30名を超えたが道半ば、SmartHR「コミュニケーションデザインセンター」の現在地
SmartHRには2024年1月から「コミュニケーションデザインセンター(以下、コムセン)」という横断組織ができました。詳細は下記記事をご覧ください。
コムセンは前身組織からの計5年間で、人数が約11倍の30名に増加しています。しかし、現在もデザイナーとディレクターを複数ポジションで募集中だと言います。また、まだ道半ばの組織でありながら、社外の方からは「すでに組織として完成しているのでは?」と誤解されることがあるそうです。
なぜメンバーを増やし、組織を強くしていきたいのか。今後目指す姿とは?ーーコムセンの現在地について、マネジャーを務めるbebe(渡邉惇史)さんとsakiko(岡崎咲子)さんの2人に聞きました。
コムセンを長期的に“強い”組織にしたい
ーーコムセンの「目指す姿」と、そこに近付くために必要なことを教えてください。
bebe(渡邉惇史):コムセンを、会社とサービスの成長に対応できる、長期的に見て“強い組織”にしていきたいと思っています。
背景として、これまでさまざまな専門性を持った方に入社いただいたので、現在のコムセンは分業化が進んでいます。今まではそれで良かったのですが、これからは一点に特化するだけでなく、幅広いスキルを求める場面が増えると思っていて。人数を増やすだけではなく、より効率的に仕事を進められる組織にしていく必要があると考えています。
sakiko(岡崎 咲子):これまでの不足部分を補う採用活動では、コムセンが会社の成長に追い付かなくなる未来が見えています。
また、一つの領域に専念すると専門性が高くなるメリットはあるものの、組織には循環が必要です。水に例えると、流れが止まった部分は栄養分が高くなる反面、藻が生えてしまいますし、ほかの場所の水質とバランスがとれなくなります。特定の領域に特化するのもすばらしいことですが、一方でいろいろな分野に興味を持ち、スキルを広げたい意志を拡張する環境構築も必要だと思いますね。
SmartHRは今、変化のタイミングです。一人ひとりがそのときどきに応じて変化できないと、耐えられず辛くなってしまうかもしれない。ご入社されたら長く働いていただきたいですし、その方のキャリアにとってSmartHRで過ごす時間を良いものにしたいので、柔軟性は重要だと思います。
ーー専門性を突き詰めることと柔軟性を持つこと、それぞれをどのように捉えていますか?
sakiko:私個人としては、専門性が高いことはとても良いと思っていますが、専門性が高い人だけが集まった組織になると橋渡し役が必要です。だから、どちらが良い・悪いではなくて、専門性と柔軟性のバランスがとれたチームをつくっていく必要があります。
bebe:SmartHRが小規模組織だった2016年ごろは、ディレクター職が必要な場面が少なかったんですよね。でも社員数が1,000名を超えた今は施策規模が大きく関係者も多く、ディレクションの専門性が状況的に求められるようになり、各所でディレクターが活躍しています。また、時期やタイミングによって組織にとって必要となるスキルも変わると思います。
sakiko:幅広い対象への興味とスキルが大切だと思いますね。たとえば、グラフィックだけではなく、ウェブや映像にも興味を持ち「やってみたい」という意思。それによって、担当外の仕事への理解が深まり、つながりができ、思考も広がります。
bebe:お客さまはどのタッチポイントで接しても、SmartHRをひとつのサービスとして捉えているため、制作者も担当領域の前後・また全体のコミュニケーションを理解し、お客さまとのコミュニケーションに一貫性を持たせていきたいですね。
ーーコムセンは横断組織となりましたが、お客さまの体験に一貫性を持たせるための対応が、新たに必要だと思いますか?
bebe:組織のくくりや名前は変わりましたが、日々の活動自体は変わっていません。そのため、「組織が変わったから分断が起きてしまい、それを繋ぐ努力が必要」という状態ではありませんね。
sakiko:人によっては、組織の変化によって「何かが変わってしまう」と思うかもしれませんが、事業を成長させるために「より効果的に仕事を進めやすい体制」に変化しただけなんですよね。デザインやクリエイティブが大切なのはもちろんのこと、最終的にはSmartHRをビジネスとしていかに成長させるかが重要です。
bebe:私は、お客さまに一貫したコミュニケーションを提供するための良い組織変更だったと思っています。目標の達成に向けて、デザインやマーケティングとしてどう取り組むかを一つのチームで考え、提供するための議論がしやすくなったように見えています。
30名いることが強みである反面、課題は山積み
ーー現在のコムセンの「強み」はどんなところだと思いますか?
bebe:これまで多くのタッチポイントとして“点”の活動を生んできたからこそ、一貫したコミュニケーションを提供したい、といった“線や面”の課題に向き合えていると思っていて。点を打っていなければ、コムセンの人数が増えてもタッチできないポイントがあるんですよね。点の動きの積み重ね含め、組織に土台があることがコムセンの強みなのではないかと思います。
以前、他社にヒアリングをさせていただいた際に、マーケティングチーム内でデザイナーを採用するなど、デザインの組織がないという話を聞きました。そうすると、会社全体で「デザインをどうするか」を整えるところから始めなくてはいけません。そういった課題はSmartHRのコムセンにはないので、良い土台ができていることを実感しました。
sakiko:bebeさんは正社員のひとり目デザイナーで、コムセンを前身組織から長期間見ているので、「できるようになった」と感じることが多いかもしれませんね。
bebe:それはあると思います。たとえば、他社のデザイン組織の方とお話しすると、コムセンに所属しているコミュニケーションOpsユニットについて「とてもいいですね」と言っていただく。
同ユニットは、制作フローのアップデートや生産性の分析、採用広報からガバナンスの整備まで、クリエイターの働きやすさをサポートしているチームですが、「うちにもそういう人がほしいです」と言われますね。そこも含めて、コムセンは組織としてよく機能していると感じます。
sakiko:今コムセンは30名超の規模ですが、「30名いること」が強みかもしれませんね。
bebe:30名のところまで、来ましたね。
sakiko:面接でもお話ししていますが、コムセンの課題は山積みです。社外からはいろいろできているように見えるかもしれませんが、実際はまだまだ。今は過渡期なので、変えなければいけない部分も多いです。ただ、30名のメンバーがいるのは本当にすばらしいことです。人がいるから、できることがある。
bebe:それは本当にそうですね。各施策に広く深く対応できるのも、この人数がいるから。ただ、現状に満足はしていません。
コムセンは「完成していそう」「やることがなさそう」という誤解
ーーsakikoさんのお話にもありましたが、社外の方からはコムセンに対して「組織が完成していそう」「もうやることがなさそう」というイメージをもたれやすい一方で、実際はまだできていないことも多い。このギャップはなぜ生まれてしまっているのでしょうか?
bebe:社外の方が見てくださっているのは、うまく外に出せたものなど、アウトプットが中心だと思います。これまでのチームが取り組んできた結果だから、それ自体はポジティブに受け取っています。
ただ、社内の実際としては試行錯誤や苦戦することも多く、うまくいくことばかりではありません。また、これからも成長を続けるための新たな課題に向きあっているため、完成することはないと思います。やらなくてはならないことは常に生まれ続けていますね。
そして、アウトプットからは“見えにくい部分”、プロセスも大切です。
sakiko:そうですね。外に出るものは目立ちやすいものの、見えない部分のデザインも非常に重要です。実際は、見えない部分にも複雑な作業があって、支えている方に負荷が集中してしまうことがある。そこの根本改善など、できることはまだたくさんあります。
ーー一般的な「1,000人以上の組織」のイメージだと、個人の裁量がないと思われるかもしれませんが、現在のコムセンは本質的な部分を見きわめて裁量を持って活躍する人が求められている印象を受けました。
bebe:そうですね。コムセン含め、SmartHRのほかの組織もそうだと思います。
sakiko:事業成長に伴ってメンバーに求められることが変わり、施策を進める難易度がどんどん上がってきています。関係者が増え、解決すべき課題も多く、複雑に絡み合っているものを紐解く力が求められるようになってきている。いわゆるアウトプットの難しさではなく、プロジェクトを進める難易度が上がっているんですよね。
bebe:sakikoさんの場合だと、複数のチームをマネジメントするにあたって、複雑さと複雑さの掛け算のような状態に対峙しているように見えています。個々の事象に対してそれぞれ異なる変数を考慮して進める難しさがある。
そうなってくると、一つひとつを個人で解決するのは難しい。複雑なプロジェクトの紐解き方をチームで考える場をつくったり、マネジメントを兼務しない状態にしたりする必要がある。多くの活動が「一つの施策をひとりが担当する」というシンプルな状態ではなくなっていますね。
ーー糸が絡んでいくように複雑さが増している印象を受けましたが、根本的に複雑さを解消する方法はないのでしょうか?
sakiko:「糸が絡まりやすい状態だ」と認識しておくことが重要だと思います。絡ませないことを習慣化する。そして、多方向から物事を捉える視点の可変性・柔軟性も大切だと思います。
あとは、つくるだけではなくて、その作業が与える影響とその先にどんな人が関わっているか。想像力を膨らませ、そのプロジェクトの完了時のほかのプロジェクトへの影響も考えて設計できる力が必要だと思います。そのような視点を持って物事を考えるのは、ある程度の経験が必要ですし、難易度も高い。そういった部分を進めてくださる方が増えることで、コムセンは長期的に強い組織になっていくと思いますね。
ブランディング統括本部になってまだ数か月なので、まだ何もできていないし、これからやれることがたくさんあります。
bebe:道半ばですよね。
sakiko:この時期ならではのおもしろさと体験ができる、今がチャンスだと思いますね。
bebe:私もそう思うんですが、私は「今がチャンス」と毎年言っているので、段々言いづらくなってきています(笑)。でも、本当にそのときどきで「今がチャンス」だと思っています。
SmartHRが目指すことを“山の高さ”に例えると、山の一合目にいたら、六合目のことは想像の範囲でしかありませんが五合目まで来ると、六合目が明確に見え、そこに到達するまでに取り組むべきことが現実的になってくる。
その意味で、常に次の高さの課題に向き合えているのでそう思うんですよね。山登りをしないのでイメージで話しているところがありますが(笑)。
今よりも多くの面で、コムセンが事業貢献する未来を目指して
ーーコムセンが現在募集している求人枠がすべて埋まりメンバーが増えた場合に、どのくらい活動範囲が広がると思いますか?
bebe:コムセンの活動範囲を広げるだけではなくて、すでに広がっている部分をどのように充実させていくかも大切だと思っています。たとえば、制作したものについて、実はほかの角度から考えると「別のものもつくれる」と提案できたかもしれない。人数が増えることで、質を高める部分に注力できると思いますね。
また、今はやるべきことが非常に多く目の前の業務で手一杯な状態ですが、余裕をつくり新しいことに積極的に取り組んでいきたいと思っています。全社として「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というミッション達成に向けて動いているので、そこにコムセンとして今よりも多くの側面から貢献したいですね。
あとは、メンバーみんながチャレンジするのはもちろん、チャレンジしている実感を持てるようにしたいなと思っています。
sakiko:組織が大きくなることで、今より良い状態をつくり、それを積み重ねていきたいと思っています。山を登るにつれて、現在と状況が大きく変わるかもしれないので、中途半端なことは言えませんが。
bebe:事業を通して会社の目標達成を目指しているので、コムセンとしても何を目指しているのかを明確にしていきたい。質を高めるためには仕組みが必要だし、提案力や体験の質も上げたいし、今よりもっとよくできると思うんです。
sakiko:しいて言えば、遅くとも2年後には“より良くするための基盤”を整えたいですね。
bebe:コムセンの活動は、いろいろなかたちで細分化しています。今期から組織名称にもなっている「ブランディング」のために、自分たちの活動が「この役割を担っているんだな」とか「こういった体験や会社の価値につながっているんだな」と、今まで以上に明確に実感できる状態を目指していきたいですね。
SmartHRのコミュニケーションデザインセンターでは、一緒に働く方を募集しています。また、選考ではなくカジュアルにお話しする場「カジュアル面談」もご用意しています。
制作協力:mikio(ダイバースOpsユニット)