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【カーボンニュートラルへの架け橋 1】「JAXA共同開発ロケットと新素材タンク」(株)SPACE WALKER 代表取締役CEO眞鍋顕秀氏/顧問 流郷綾乃氏

今回は、3月に開催される世界最大の水素エネルギー専門展「FC EXPO 春2022」初出展の企業を取材させていただきました。産官学のオープンイノベーション体制で有翼型再使用ロケット開発を行っているSPACE WALKERは、次世代複合材による「高圧ガス複合材タンク」「極低温液体複合材タンク」開発でも今、大きな注目を集めています。同社の設立経緯から出展プランや講演会情報など、最新のニュースをお届けします。

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●プロフィール <眞鍋顕秀> 2003年 慶應義塾大学経済学部卒 公認会計士大手監査法人へ入社後、 主に監査業務・IPO・M&A業務に従事。2012年 独立開業し, 大手企業の経営コンサルから個人の開業・法人設立の支援まで幅広い企業サポートを行う。2017年 株式会社SPACE WALKER 共同設立。日本初の有人宇宙飛行の実現を目指し, 大手重工メーカー等との技術アライアンスをベースに有翼再使用ロケットの開発を進める。

■本格化する宇宙開発時代に、「エコロケット」®を

―フランスで開催されるJEC World2022複合材料・先端材料のスタートアップコンテスト「JEC Composites Startup Booster2022」においてSPACE WALKERがファイナリスト20社に選ばれたそうですね。日本企業では唯一の選出とのことで、驚きました。今年で創業5年目となるSPACE WALKERの設立経緯を、まずはお聞かせください。

眞鍋:SPACE WALKERは、2017年12月に設立した東京理科大学発のベンチャーです。有翼型のロケット開発や複合材タンク、サステナブル経営に関する事業を手掛けています。設立の背景にあるのは、SPACE WALKERを私と共同創業した現取締役CTOであり東京理科大学工学部教授でもある、米本浩一の研究です。米本は1980年代に川崎重工で有翼ロケット開発の国家プロジェクトに参加しておりましたが、2000年頃にプロジェクトが凍結となったために大学へと籍を移し、そこで有翼ロケット開発を続けておりました。そして2015年に大学とJAXAの共同研究で行っていた小型有翼ロケットの実験機打ち上げと回収に成功したことを契機として、商業化に向けた計画が動き出したのです。米本が会社設立に向けて、共通の知人を介して私の会計事務所に相談を入れました。これが、米本と私の出会いとなりました。

今回、SPACE WALKER がEXPOに出展させていただくのは複合材タンクとなりますが、その背景にあるのはやはり我々のロケット開発技術です。世界では、今後20年でロケットの打ち上げ回数が今の10倍、多ければ100倍以上になると予測されています。安くて毎日打ちあげることができるロケットが、世の中から必要とされているのです。それに対して我々はロケットを開発するだけでなく、コストと環境問題の2つの課題をクリアすることを重要視しています。
まずコストですが、現在の大型の使い捨てロケットは1回の打ち上げで100億円程度かかっているのに対して、我々は1億から3億円、将来的には1億円をきる打ち上げサービスを考えています。さらに打ち上げ頻度は今の使い捨てロケットで現状は1年間で数回程度2カ月からや6ヵ月に1回程度の打ち上げなので、まだまだ足りていません。私達は将来的には毎日打ち上げを目指して、当面目標として3日1回、年100回程度の打ち上げ頻度を目指しています。

そして環境問題においては、クリーン燃料を使うとともに再使用可能なロケット=「エコロケット」®の開発を行っています。今、世界のロケットの大部分は打ち上げ後にロケットの1段目、2段目が海に捨てられる、使い捨てのロケットを使用しています。しかも燃料として非常に毒性の強いヒドラジンやケロシンを使っているため、ロケットによる環境負荷は非常に高いものとなっています。SPACE WALKERでは地球環境に配慮したクリーン燃料、具体的には液化バイオメタンの使用を考え、牛糞から取れるメタンガスを液化して燃料にしようとしており、現在、大手産業ガスメーカーと一緒に取り組んでいます。

エコノミーとエコロジーの両方を満たす「エコロケット」®の開発は、今後の宇宙開発において絶対必要なことだと考えています。最終的には、2030年代から2040年代にかけて本格化すると言われる有人宇宙飛行に対応していくことが、我々のゴールです。これらのロケット開発は、SPACE WALKER単独ではなく、川崎重工業、IHIグループ、東レカーボンマジック、アイネット、エア・ウォーター、そしてJAXAとアライアンスを組み、産官学のオープンイノベーション体制ですすめております。

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■ロケット開発から誕生した、新世代複合材タンク

―今回、出展されるタンクは、これらのロケット開発技術が活かされたものとなるわけですね。

眞鍋:はい、複合材タンクに関しては、SPACE WALKERと東京理科大学が開発および事業展開を行っています。私達自身のロケットに搭載するために開発した、高圧ガス・極低温の推進薬用の複合材タンクは、世界でもトップレベルで軽量です。更に、-200~-250℃という極低温の複合材推進薬タンクは、世界中で実現できたところがまだ無く、私達のタンクが完成すれば世界初の技術となります。また昨今の国際ミッションとしては、月の開発を進めようとされています。月にも水があると予想されていることから、水の電気分解による水素と酸素をエネルギーとして利用しようと考えられているのです。我々のタンクは、このような深宇宙開発における水素タンクや酸素タンクとしても活用できます。それを応用して地上でも使ってもらおうという計画で、リリースから1年も経たずに数千万の契約が決まり、提案ベースでは億単位で延びていることからも、既にそのニーズの高さを感じています。

―そのタンクは、どのような特長がありますか?

眞鍋:弊社のロケットには高圧ガスタンクと極低温の液体タンクの2つが装備されるのですが、どちらも軽量化を目指し、複合材で開発を進めてきました。その技術を宇宙のみならず地上へ活かしたいと考えております。現在、一般的な水素ステーションで使用されているタンクは82メガパスカルのものですが、これよりも上位の105メガパスカル(バースト試験では236メガパスカル)でPOC実証を行ないました。水素ステーションのタンクは規約で数万回~10万回以上の使用に対応できることを求められるのですが、耐久性においての技術的な課題は既にほぼクリアしています。現在は、製品化にむけて高圧ガス保安協会の許認可取得準備に入りました。もうすぐ世に送りだせるといったところまできています。

加えてもうひとつ、タイプ5と呼ばれるライナーレスタンクの開発も行っています。特に、世界中でまだ実現できていない液体水素、液体メタン、液体酸素といった極低温で液化する燃料に対応できる複合材タンクの開発を進めております。SPACE WALKERと東京理科大学とで素材のパテントをいくつか持っておりまして、液体水素用としては小さい試作品を作り、JAXAの試験場でのリークテストにて、漏れがないことまでは確認しております。次は、スケールアップして実際に使えるタンクにする段階にあります。液体酸素用としては、特許を取得している素材を使ってタンクの成形にチャレンジしているところです。完成すれば、世界初の技術になります。


―こういったタンクが完成すると、かなり注目を集めそうですね。

眞鍋:タンクの具体的な利用シーンでは、需要から考えるとやはり水素かなと思います。水素ステーションや移送用のカードルやローリー、船、飛行機、ドローンといったところにも水素が使われはじめるようになると、我々の超軽量の複合材タンクが貢献できるのではと考えております。
SPACE WALKERのタンクの事業化に向けた動きに対しては、この1年間で既にいくつかお話が進んでおりまして、宇宙はもちろんの事、地上での利用でも反応がよいことから、やはり相当なニーズが市場にあると感じております。今年来年にむけて受注件数、提案件数はさらに増えると思われます。


■「FC EXPO 春 2022」では、ブース内講演も予定

―「FC EXPO 春 2022」では、タンク実物などの展示は予定されていますか?

眞鍋:そうですね。一般的な水素ステーションで使われる300リッターサイズのモックを展示予定です。実際のものと同じサイズですので、スケール感は見ていただけると思います。同時に、1㎏の輸送に1億円かかると言われる宇宙開発用素材の応用ということで、非常に高度な軽量化開発を行っていることも注目していただきたいです。

展示会というリアルな場は非常に大事だと考えていまして、画像や動画をどれだけ見ても、実際のものを見るのとは情報量が全く違うと思っています。実際にどのくらいの大きさなのか、質感はどうなのかなど、見ていただくことで信頼度も上がると思います。水素や電池といった部分で課題を抱えていらっしゃるメーカーさん、インフラの会社さん、産業ガス業界の方々など皆様とつながることができればと期待しております。

流郷:私からの補足となりますが、展示会では、他にも弊社ブース内でCEO眞鍋をはじめ、CTO米本、複合材技術顧問の山本が講演を予定しております。宇宙開発というこれまでサステナブルから遠いと思われてきた分野において、SPACE WALKERが次世代のことを考えたエコロケット開発への挑戦や宇宙開発技術を活かした水素社会への貢献・脱炭素社会への推進を目指している現状を、ぜひ展示会で見ていただきたいと思います。

●SPACE WALKERブース内特別講演の詳細はこちら
https://www.space-walker.co.jp/news/news/20220304.html

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●SPACE WALKERの皆様、取材にご協力いただきありがとうございました。

<お知らせ>
第18回  水素・燃料電池展FC EXPO  2022年3月16日(水)~18日(金)
場所:東京ビッグサイト 

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