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【寄稿】島コラム vol.06 いまさら聞けない島用語「一次離島と二次離島」「地理6類型」

スマートアイランド推進事務局です。
スマートアイランドに関心を持つ方に、島のことを知り、関わりたいと思っていただけるような情報を「島コラム」としてお届けしています。
vol.6は、一般社団法人離島総合研究所代表理事の上田嘉通氏による寄稿「いまさら聞けない島用語」です。vol.5では、「全部離島と一部離島」についてご紹介しました。
今回は「一次離島と二次離島」と「地理6類型」」をご紹介します。

前回の記事はこちら「いまさら聞けない島用語「全部離島と一部離島」」
https://note.com/smartisland/n/n52e4b08fda79


■一次離島と二次離島

本土から公共交通手段を使用して直接アクセスできる離島のことを「一次離島」、本土から直接アクセスできない離島、近隣の離島などからアクセスする離島のことを「二次離島」と言います。
長崎県の五島市を例にあげます。五島市は11島もの有人離島で構成されていますが、そのうち福江島と奈留島は、本土から飛行機や船で直接アクセスできるため一次離島です。一方、久賀島、椛島、黄島などは、福江島を拠点にアクセスするため二次離島です。

五島市における一次離島、二次離島(航路、航空路は主要なもの)

本土から直接アクセスできる一次離島に対し、一旦、離島を経由しないとアクセスできない二次離島。そのアクセス性の違いは、人の移動や物流に影響を与えるのはもちろん、島の暮らしぶりに与える影響も大きくなっています。
二次離島は、人口規模の小さい離島である場合が多く、商店が少ない、診療所がないといった生活に必要なインフラが整っていないことも多くあります。そのような状況のため、子どもが少なく、小中学校が廃校・休校している離島もあります。学校がないと子育て世代が住むことが難しく、ますます人口減少と高齢化が進む、という厳しい状況に陥りやすい傾向にあります。

※上記の状況は、二次離島であることが直接的な原因ではなく、人口が少なく生活インフラが整っていないので二次離島になっている(本土から直接アクセスできない)と考えるのが適切だと思っています。

■二次離島の暮らしを支援する取組み

こうした二次離島の置かれた状況に対し、新技術等を活用して改善を図っていこうという取組が進んでいます。
スマートアイランドの事例から、長崎県五島市と広島県大崎上島町の事例をご紹介します。

五島市は、上述の通り11島もの有人離島があり、その多くが二次離島です。これらの二次離島は人口が少ないために商店や薬局がなく、日用品、食品、医薬品等の購入が容易でないという課題を抱えていました。そこで、五島市に拠点を置くそらいいな株式会社が、固定翼ドローンを活用して、二次離島等への日用品、食品、医薬品等の配送を事業化しています。

大崎上島町は、町の中心の大崎上島の他に二次離島の生野島があります。生野島では、島外に買い物に行こうにも移動コストがかかり、宅配サービスを利用するにも輸送コストが高くなるため二次離島の生野島にはサービスが届いていないなど、買い物が不便な状況にありました。そこで、令和5年度スマートアイランド推進実証調査を活用し、二次離島である生野島への自律航行船による貨客混載物流の実証実験を行い、実装に向けた検討を進めています。

■離島の地理的条件の分類方法「地理6類型」

上記の一次離島、二次離島の考えも一部包括していますが、離島の地理的な条件を分類する考え方として地理6類型というものがあります。

地理6類型の考え方(出典:離島の定住環境に関する調査について(国土交通省))

これは、離島が、外海にあるか内海にあるか、近接型か孤立型か、群島型か孤立型かなど、離島の地理特性を分類する際に使われてきました。

■地理的特性から離島の状況を考察する

やや古いデータですが、平成26年度に国土交通省で「離島の定住環境に関する調査」が行われており、それを見ると、内海近接型、外海近接型、群島型属島には人口規模の小さい離島が多い傾向があることがわかります。
内海近接型、外海近接型は本土が近いために生活サービスの拠点(買い物、医療、教育など)となる場所が本土側の都市であることが考えられ、群島型属島は生活サービスの拠点となる場所が、近隣の大きな離島(群島型主島)にあると考えられます。

地理6類型と人口規模(出典:離島の定住環境に関する調査について(国土交通省))

また、平成29年度には「住民構成などの状況がより厳しい離島の活性化方策調査」が行われ、平成22年国勢調査と平成27年国勢調査の人口比較で25%以上の人口減少が見られた離島を抽出・その減少理由などを調査しています。
その際に抽出された離島はこちらです。

・山口県周南市 大津島(H22 361人→H27 244人) 内海近接型
・愛媛県新居浜市 大島(H22 257人→H27 190人) 内海近接型
・山口県防府市 野島(H22 145人→H27 94人) 内海近接型
・大分県津久見市 地無垢島(H22 62人→H27 35人) 内海近接型
・広島県三原市 小佐木島(H22 11人→H27 6人) 内海近接型

全て内海近接型という結果になっています。内海近接型の離島とは、瀬戸内海の離島を考えるとわかりやすく、本土が近く、かつ、海が穏やかな環境にある離島のことを指します。こういった離島で人口減少率が大きいという結果になったのです。

■地理6類型とともに必要な「生活圏」という考え方

データから、近接型の離島は人口規模の小さな離島が多く、人口減少が激しい傾向があると言えそうですが、これは島民の普段の生活を見ると理解が深まるのではと思っています。
上述の、状況がより厳しい離島に対するヒアリング調査の結果で各島で同様の傾向が見られたのは、日常的に買い物や通院のために本土に出かけているということでした。この、島民が日常生活の中で移動している範囲のことを「生活圏」と呼びます。人口規模の小さな離島や人口の減少傾向が大きい離島では、「生活圏」が島内で完結していなかったのです。

内海近接型の多くの離島では、定期船の欠航率は低く、また便数も外海離島と比べれば多い傾向にあります。つまり、島民の暮らしの中で物理的にも精神的にも本土が近いのです。本土が近く、もともと島内で生活が完結していないからこそ、島を出ることになりやすい(人口の社会減が大きくなる)のではないか。私はそのような仮説を持っています。
一方で、ここ数年は、本土との近さを活かして移住者や関係人口を呼び込んだり、さまざまな起業が生まれたりしており、特性を上手に活かしていくことの大切さも感じています。

このように、地理的特性が、離島の生活インフラのあり方にも影響を与え、島民の生活のスタイルにも影響を与えています。
離島の特徴を把握するときのポイントとして、地理的特性と島民の生活圏を注目して見てみてください。


一般社団法人離島総合研究所
代表理事 上田 嘉通



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