町と連携して前向きに取り組んでいただいています。ドライバーの方に話を聞くと、これまでは乗客がゼロ人でもバスを走らせていましたが、オンデマンドになると確実にお客さんがいる状態で走れるので、やりがいがあると話していました。ドライバーの方の裁量もあり、デマンドの予約を見ながら、どのように走るかドライバーの方もいろいろ考えながら取り組んでいるようです。

デマンド交通を導入する前は、2台の車両を走らせていたコミュニティバスですが、現在はデマンド型2台を含む4台に車両が増えています。需要に合わせたサービスを提供することで、確実に需要の掘り起こしができていると感じています。

■交通を軸に、島の人の暮らしを支えていきたい

離島は日本の縮図と言われ、人口減少も高齢化も先んじてやってきています。交通は人が移動するためには必ず必要になるので、しっかり支えていきたいと思います。デマンド交通の予約管理システムは多くの企業が展開していますが、弊社では単純なシステム販売に限らず自動運転などを含めた広い意味の「交通」という観点で地域の課題解決に貢献していきたいと考えています。
 
 
ヒアリング対象:富士通Japan株式会社
記録:スマートアイランド推進事務局



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